作品賞:クラッシュ

クラッシュ

<作品賞ノミネート>

クラッシュ
ブロークバック・マウンテン
カポーティ
グッドナイト&グッドラック
ミュンヘン
クラッシュ

監督:ポール・ハギス
出演:サンドラ・ブロック/ドン・チードル/マット・ディロン

『ブロークバック・マウンテン』に逆転勝利

2006年のアカデミー賞の作品賞は、社会的なメッセージ色の強い力作がノミネートに名を連ねました。

中でも『ブロークバック・マウンテン』は同性愛についての映画で、他の映画賞を次々と獲得しており、本命視されてました。

カウボーイが同性愛に目覚め、様々な偏見に苦しながら生きる純愛ドラマです。

カウボーイといえば、強くてたくましいアメリカ男性の象徴とされているだけに、その葛藤は大きく、そのあたりを描いたことが評価されました。

しかし、ふたをあけてみると、作品賞に輝いたのは、『クラッシュ』でした。

『クラッシュ』は、ロサンゼルスでさまざまな人種や階層の人たちが人生を交錯させる群像劇です。

人種差別や貧困などの社会問題が凝縮されました。

『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本家ポール・ハギスの脚本が光りました。この「現代アメリカらしさ」が評価され、票獲得につながったようです。

監督賞 アン・リー『ブロークバック・マウンテン』

ブロークバック・マウンテン

<監督賞ノミネート>

アン・リー
「ブロークバック・マウンテン」
ジョージ・クルーニー
「グッドナイト&グッドラック」
ポール・ハギス
「クラッシュ」
ベネット・ミラー
「カポーティ」
スティーヴン・スピルバーグ
「ミュンヘン」

アン・リーがアジア人として初の監督賞

『ブロークバック・マウンテン』の台湾人アン・リーが、監督賞を受賞しました。

アジア人としては初めての快挙となりました。

アン・リーは受賞のスピーチで『ブロークバック・マウンテン』について「愛がいかに素晴らしいかを訴えたかった」と語りました。

アン・リーが評価された理由の一つは、その演出力にあると言われています。

一方、『ミュンヘン』のスティーブン・スピルバーグのノミネートも注目を集めました。

今回受賞していれば3度目の監督賞でしたが、果たせませんでした。

主演男優賞:フィリップ・シーモア・ホフマン『カポーティ』

フィリップ・シーモア・ホフマン

<主演男優賞ノミネート:2006年>

フィリップ・シーモア・ホフマン
「カポーティ」
テレンス・ハワード
「ハッスル&フロー」
ヒース・レジャー
「ブロックバック・マウンテン」
ホアキン・フェニックス
「ウォーク・ザ・ライン」
デビッド・ストラザーン
「グッドナイト&グッドラック」

主演男優賞の候補は、5人とも初めてのノミネートでした。

受賞したのは、性格俳優として不動の地位を築きつつあるフィリップ・シーモア・ホフマンでした。

「カポーティ」において、作家トルーマン・カポーティを演じました。

フィリップ・シーモア・ホフマンは、これまでは脇役が中心でした。

中でも「ブギーナイツ」「ハピネス」は、内向的な役柄を演じ、高い評価を得ていました。

自ら製作総指揮にも名を連ねた「カポーティ」では、ゲイのカポーティを見事に演じ、賞を総なめにしました。

ホフマンの対抗馬だったのが、「ウォーク・ザ・ライン」でカントリー歌手ジョニー・キャッシュを演じたホアキン・フェニックスでした。

隠れた歌唱力を見事に見せつけました。

主演女優賞:リース・ウィザースプーン『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』

リース・ウィザースプーン

<主演女優賞ノミネート:2006年>

リース・ウィザースプーン
『ウォーク・ザ・ライン』
フェリシティ・ハフマン
『トランスアメリカ』
キーラ・ナイトレイ
『プライドと偏見』
ジュディ・デンチ
『ミセス・ヘンダーソン・プレジゼンツ』
シャーリズ・セロン
『スタンドアップ』

リース・ウィザースプーンが『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』で受賞しました。順当な結果となりました。

ウィザースプーンといえば、何といってもコメディ「キューティ・ブロンド (Legally Blonde)」の主役として有名です。

その前にも「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!(Election)」で優等生役をコミカルを演じ、注目を集めました。

そんな彼女が、シリアスな演技で挑戦したのが、カントリー歌手ジューン・カーター役。

これが、見事にハマり役となり、栄冠を手にしました。

もともとテネシー州生まれのウィザースプーンは、典型的な南部女性。

カントリーにも慣れ親しんでいました。

そんなバックグラウンドを活かして、ジューン・カーターの名曲の数々を見事に歌い上げました。

対抗馬だったのが、フェリシティ・ハフマン。『トランスアメリカ』でゲイ男性の役を熱演。有力候補となりました。

助演男優賞 ジョージ・クルーニー『シリアナ』

ジョージ・クルーニー

<助演男優賞ノミネート:2006年>

ジョージ・クルーニー
『シリアナ』
マット・ディロン
「クラッシュ」
ポール・ジアマッティ
「シンデレラマン」
ウィリアム・ハート
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」
ジェイク・ギレンホール
「ブロークバック・マウンテン」

受賞したのは、『シリアナ』のジョージ・クルーニーでした。

この年、「グッドナイト&グッドラック」で監督賞と脚本賞にもノミネートされていたクルーニー。

監督賞と脚本賞は逃しましたが、助演男優賞は見事にかっさらいました。初のオスカーです。

クルーニーは『シリアナ』で、CIA工作員を演じました。

体重を増やして疲れた中年っぽくなる一方で、スパイならではの殺気立った雰囲気も醸し出し、名演と評されました。

一方で、もう一人有力候補だったのが、『シンデレラマン』のポール・ジアマッテイです。前年の『サイドウェイ』に次ぐ名演でしたが、クルーニーに一歩及びませんでした。

助演女優賞:レイチェル・ワイズ 『ナイロビの蜂』

レイチェル・ワイズ

<助演女優賞ノミネート:2006年>

レイチェル・ワイズ
『ナイロビの蜂』
エイミー・アダムス
「ジューンバック」
キャサリン・キーナー
「カポーティ」
フランシス・マクドーマン
「スタンドアップ」
ミシェル・ウィリアムス
「ブロークバック・マウンテン」

あまり有力な候補がいないとされるなか、『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズが受賞しました。

レイチェル・ワイズは、その美貌を生かしつつ、社会活動家というシリアスな役柄を自然に演じ切りました。

このレイチェル・ワイズに対抗し、急激な追い上げを見せたとされるのが、エイミー・アダムスです。

エイミー・アダムスは当時はほとんど無名の女優でしたが、「ジューンバッグ(junebug)」で妊娠中の田舎娘を見事に熱演。評論家などから絶賛されました。

その後アカデミー賞の常連となるアダムスですが、2006年はその出発点となったのです。