作品賞:ディパーテッド

ディパーテッド

<作品賞ノミネート>

ディパーテッド
バベル
硫黄島からの手紙
リトル・ミス・サンシャイン
クィーン
ディパーテッド

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン

バベルに競り勝つ

2007年のアカデミー賞は、作品賞のレースが混沌としていました。

「本命不在」と言われるなかで、当初、有利と見られていたのが、菊地凛子が出演した『バベル』です。

『バベル』は、異なる4つの国の人たちを描いた人間ドラマです。

監督は、「21グラム」などのイニャリトゥ監督。

モロッコでの銃撃事件が日本、米国、メキシコへと飛び火する過程で、それぞれの国の人のストーリーが交差しながら描かれています。

『バベル』の対抗馬とされたのが、スコセッシ監督の『ディパーテッド』。

香港映画『インファナル・アフェア』のリメークです。

マフイアと警察に潜入した青年2人(ディカプリオとマット・デイモン)をめぐるサスペンス。

豪華キャストと大胆な脚色が評価を受けました。

優秀賞のノミネート作品で『ディパーテッド』だけが1億ドルを超えていました。

通常、リメイク作品は作品賞レースでは不利とされますが、それを見事吹き飛ばし、見事、作品賞を受賞しました。

監督賞 マーティン・スコセッシ『ディパーテッド』

マーティン・スコセッシ

<監督賞ノミネート>

マイティン・スコセッシ
「ディパーテッド」
クリント・イーストウッド
「硫黄島からの手紙」
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
「バベル」
スティーブン・フリアーズ
「クィーン」
ポール・グリーングラス
「ユナイテッド93」

スコセッシ氏、6度目のノミネートでついに栄冠

監督賞では、巨匠・マーティン・スコセッシが6度目のノミネートとなり、初めて受賞しました。

スコセッシ監督は、「タクシードライバー」(1976年)、「レイジング・ブル」(80)、「グッド・フェローズ」(90)といった歴史的名作をつくり、アカデミー賞候補となってきました。

また、2000年以降も、レオナルド・ディカプリオを主演に迎えた「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02)や「アビエイター」(04)で、アカデミー賞の監督賞にノミネートされました。

しかし、受賞には至りませんでした。

今回は、香港映画「インファナル・アフェア」のリメークである「ディパーテッド」でのノミネート。 切れ味の鋭さが光る名作でした。

一方、スコセッシ監督と同様、長年のキャリアを誇るイーストウッドも『硫黄島からの手紙』でノミネートされました。

日本語で撮った英断と確かな演出力が評価されていました。

しかし、イーストウッド監督はこれまで何度もアカデミー賞を受賞しています。

こうしたなか、「今回は、スコセッシ監督に」というムードが高まったようです。

主演男優賞:フォレスト・ウィテカー『ラストキング・オブ・スコットランド』

フォレスト・ウィテカー

<2007年主演男優賞ノミネート>

フォレスト・ウィテカー
「ラストキング・オブ・スコットランド」
レオナルド・ディカプリオ
「ブラッド・ダイヤモンド」
ウィル・スミス
「幸せのちから」
ライアン・ゴスリング
「ハーフ・ネルソン」
ピーター・オトゥール
「Venus」

ウィテカーが、迫力の演技で栄冠

『ラストキング・オブ・スコットランド』でアフリカ・ウガンダの独裁者アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーが男優賞を受賞しました。

狂気に満ちた独裁者像を熱演し、圧倒的な評価を受けました。ウィテカー氏はこの年の映画賞の男優賞はほぼ独占しており、予想通りの受賞となりました。

『ディパーテッド』で名演技を見せたレオナルド・デイカプリオは、『ブラッド・ダイヤモンド』でノミネートされました。

主演女優賞:ヘレン・ミレン『クィーン』

ヘレン・ミレン

<主演女優賞ノミネート:2007年>

ヘレン・ミレン
『クィーン』マイティン・スコセッシ
メリル・ストリープ『プラダを着た悪魔』
ペネロペ・クルス
『ボルベール〈帰郷〉』
ジュディ・デンチ
『あるスキャンダルの覚え書き』
ケイト・ウィンスレット
『リトル・チルドレン』

女王ミレンが、「プラダ」のメリルに勝つ

受賞したのは、『クィーン』で現女王を堂々と演じて女優賞を総なめにしていたヘレン・ミレン。

ミレンは受賞スピーチで「女王万歳」と言いました。

対抗馬とされたのが、『フラダを着た悪魔』でファッション雑誌の編集長を演じたメリル・ストリープです。コミカルな演技が高い評価を得ました。

助演男優賞 アラン・アーキン『リトル・ミス・サンシャイン』

アラン・アーキン

<助演男優賞ノミネート:2007年>

アラン・アーキン
『リトル・ミス・サンシャイン』
エデイ・マーフィー
「ドリームガールズ」
ジャイモン・ランスー 「ブラッド・ダイヤモンド」
マーク・ウォールバーグ
「ディパーテッド」
ジャッキー・アール・ヘイリー
「リトル・チルドレン」

本命エディ・マーフィーが逃す

本命視されていたエディ・マーフィーが落選。ベテランのアラン・アーキンがオスカーを手にしました。

マーフィーは、『ドリームガールズ』でぶっ飛んだ歌手を熱演。受賞が有力視されていました。

しかし、受賞したのはアーキン。麻薬中毒の爺さん役を軽妙に演じました。これまでの功績も加味されて、票を集めたのかも知れません。

受賞を逃したマーフィーは、式典から途中退場してしまいました。

助演女優賞:ジェニファー・ハドソン 『ドリームガールズ』

アラン・アーキン

<助演男優賞ノミネート:2007年>

ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ』
菊地凛子
「バベル」
ケイト・ブランシェット
「あるスキャンダルの覚え書き」
アドリアナ・バラッザ
「バベル」
アビゲイル・ブレスリン
「リトル・ミス・サンシャイン」

菊地凛子がノミネート

日本人の菊地凛子がノミネートされました。

『バベル』で耳が不自由な女子高生を演じ、高い評価を得ました。

ナンシー梅木以来49年ぶりの受賞が期待されましたが、受賞はなりませんでした。

受賞したのは、『ドリームガールズ』圧倒的な歌唱力を見せ、観客の度肝を抜いたジェニファー・ハドソンです。

助演女優賞の候補(ノミニー)は、年齢も国籍もバラバラで、正に今回のアカデミー賞を象徴していました。