歴代の作品賞

2020年代

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2020年代 | 2010年代↓

2026年

  • 【ノミネート10本】
  • 「ワン・バトル・アフター・アナザー」
  • 「罪人たち」
  • 「センチメンタル・バリュー」
  • 「ハムネット」
  • 「マーティ・シュプリーム」
  • 「トレイン・ドリームズ」
  • 「シークレット・エージェント」
  • 「F1/エフワン」
  • 「フランケンシュタイン」
  • 「ブゴニア」

部門 受賞(2026)
作品賞
  • 「ワン・バトル・アフター・アナザー」
    ワン・バトル・アフター・アナザー

    名匠ポール・トーマス・アンダーソン(略称:PTA)監督10作目にして初のアクション系大作。大手スタジオ(ワーナー・ブラザース)から得た200億円以上の予算を、自らの作家性や職人的センスをフルに発揮する方向で使い切り、「映画的快楽」を堪能できる贅沢な作品に仕上げた。同時に、自己陶酔型の語り口に陥ることなく、活劇としてのスリルや政治風刺の面白味も楽しめる娯楽作として成立させている。

    追跡と逃走の家族劇

    レオナルド・ディカプリオ演じる政治テロ犯が、同じ組織内の女性と恋仲になり、娘をもうけて家庭人に。やがてその娘の身が危険にさらされ、救出へと向かう、という逃走&追跡劇。

    批評家の評価ナンバー1

    米国で「満点」のレビューを出す批評家が続出。主な評者の得点を平均するメタクリティックのスコアは驚異の95点で、あの「オッペンハイマー」(90点)をあっさり乗り越え、自己最高だった「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(93点)を凌ぎ、「ソーシャル・ネットワーク」(96点)、「それでも夜は明ける」(96点)、「パラサイト 半地下の家族」(97点)といった神作レベルの域に迫った。ちなみに、さらに上には「ムーンライト」(99点)や「6才のボクが、大人になるまで」(100点)などがある。いずれにせよ、本年の主要作品の中で断トツの批評家ウケの良さ。

    <絶賛ポイント>

    • ・没入感、持続する緊張感、迫力(とくに後半)
    • ・現代政治風土の描写の鋭さ。豊かな寓話性、風刺の面白み。
    • ・主役から端役(はやく)に至るまで全キャストの高度な演技と、それを引き出す演出
    • ・優れた喜劇性

    一般支持率も「マグノリア」以来の高さ

    一般層の反応もおおむね良好で、米映画館の出口調査シネマスコアで「A」を獲得。ロッテン・トマトの観客支持率は「85%」で、クセが強めのポール・トーマス・アンダーソン作品としては2作目「ブギーナイツ」(89%)、3作目「マグノリア」(89%)以来の高水準となった。ただ、競合相手「罪人たち」(96%)に比べると、一定割合の否定派が存在する。

    前哨戦で「オッペンハイマー」並みの圧勝

    前哨戦で圧倒的な強さを見せた。批評家系の主要な賞は総なめ。映画業界の組合系の賞でも、最重要とされるPGA(米製作者組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで制覇。英国アカデミー賞でも勝利。2年前の絶対王者「オッペンハイマー」に劣らない勝ちっぷりだった。

    【前哨戦での受賞】
    ・PGA(米製作者組合賞)
    ・DGA(米監督組合賞)
    ・英国アカデミー賞
    ・クリティック・チョイス賞
    ・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
    ・ニューヨーク批評家賞
    ・ロサンゼルス批評家賞
    ・シカゴ批評家賞
    ・米国映画評議会議(ナショナル・ボード・オブ・レビュー/NBR)
    ・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め
    ・サンフランシスコ批評家賞
    ・アトランタ批評家賞
    ・ダラス批評家賞
    ・フロリダ批評家賞
    ・オースティン批評家賞
    ・フィラデルフィア批評家賞
    ・ラスベガス批評家賞
    ・フェニックス批評家賞
    ・セントルイス批評家賞
    ・米南東部批評家賞
    ・カンザスシティ批評家賞
    ・ジョージア批評家賞
    ・ミネソタ批評家賞
    ・ニュー・ジャージー批評家賞
    ・トロント国際映画祭
    ・ゴッサム賞

    【ワン・バトル全結果】
    受賞部門 作品賞
    監督賞
    助演男優賞
     ショーン・ペン
    脚色賞
    編集賞
    配役賞
    ノミネート部門 主演男優賞
     レオナルド・ディカプリオ
    助演男優賞
     ベニシオ・デル・トロ
    助演女優賞
     テヤナ・テイラー
    撮影賞
    作曲賞
    音響賞
    美術賞
     監督&脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
     主演:レオナルド・ディカプリオ&チェイス・インフィニティ
     助演:ショーン・ペン、ベニシオ・デル・トロ、テヤナ・テイラーほか
     製作国:アメリカ
     配給会社:ワーナー
     長さ:2時間42分
     公開日:2025年10月3日(日本)
    【興行収入】
    北米:7061万ドル
    世界:2億220万ドル (
    【製作費】
    1億3000万~1億7500万ドル
    【配信:アマゾン

    【評点】
    メタクリティック 95点
    最新→
    ロッテン・トマト 95%
    最新→
    IMDB 8.4
    最新→
    シネマスコア  A
    レターボックス 4.3
    最新→

    【予告編▼】
    動画集を開く▼ <「ビスタビジョン」の魅力▼>

    <劇伴のアルバム再生リスト▼>

    <挿入歌:スティーリー・ダン「ダーティ・ワーク」▼>

    <ディカプリオ氏らのレッドカーペット談▼>

部門 ノミネート(2026)
作品賞ノミネート
  • 「罪人(つみびと)たち」 罪人たち
    【配信:アマゾン

    ブルース音楽劇

    1930年代のアメリカ南部の黒人兄弟の挑戦を、ブルースの源流や軌跡と絡めて描く音楽ドラマ活劇(フィクション)。ホラーや西部劇の要素を取り入れ、新鮮なアプローチで米現代史の一面を切り取った。興行も大成功し、停滞気味のハリウッド映画業界に一つの新しい方向性を示した。

    天才クーグラー監督初の完全オリジナル

    アカデミー作品賞ノミネート「ブラックパンサー」(2018年公開)を若干31歳で撮った天才ライアン・クーグラー監督が、初めて手掛けた完全オリジナル作品。ストーリーや構成の独創性に加えて、映像や音楽の卓越したクオリティの高さ及び物語との一体感が絶賛された。クーグラー監督のデビュー作から出演し、二人三脚でハリウッドの王道を走り抜いてきたマイケル・B・ジョーダンが、一人二役(双子の兄弟)の大主演。

    批評家の97%、観客の96%が肯定派

    米国内での評価の高さは、批評家と一般観客の「両立」という点において年間トップ。ロッテン・トマトの支持率は批評家が97%、観客が96%。劇場来館者の評価を聞き取り調査する「シネマスコア」でホラー映画として史上初の「A」を獲得した。

    怒涛のロングラン

    注目されるのは、こうした口コミ評価のパワーが、ふだんは「配信待ち」の層を次々と映画館へ呼び込んだこと。公開2週目の興行収入の落ち込みが初週比でわずか6%下落という驚異的な維持率を達成し、その後もしばらく興収ランキングの上位に鎮座。中毒的なリピーターも増やしつつ、怒涛のロングランを続けた。
    4月公開という点で本来は賞レース上は不利だが、3年前の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(3月公開)を彷彿とさせる耐久性を発揮し、賞シーズンを迎えた。

    史上最多16ノミネートの衝撃

    とはいえ、秋に公開された「ワン・バトル・アフター・アナザー」の強さは凄まじく、前哨戦では後塵を拝した。とりわけ批評家が選ぶ賞ではワン・バトル相手に完敗だった。それでも、オスカーでは「史上最多16個(16部門)ノミネート」という偉業を達成。「タイタニック(14個/14部門)」「ラ・ラ・ランド(14個/13部門)」「イヴの総て(14個/12部門)」が持っていた記録を塗り替えた。映画の話法を大きくグレードアップするような本作の革新性は、批評家よりも映画業界人(クリエイターたち)に響いたことは間違いない。

    重みのあるスケール感

    米国史のダークサイドとそこから這い上がろうとする民衆パワーを生々しくあぶり出した本作の重厚感は貴重。そして何より、新鮮なオリジナリティをもって映画ファンの裾野を広げた功績が大きい。

    配給会社の米ワーナーは、本作の権利を取得するにあたり、「25年後にライアン・クーグラー監督の会社に著作権を移管する」という異例の条件を呑んだ。ビジネスモデルも斬新だ。

    【罪人たち全結果】
    受賞部門 脚本賞
    主演男優賞
     マイケル・B・ジョーダン
    撮影賞
    作曲賞
    ノミネート部門 作品賞
    監督賞
    助演男優賞
     デルロイ・リンドー
    助演女優賞
     ウンミ・モサク
    編集賞
    配役賞
    歌曲賞
    視覚効果賞
    衣装デザイン賞
    美術賞
    メイク&ヘア賞
    音響賞

    【前哨戦での受賞】
    ・SAGアワード(俳優組合賞)キャスト賞
    ・ワシントン批評家賞
    ・ボストン批評家賞
    ・ミシガン批評家賞
    ・サンディエゴ批評家賞
    ・テキサス北部批評家賞
    ・ロンドン批評家賞
    ・プエルトリコ批評家賞

     監督:ライアン・クーグラー(ブラックパンサー、クリード)
     プロデューサー:クーグラー夫妻&セヴ・オハニアン
     ※セヴ・オハニアンは38歳(授賞式時点)。クーグラー監督の南カリフォルニア大学(USC)映画芸術学部の後輩。クーグラー監督が長編デビュー作「フルートベール駅で」を手伝ってくれる人材を求めて大学の恩師(教授)に相談したところ、「逸材の生徒」として紹介されたのがオハニアンだった。
    続き▼ オハニアン氏は、「フルートベール駅で」への参加が決まると、すぐに大学を中退。まだデビュー前のクーグラー監督が仕切る現場に入る。当初は「アソシエイト・プロデューサー」という立場だったが、献身的な働きぶりが認められ、すぐに共同プロデューサーに昇格した。2013年に完成にこぎつけた「フルートベール駅で」は、サンダンス映画祭で観客賞&審査賞をダブル受賞するなど、鮮烈な実績を残した。
    その後、独自でキャリアを重ねる。共同プロデューサー兼共同脚本家として手掛けた映画「サーチ」(2018年)を大ヒットさせた手腕は高く評価されている。
    2018年、クーグラー監督とともに映画会社「プロキシミティ・メディア」を設立。その第一弾となった「ユダ&ブラック・メシア」がアカデミー作品賞ノミネートを果たす。その大成功を踏み台にして、オリジナル巨大プロジェクトとなる「罪人たち」に挑んだ。
     主演:マイケル・B・ジョーダン(ブラックパンサー、クリード)
     脚本:ライアン・クーグラー
     公開日:2025年6月20日(日本)
     製作国:アメリカ
     制作会社:米プロキシミティ・メディア(ライアン・クーグラーの会社)
     米国配給会社:ワーナー
     長さ:2時間17分
     影響を受けた作品「フロム・ダスク・ティル・ドーン」など
    【興行収入】
    北米:2.8億ドル
    世界:3.6億ドル (
    【製作費】
    9000万ドル
    【配信:アマゾン

    【物語の背景】

    1932年のアメリカ南部ミシシッピ州を舞台とする本作では、「奴隷解放」後も続いた黒人たちの苦悩、希望、躍動が克明に紡ぎ出される。

    「奴隷解放」後の黒人

    南北戦争(1861~1865年)で南軍が敗れ、奴隷解放宣言が行われた後、黒人たちは農園主から住居や農具を与えられ、収穫した綿花の約半分の収益を支払う「小作人」として働くことになった。ところが小作人たちは衣類や食料を買うための生活費を農園主から前借りしなければならず、経済的に支配され続けた。

    続き▼
    綿摘みのメッカ「デルタ地域」

    マイケル・B・ジョーダン演じる主人公の双子兄弟が生まれたデルタ地域は、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた肥沃(ひよく)なエリアで、19世紀からプランテーションが広がり、黒人奴隷が綿摘み労働を担ってきた。

    黒人の起業

    物語は、故郷デルタを離れて北部シカゴで荒稼ぎしてきた兄弟が、地元に戻ってきたところからスタートする。蓄えた資金で「ジューク・ジョイント」と呼ばれる酒場の開業を計画する兄弟は、立ち上げに必要な場所や人材の確保へと動き出す。

    演奏小屋「ジューク・ジョイント」

    ジューク・ジョイントは、当時アングラ的に流行した黒人の社交場(ダンスホール)で、1930年代にデルタ地域の農園近くや街道沿いに点在していた。歌やギターが得意な農夫たちは、仕事の後にジューク・ジョイントで腕前を披露したという。演目はもちろん、黒人の農園労働者らに歌い継がれてきた「ブルース」。初期ブルース(デルタ・ブルース)を代表する伝説的なギタリスト兼歌手として知られ、本作でも言及されるチャーリー・パットンも、綿摘みなどの農作業をしながら、ジューク・ジョイントでブルースを演奏していたこで有名。

    見事な音楽シーン

    ブルースはジューク・ジョイントを媒介に、デルタ地帯からメンフィス、セントルイス、シカゴへと北上。ジャズやロックなど現代ポピュラー・ミュージックの源になるのだが、本作ではその歴史的な繋がりや広がりが、卓越した音楽の数々とその演奏シーンで鮮やかに表現されている。

    黒人霊歌

    もともとは、米国の黒人音楽といえばゴスペルが主流であり、本作でも、教会で歌われる神聖な音楽として扱われている。アフリカ大陸から奴隷船で運ばれてきた人々は、自らの土着文化を否定されたが、虐待や絶望に苦しむなかで独自の霊歌を生み出し、天国での救済を唄うようになった。それが聖歌(ゴスペル)として発展したのだった。

    世俗的で快楽的な「悪魔の音楽」

    しかし、南北戦争で奴隷制度が撤廃された後も差別が終わらなかったことに、信仰深かった黒人たちは失望した。その憂うつ(ブルー)な気分を世俗的な歌詞とサウンドで正直に表現し、急速に広まっていったのが「ブルース」だった。神にささげるゴルペルとは対局をなす世俗的な歌詞と快楽的なリズムやノリ。信仰深い人たちからすると、音楽による陶酔は悪魔の誘惑であり、「悪魔の音楽」と呼ばれた。禁酒法による統制も加わり、酒場でブルースにのって足を踏み鳴らしたり、踊り狂ったりするような人々は堕落の象徴とされた。

    少年ミュージシャンと吸血鬼

    本作は、そんな「堕落文化」に胸を躍らせる人々(Sinners=罪人たち)の姿を活写する。その象徴として、牧師の息子でありながらブルース音楽家を志す少年ミュージシャン(主人公の従弟)が準主役として登場。父親から「悪魔の音楽をやめろ!」と叱責されつつも、天才的なギター演奏と歌声で人々を熱狂させる。そのサウンドの魔力が、招かれざる客(吸血鬼)を引き寄せることとなり、大きな騒動へと発展する。

    【評点】
    メタクリティック 84点
    最新→
    ロッテン・トマト 97%(観客96%)
    最新→
    IMDB 7.6
    最新→
    シネマスコア  A
    レターボックス 4.1
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    【予告編▼】
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    <音楽シーン(クリップ)▼>

    <サントラのアルバム▼>

    <劇伴のアルバム再生リスト▼>

    <メイキング映像▼>
    <伝説のブルース奏者兼歌手、バディ・ガイのライブ映像▼>






  • 「センチメンタル・バリュー」
    センチメンタル・バリュー

    美しく内省的な家族劇

    ノルウェーを舞台とする家族劇。疎遠になっていた父と娘2人の再会、そして確執を描く。アカデミー賞脚本賞にノミネートされた「わたしは最悪」と同じ監督&脚本&主演。美しくじんわり染みる内省的な一本。

    「撮りたい」父と「演じたくない」娘

    かつて映画監督として名声を高めた父親(ステラン・スカルスガルド)が、自分の家族の歴史を映画化しようとする試みが、物語の起点となる。父親は、舞台俳優である娘(レナータ・ラインスヴァ)に主役を演じてもらいたいと申し出るが、娘は拒絶する。家族について「語りたい(撮りたい)」父と、「演じたくない」娘の溝は埋まるのか。「親子関係」をテーマに据えつつ、「映画(創作活動)を通じて自らの人生を語る」あるいは「語り直す」ことの価値や是非を、作品の命題に取り込んだ。

    主要キャスト4人の演技パワー

    主要キャスト4人の演技の力を最大限に引き出しながら、パーソナルな題材を普遍的な物語として静かに紡いでいく手法が高い評価を得た。静謐(せいひつ)でありながら、描かれる葛藤は鋭利で生々しい。「心の内側で静かに爆発する映画」などと絶賛された。

    監督の自伝的な要素も

    なお、ヨアキム・トリアー監督は本作で自伝的な要素も取り入れたという。父は音響技師、母は短編映画作家、そして何より祖父のエリック・ローシェンは、ノルウェー映画史に名を残す巨匠監督だった。ステラン・スカルスガルド演じる「かつての巨匠監督」という設定には、トリアー監督が見てきた祖父や親の世代が持つ「芸術への絶対的な信念と、それゆえの独善リスク」が色濃く反映されている。同時に、娘役が抱える「巨星すぎる父への複雑な感情とプレッシャー」は、自身の若い頃の心情が投影されているという。

    非英語として史上最多の主要部門ノミネート数

    9個のノミネートを獲得した。これは外国語(非英語)の作品として「グリーン・デスティニー」「ローマ」に次ぎ、「西部戦線異状なし(2022年版)」と並ぶ史上2位タイの記録。ノミネート9個のうち7個は「主要8部門」が占めており、これは「ローマ」の5個を抜いて史上最多記録。主要キャスト4人全員がノミネートされたのが画期的。

    【センチメンタル・バリュー全結果】
    受賞 国際映画賞
    ノミネート部門 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     レナータ・ラインスヴァ
    助演男優賞
     ステラン・スカルスガルド
    助演女優賞
     インガ・イブスドッテ・リレオス
    助演女優賞
     エル・ファニング
    脚本賞
    編集賞
     監督:ヨアキム・トリアー(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
     脚本:エスキル・フォクト(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )、ヨアキム・トリアー
     主演:レナータ・ラインスヴァ(ノルウェー人、「わたしは最悪」など )
     助演:ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテ・リレオス、エル・ファニング(「名もなき者」「マレフィセント」など)
     公開日:2026年2月20日(日本)
     製作国:ノルウェー、仏、独、デンマーク
     言語:ノルウェー語(一部英語)
     米国配給会社:ネオン
     長さ:2時間15分
    【前哨戦での受賞】
    ・カンヌ国際映画祭 2位(グランプリ賞)
    ・英国アカデミー賞 非英語作品賞
    ・ボストン批評家賞 非英語作品賞
    ・ワシントン批評家賞 国際映画賞
    ・ダラス批評家賞 外国語映画賞
    ・ジョージア批評家賞 国際映画賞
    ・サンフランシスコ批評家賞 脚本賞
    【評点】
    メタクリティック 86点
    最新→
    ロッテン・トマト 97%
    最新→
    IMDB 7.9
    最新→
    レターボックス 4.2
    最新→

    【予告編▼】
    動画集を開く▼ <カンヌのレッドカーペット▼>






  • 「ハムネット」
    ハムネット

    本年度きっての優良文芸作品

    2021年オスカーで作品賞&監督賞に輝いた「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督の4年ぶりの新作。歴史に名を残す戯曲が生まれる背後にあった「夫婦愛」と「親子愛」を、触覚的で繊細な映像表現と自然体の演技で浮かび上がらせる。本年度きっての優良文芸作品。

    シェイクスピアの妻アグネス

    英国の劇作家シェイクスピアの妻アグネスを主人公とする創作劇。2020年に発表された作家マギー・オファーレルの小説が原作。
    シェイクスピアは18歳のときに8つ年上の女性アグネス結婚。双子の子供(長男ハムネットと長女ジュディス)をもうけたが、ハムネットは12歳で夭逝(ようせい)する。
    この史実をベースに、豊かな想像力と大胆な再解釈を加え、長年にわたり「悪妻の典型」とも言われてきたアグネスの生き様を全く新たな視点で描く。ジャオ監督が原作者と共同で脚本を書いた。

    悲劇と芸術

    悲劇に直面する母親(妻)の情念と、父親(夫)の内なる格闘を徹底して掘り下げることで、逃げ場のない没入感を生み出している。癒えない傷跡が創造的なエネルギーへと変わり、一大芸術へと昇華されていくプロセスが強烈な救済感をもたらすとして、絶賛された。女性からの支持は圧倒的。

    映画化への道のり

    スピルバーグの指名▼

    原作小説『ハムネット』が出版される前の2019年後半、英国テレビドラマ界で優れた実績のある敏腕プロデューサー、ライザ・マーシャルが映像化の権利を獲得する。同じく英国の大物監督サム・メンデス氏(「アメリカン・ビューティー」など)の制作会社とタッグを組み、映画化を企画する。

    演劇畑出身でシェイクスピアにも思い入れが強いメンデス氏は当初、自らメガホンを撮ろうかと思ったが、「これはオレじゃないな」と踏みとどまり、自身を映画界の成功者へと導いてくれた恩師スティーブン・スピルバーグ氏に相談する。

    共同プロデューサーとして加わったスピルバーグ氏は、「大自然の営みと人間の心の奥底にある本質の両方に対して、まるで魔法のような深い理解と共鳴力を持っている」として尊敬の念を抱いていたクロエ・ジャオ氏に、監督就任をオファーする。

    ジャオ監督は最初、原作を読むことなくオファーを断った。「母親としての経験がない自分には無理だ」と思ったからだ。

    しかし、その直後、ある映画祭で、当時まだ無名だった男優ポール・メスカルに出会う。初対面のメスカルを見て、「この役者ならシェイクスピアを演じられるのでは」と直感したジャオ監督は「シェイクスピア役に興味ある?」と尋ねる。メスカルは「もしかして小説『ハムネット』を映画化するの?あの本大好き!ぜひ読んで」と逆に薦められる。

    小説を読んで感銘を受けたジャオ監督は、主人公アグネス役として「この人しかいない」と浮かんだ女優ジェシー・バックリーにさっそく出演を打診。彼女が了解したことから、監督を引き受けることにしたという。


    【ハムネット全結果】
    受賞 主演女優賞
     ジェシー・バックリー
    ノミネート部門 作品賞
    監督賞
    脚色賞
    配役賞
    作曲賞
    衣装デザイン賞
    美術賞
     監督:クロエ・ジャオ
     主演:ジェシー・バックリー
     助演:ポール・メスカルほか
     脚本:マギー・オファーレル(兼原作者)、クロエ・ジャオ
     原作:小説『ハムネット』(2020年、マギー・オファーレル著)
     公開日:2026年4月10日(日本)
     製作国:イギリス、アメリカ
     言語:英語
     米国配給会社:フォーカス
     長さ:2時間5分
    【前哨戦での受賞】
    ・トロント国際映画祭 観客賞
    ・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
    【評点】
    メタクリティック 84点
    最新→
    ロッテン・トマト 86%
    最新→
    IMDB 8.0
    最新→
    レターボックス 4.2
    最新→

    【予告編▼】
    動画集を開く▼ <劇伴▼>

    <ゴールデングローブ賞ドラマ作品賞の受賞スピーチ▼>

    <初公開となったテルライド映画祭での監督挨拶▼>

    <製作陣インタビュー▼>






  • 「マーティ・シュプリーム」
    マーティ・シュプリーム

    米国の世界的な卓球選手(マーティ・リースマン)の人生から着想を得たフィクション。これまで兄弟コンビで「アンカット・ダイヤモンド」などを手掛けてきたサフディ・ブラザーズの兄のほうであるジョシュ・サフディの初の単独監督作。本年度のA24イチオシ。製作費も興行収入も、A24として過去最高となった。

    成功への妄執を描く

    舞台は1952年。『自分は特別だ』『絶対に成功する』という妄執に取りつかれた人物の暴走がひたすら描写される。人格破綻者である主人公が何をしでかすか分からないという意味においてスリラー的で、全編を貫く疾走感や緊張感が中毒的だとして、多くの批評家に支持された。「スポーツ版ウルフ・オブ・ウォールストリート」とも称された。

    演技や技術への称賛

    傍若無人な男の危なさを表現した主演シーンティモシー・シャラメの役作りが称賛された。テンポの良い編集、カメラワークの切れ味、音楽との一体感といった技巧面も高評価。卓球シーンも見ごたえたっぷり。

    卓球ハスラー(勝負師)

    着想元となったマーティ・リースマン選手(1930年~2012年)は、1949年と1952年の世界選手権シングル部門で銅メダルに輝いた人物。12歳のころから卓球クラブに通い始め、年上の選手を相手に金を賭けてプレーするギャンブル試合を展開。「卓球ハスラー」として有名になった。(本作では、当人の生い立ちや経歴はあまり描かれない)

    ライバルは日本人選手

    注目ポイントは、主人公のライバルとなる日本人選手「エンドウ」の存在。このエンドウは、1952年世界選手権で優勝した実在の選手、佐藤博治氏(1925年~2000年)から着想を得たキャラクターとされる。佐藤氏は本物のマーティとも試合をしており、映画内でも壮絶なマッチを展開する。

    川口功人選手が好演

    この役柄を演じているのは、2025デフリンピック卓球男子団体で銅メダルを獲得した川口功人(こうと)選手(トヨタ自動車所属)。映画初出演ながら、冷静沈着な立ち振る舞いで強い印象を与える。卓球シーンではキレのあるフォームで見せ場を連発。マーティの狂気的なスイングと、エンドウの氷のような静寂がぶつかり合うラリーは圧巻。

    モデルとなった佐藤博治選手とは▼ エンドウのモデルとなった佐藤博治(ひろじ)氏は青森県出身。1952年インドのムンバイ(当時ボンベイ)で開かれた「第19回世界卓球選手権大会」に出場し、男子シングルで優勝した。日本にとって初めての卓球世界選手権だったが、いきなりの快挙。突然の世界チャンピオン誕生に、戦後・日本が沸き返り、卓球ブームが起きた。

    本作では、この世界選手権が序盤の舞台となる。あくまでフィクションであるため、開催地はインドでなくイギリスになっているなど、いろいろ改変されている。

    この大会で日本チームは7種目のうち4種目(男子単・複、女子団体・複)で優勝という絶好調ぶりだったが、とりわけ欧米の強豪選手を相手に、個人・団体戦を通じて20戦全勝の快進撃を見せた佐藤の活躍が際立っていた。

    このとき話題になったのが、佐藤が使った新兵器「スポンジ・ラケット」。ひのき板の柾(まさ)目のラケットに厚さ6ミリの粒の細かいスポンジを張ったものだった。自らスポンジラバーをカミソリを使ってミリ単位で削り、最も速く打ち返せる6ミリという厚さを割り出したという。時計店の長男として生まれ、店を手伝ってきただけあって、創意にあふれた職人かたぎの技の成果だった。

    スポンジ・ラケットは攻撃には極めて有効だが、守備に回ると返球が難しいという難点があった。確実に球を打ち返し、相手のすきを突く「守備型」の選手だった佐藤選手は特訓を重ね、スポンジ・ラケットを守備でも上手に使いこなせるようになったという。

    一方、マーティ・リースマンは当時、「ハドバット(ラバーが薄く、木の音がするラケット)」の天才として世界的に名を馳せていた。それまでマーティが誇っていた超絶的なテクニックや打球音によるタイミングの計り方は、音もなく猛烈な回転をかける佐藤選手のスポンジ・ラケットの前では通用しにくくなる。これが、マーティの闘争心を一段と駆り立てたのであった。

    ヤマ場の舞台は戦後の東京

    本作では、戦後間もない日本の東京で開催される卓球のエキシビジョン・マッチ(模範試合)が、本作の重要な舞台の一つとなる。 どん底から這い上がろうとする復興期・日本の熱気や、「欧米化」する前の風土の独自固有性がなんとなく表現されており、東洋的な異国情緒が、主人公マーティの孤独な闘いを映画的に盛り立てる。

    【ノミネート部門(9個/受賞はゼロ)】
    ノミネート部門 作品賞
    監督賞
    主演男優賞
     ティモシー・シャラメ
    脚本賞
    撮影賞
    編集賞
    配役賞
    衣装デザイン賞
    美術賞
     監督:ジョシュ・サフディ
     主演:ティモシー・シャラメ
     助演:グウィネス・パルトローほか
     脚本:ロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディ
     公開日:2026年3月13日(日本)
     製作国:アメリカ
     米国配給会社:A24
     製作費:7000万ドル
    (A24配給作品としては2024年「シビル・ウォー」の5000万ドルを上回り過去最高)
     長さ:2時間30分
    【評点】
    メタクリティック 88点
    最新→
    ロッテン・トマト 94%
    最新→
    IMDB 8.1
    最新→
    レターボックス 4.2
    最新→

    【予告編▼】
    動画集を開く▼ <モデルとなったマーティ・リースマンのインタビュー▼>

    <試合(1949年、世界選手権)▼>

    <劇伴アルバム▼>

    <挿入歌「フォーエバー・ヤング」など▼>

    <挿入歌「ルール・ザ・ワールド」▼>






  • 「トレイン・ドリームズ」
    トレイン・ドリームズ

    【配信:ネトフリ

    前年「シンシン」で絶賛された監督&脚本家による静かな一作。シンシンと同じくインデペンデント映画として制作された後、Netflixがサンダンス映画祭で配給権を獲った。

    鉄道敷設や森林伐採に汗を流し、家族を愛しながら、19世紀終盤から20世紀のアメリカを静かに歩み続けた「普通の労働者」の生涯を描いた。 大きな時代のうねりに対して無力でありながらも、ただ誠実に生き、働き、そして老いていく人間の「尊厳」が表現されている。

    内容的に地味ではあるが、味わい深さや詩的な魅力が高く評価された。「監督が静寂を恐れずに時間をたっぷり使って描いた演出(長回しなど)が、観客を没入させる」(米コライダー)などと批評家たちもほぼ称賛一色。

    【ノミネート部門(4個/受賞はゼロ)】
    ノミネート部門 作品賞
    脚色賞
    撮影賞
    歌曲賞
     監督:クリント・ベントリー(「シンシン」など)
     脚本:クリント・ベントリー&グレッグ・クウィダー(「シンシン」の脚本コンビ)
     主演:ジョエル・エジャトン(「ラビング 愛という名前のふたり」「ゼロ・ダーク・サーティ」など)
     助演:フェリシティ・ジョーンズ、ウィリアム・H・メイシーほか
     公開日:2025年11月21日(Netflix配信)
     製作国:アメリカ
     配給会社:Netflix
     長さ:1時間42分
    【評点】
    メタクリティック 88点
    最新→
    ロッテン・トマト 95%
    最新→
    IMDB 7.5
    最新→

    【予告編▼】





  • 「シークレット・エージェント」
    シークレット・エージェント
     国:ブラジル

    前年の「アイム・スティル・ヒア」に続き、ブラジル映画が2年連続で作品賞ノミネートという快挙を果たした。

    ひっそりと逃げる男の緊張感

    1977年の軍事独裁政権下のブラジルを舞台とする政治スリラー(フィクション)。「秘密工作員(シークレット・エージェント)」という題名からは、特殊な能力を持ったスパイのスリラー劇のような印象を受けるが、本作の主人公は逃げることに必死な「普通の学者」。軍事政権の監視の網をすり抜け、ただ『自らの存在を消し、生き延びること』が最大のミッションとなった男の緊張感に満ちた日常や出会い・触れ合いが描かれる。

    立ち込める独裁の恐怖

    スローテンポで、物語の展開はおおむね地味。それでも、迫りくる恐怖が全編を通して観客の肌にまとわりつくように立ち込める。軍事政権による物理的な暴力に加えて、反体制派の個人の存在が行政の記録から消し去られるという「静かな暴力」もあぶり出される。

    色彩が強いインパクト

    当時のブラジルが持っていた空気感を再現した巧みな映像表現が高く評価された。デジタル撮影でありながら、少しザラついた質感があり、まるで1970年代の35mmフィルムで撮られた未発表のアーカイブを見つけてきたかのような雰囲気。インパクトのある色彩の使い方も絶賛された。

    【ノミネート部門(4個/受賞はゼロ)】
    ノミネート部門 作品賞
    主演男優賞
     ヴァグネル・モウラ
    国際映画賞
    配役賞

     監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
     主演:ヴァグネル・モウラ
     製作国:ブラジル+独仏蘭
     言語:ポルトガル語、ドイツ語
     米国配給会社:ネオン
     長さ:2時間38分
    【前哨戦での受賞】
    ・カンヌ国際映画祭【4冠】監督賞&主演男優賞&国際映画批評家連盟賞&フランスアート系映画館協会賞
    ・クリティック・チョイス賞 非英語作品賞
    ・ニューヨーク批評家賞 外国語映画賞(&主演男優賞も)
    ・ロサンゼルス批評家賞 外国語映画賞
    ・オースティン批評家賞 国際映画賞
    ・全米映画批評家協会賞(NSFC)=渋め 非英語作品賞(&作品賞3位)
    ・ゴールデングローブ賞 非英語作品賞

    【評点】
    メタクリティック 91点
    最新→
    ロッテン・トマト 98%
    最新→
    IMDB 7.9
    最新→
    レターボックス 3.9
    最新→
    【予告編▼】





  • 「F1/エフワン」
    F1/エフワン

    映画スター(ブラッド・ピット)が輝き、大画面でレースのスピードに酔いしれる体験型作品。「古き良きハリウッド文化」が、最新の映像・音響技術と融合し、「トップガン マーヴェリック」で感じたようなノスタルジーと高揚感をもたらす。世界興行収入1000億円のメガヒット作。

    本年度の作品賞ノミネート争いは秀作がひしめく激戦だったが、「エンタメもの」というレッテルを打ち破り、見事に「10枠」入りを果たした。とりわけ、批評家から絶大な支持を得た「シンプル・アクシデント/偶然」に競り勝ったことは注目に値する。イラン発・欧州出資のシンプル・アクシデントは、カンヌ映画祭の最高賞やNY批評家賞の監督賞に輝き、作家性や政治的な意味合いの強さからノミネート入りを予想する声が多かったが、超メジャー作品のF1が立ちはだかった。

    そもそもアカデミー事務局が作品賞ノミネートを5枠から10枠に増やし、同時にランキング形式の投票方式に変えたのは、「F1」のようなブロックバスターを押し上げるためだった。バットマン「ダークナイト」などの大衆娯楽作の相次ぐ落選を受けた苦肉の策でもあった。ところが、「ブラックパンサー」のような例外は出たものの、依然としてブロックバスターは冷遇され続け、むしろ作家系や外国語の作品が増えるという皮肉な結果を生んでいた。

    こうしたなか、エンタメ路線であることを恥じるのでなく、むしろ前面に出しながら堂々とキャンペーンを張ったF1が候補入りを果たした意義は大きい。しかも、「ウィキッド2」「アバター3」といった続きものではなく、オリジナル・ストーリーの本作が選ばれたことは、普通に喜ばしい。


    【F1/エフワン全結果】
    受賞 音響賞
    ノミネート部門 作品賞
    編集賞
    視覚効果賞

     監督:ジョセフ・コシンスキー(トップガン マーヴェリックなど)
     主演:ブラッド・ピット
     助演:ダムソン・イドリス(若手選手)、ハビエル・バルデム(チーム所有者)、ケリー・コンドン(車の開発者)ほか
     脚本(書下ろし):アーレン・クルーガー(トップガン マーヴェリックなど)
     公開日:2025年6月20日(日本)
     製作国:アメリカ
     製作会社:アップル
     配給担当:ワーナー
     長さ:2時間15分





  • 「フランケンシュタイン」
    フランケンシュタイン

    【配信:ネトフリ

    「世界初のSF小説」とも評されるメアリー・シェリーの怪物物語『フランケンシュタイン』(1818年刊)を、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞した名匠ギレルモ・デル・トロがリメイクした。

    「神話的・オペラ的な壮大さ」が高い評価を得た。ややメロドラマ的ではあるが、近年のホラーやSFが「リアリズム」や「ひねり(意外性)」を重視するなか、あえて19世紀文学の「大仰な感情表現(悲嘆、絶望、愛)」をストレートに映像化した点が、称賛の対象となった。

    「ヘルボーイ」や「シェイプ・オブ・ウォーター」などで、「異形の者への愛」を見せてきたデル・トロ監督の一つの集大成とも位置づけられている。

    デル・トロ監督は、7歳の頃に1931年版の映画「フランケンシュタイ」を見て衝撃を受け、それ以来、怪物(クリーチャー)に感情移入し、この物語に取り憑かれてきたという。何年もかけてクリーチャーのデザイン画を描きためたり、脚本の構想を練り続けたりしており、準備期間は実質20〜25年に及ぶとされる。

    その構想を実現につなげたのは、ほかでもないNetflixマネーだった。

    2018年、デル・トロ監督はNetflixの経営者(テッド・サランドス共同CEO)に対して、自身の「死ぬまでにやりたいことリスト」を提示。開発途中で頓挫していた「ピノッキオ」の完成と、構想段階だった「フランケンシュタイン」の2つを挙げ、協力を求めた。

    Netflixはまず「ピノッキオ」計画の救済・再開のための資金を提供。2022年に公開にこぎつけ、オスカーでアニメ賞を受賞するなど成功を収める。ほどなくフランケンシュタインの契約も締結し、ストリーミング配信作品としては破格の製作費(約180億円)を拠出した。

    巨大なセット、精巧なアニマトロニクス(機械仕掛けの人形)、特殊メイクなどの物理的な美術造形に巨額資金が充てられ、重厚な映像美が構築された。

    なお、デル・トロ監督の過去作と比べた米国での評点の高さは、「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」よりだいぶ劣るものの、「ナイトメア・アリー」「ヘルボーイ」と比べて遜色ない。

    【フランケンシュタイン全結果】
    受賞 美術賞
    衣装デザイン賞
    メイク&ヘア賞
    ノミネート部門 作品賞
    助演男優賞
     ジェイコブ・エロルディ
    脚色賞
    撮影賞
    作曲賞
    音響賞
     監督:ギレルモ・デル・トロ
     脚本:ノア・オッペンハイム
     主演:オスカー・アイザック
     助演:ジェイコブ・エロルディ(怪物役)ほか
     公開日:2025年11月7日(Netflix配信)
     製作国:アメリカ
     配給会社:Netflix
     長さ:2時間30分
    【製作費】
    1.2億ドル
    【前哨戦での受賞】
    ・トロント国際映画祭 観客賞2位
    【評点】
    メタクリティック 78点
    最新→
    ロッテン・トマト 85%
    最新→
    IMDB 7.5
    最新→

    【予告編▼】





  • 「ブゴニア」
    ブゴニア

    「女王陛下のお気に入り」(2018年)を起点として、「哀れなるものたち」(2023年)、「憐れみの三章」(2024年)と続いてきたヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンの協働プロジェクトが、またしても世界の賞レースにモロに絡んだ。

    社会的な疎外感を抱く労働者が、圧倒的な富と権力を持つ製薬会社の女性CEOを、「隠れ宇宙人だ」と思い込むことから始まるブラックコメディ。「この男は狂った陰謀論者か、それとも救世主か」という問いを、観客に突きつけたまま物語が進行する。

    原作は、カルト的な人気を誇ってきた韓国のブラックコメディ映画「地球を救え!」(2003年)。「パラサイト 半地下の家族」を手掛けた韓国エンタメ企業「CJ ENM」が、「地球を救え」のハリウッド版リメイクを目指して2020年に企画を始動させた。

    原作映画のファンだった「ヘレディタリー」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督がプロデューサーとして名乗りを挙げ、テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」で注目を集めた新進の脚本家ウィル・トレイシーを起用。台本を気に入ったランティモスが監督を引き受けた。原作である韓国版を撮ったチャン・ジュナン監督(大ヒット作「1987、ある闘いの真実」で有名)は、エグゼクティブ・プロデューサーに回った。

    歴代のランティモス作品の中では比較的ストレートに観やすく、一般観客の支持率も高め。ただ、「哀れなるものたち」に比べると、映像面の華やかさや奇想天外な世界観の構築は弱め。また、ストーリーの緻密さの面で「女王陛下のお気に入り」より劣る、というのが評価の相場。

    【ノミネート部門(4個/受賞はゼロ)】
    ノミネート部門 作品賞
    主演女優賞
     エマ・ストーン
    脚色賞
    作曲賞
     監督:ヨルゴス・ランティモス(「哀れなるものたち」「女王陛下のお気に入り」など)
     脚本:ウィル・トレイシー(テレビドラマ「メディア王(サクセッション)」シーズン2・第5話の脚本を書き、エミー賞脚本賞を受賞)
     主演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンズ
     公開日:2026年2月13日(日本)
     製作国:アイルランド、韓国、米国
     配給会社:フォーカス
     長さ:1時間58分
    【製作費】
    5000万ドル
    【評点】
    メタクリティック 72点
    最新→
    ロッテン・トマト 87%
    最新→
    IMDB 7.7
    最新→

    【予告編▼】

 ※2026年の全部門はこちら→

2025年

インディー映画「アノーラ」大勝利

インディー映画一筋のショーン・ベイカー監督の現代コメディ「アノーラ(Anora)」が大勝利。優れた作家性と深みのある娯楽性を両立させ、メジャースタジオの超大作や重厚な歴史ドラマを打ち破った。


部門 受賞(2025)
作品賞
  • 「アノーラ(Anora)」
    アノーラ
    【配信:アマゾン

    ※作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5冠

    作家性+面白み

    ニューヨークのストリッパーが、ロシア財閥一族の放蕩(ほうとう)息子と恋に堕ちる。それを聞いた息子側ファミリーが結婚阻止へと動き、ドタバタ劇に発展する。「フロリダ・プロジェクト」(2017年)など庶民社会のコメディを得意とするベイカー監督の真骨頂。作家性に満ちているが、テンポが良く、気軽に吸収しやすい。会話劇としての魅力もたっぷり。何よりエネルギッシュで、普通に面白い。

    カンヌから先頭を走る

    賞レースでは、仏カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲得。米国映画として2011年の「ツリー・オブ・ライフ」以来13年ぶりの快挙となった。続くトロント国際映画祭で次点。オスカー前哨戦としての価値が低いゴールデングローブ賞を落としたものの、最も重要なPGA(全米プロデューサー組合賞)とDGA(米監督組合賞)をダブルで制した。クリティック・チョイス賞の受賞スピーチで訴えた「地域の映画館への支持」も共感を呼んだ。

    批評家レビュー平均点が驚異の「91」

    展開、人物造形、絵作り等がユニークでセンスが良いことなどから批評家がこぞって絶賛。米メタクリティックが集計したレビュー平均点は「91」で、本年度オスカー関連作の中で「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」に次ぐナンバー2。

    労働者階級の悲哀

    「格差婚」というありがちな設定だが、物語が進むにつれて新鮮味がアップ。風変わりなシンデレラ・ストーリー的ノリがある一方で、労働者階級の悲哀が心にしみる。実直で感情表現豊かなヒロインを生き生きと演じたマイキー・マディソン(主演女優賞)が、最大級の賛辞を集めた。

    「重みがない」との声も

    とはいえ、オスカー作品賞としては「軽すぎる(重みがない)」との声も出ていた。社会テーマ性が弱め。露骨な性的描写が過剰気味で、とくに前半は「ソフトポルノ」と位置づける人も。娼婦やロシア経済マフィアといった登場人物たちに本質的に共感できないとの反応も出た。

    全体のまとまり感

    それでも、高い作家性を発揮しつつストーリー全体に「まとまり」があり、エンディングの納得感も高い本作は、俳優&脚本家のストライキの影響でやや貧弱になった本年度ラインナップの中で稀有な存在。リピート鑑賞が容易で、とくに後半部分のダイアログなどは見るたびに味わいが深まりやすいのも強み。

    製作費10億円とは思えない良質さ

    ベイカー監督(完成時53歳)はこれが長編8作目で、初のオスカーノミネート。過去作と同様、脚本(オリジナル)、配役、編集まで自ら手掛けた。製作費600万ドル(約10億円)の低予算(「コーダ」より安い)ながら、前作(レッド・ロケット)までの粗っぽさがなくなり上質感が増した。マディソンだけでなく、ユーラ・ボリソフ(助演男優賞ノミネート)らマイナーな役者陣の魅力を引き出した演出力も際立つ。

    個人4冠を達成し、「インディー映画万歳!」

    本作でベイカー監督は個人として一晩で4個のオスカー(作品、監督、脚本、編集)を獲得。個人の単独作での受賞数として新記録を樹立した。4回登壇した授賞式では、最後の作品賞の受賞スピーチを「インディペンデント映画万歳!(Long live independent film!)」と言って締めくくった。

    【アノーラ全結果】
    受賞部門 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     マイキー・マディソン
    脚本賞
    編集賞
    他の候補部門 助演男優賞
     ユーラ・ボリソフ
     監督:ショーン・ベイカー
     主演:マイキー・マディソン
     脚本:ショーン・ベイカー
     公開日:2025年2月28日(日本)
     製作国:アメリカ
     配給:ネオン
     長さ:2時間18分  
    【前哨戦での受賞】
    ・PGA(全米プロデューサー組合賞)
    ・DGA(米監督組合賞)
    ・クリティック・チョイス賞
    ・カンヌ国際映画祭 パルムドール(最高賞)
    ・ロサンゼルス批評家賞
    ・ボストン批評家賞
    ・アトランタ批評家賞
    ・ダラス批評家賞
    ・ミシガン批評家賞
    ・アイオワ批評家賞
    ・ベイエリア批評家賞
    ・フィラデルフィア批評家賞
    ・米南東部批評家賞
    ・ノースダコタ批評家賞
    ・オースティン批評家賞
    ・ヒューストン批評家賞
    ・オンライン批評家賞
    ・インディー・スピリット賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 93%(観客89%)
    最新→
    IMDB 7.7
    最新→
    メタクリティック 91点
    最新→
    【興行収入】
    北米:1900万ドル
    世界:4800万ドル (
    【製作費】
    600万ドル
    【受賞スピーチ▼】
    動画集を開く▼ <予告編▼>
    <クリティック・チョイス受賞スピーチ▼>

    <オープニング曲▼>

    <監督インタビュー▼>

    <マイキー・マディソンのジミー・キンメル番組出演▼>
部門 ノミネート(2025)
作品賞ノミネート
  • 「ブルータリスト」
    ブルータリスト
    【配信:アマゾン

    純シネマ的な風味

    ナチスの迫害を生き延びたユダヤ系ハンガリー人が、米国に移住。建築家としてアメリカン・ドリームを追いかけるも、様々な苦悩が待ち受ける。3時間35分の超長尺。映像表現や音楽の質の高さが絶賛された。重厚・壮大で、純シネマ的な風味がたっぷり。フィクション。

    新鋭監督の野心作

    新鋭ブレイディ・コーベット監督(公開時36歳)の長編3作目で、7年という歳月を費やした野心的な一作。 ベネチア国際映画祭の監督賞(銀獅子賞)受賞後、A24が米国内での配給権を買い取った。

    芸術性でアノーラに勝る?

    批評家による評点は「アノーラ」とほぼ互角で本年度トップレベル。 娯楽性はアノーラより劣るが、芸術性では勝るとの評価が多かった。

    長時間の鑑賞の最後に待つものは

    一方で、「退屈」「冗長」「もったいぶり過ぎ」との批判が出た。作り手の野心の大きさや技術面での到達度に、肝心の物語力が追いついていないというのが否定派の主たる論調だ。せっかくの長時間の鑑賞体験が、終盤の盛り上がりとして結実しにくく、ガッカリ感や疲労感を訴える人も。暗めのテイストもあいまって、劇場公開の規模拡大とともに観客支持率がやや低下した。
    主演エイドリアン・ブロディの演技は、ほぼ絶賛一色。

    【ブルータリスト全結果】
    受賞部門 主演男優賞
     エイドリアン・ブロディ
    作曲賞
    撮影賞
    他の候補部門 作品賞
    監督賞
    助演男優賞
     ガイ・ピアース
    助演女優賞
     フェリシティ・ジョーンズ
    脚本賞
    編集賞
    美術賞
     監督:ブレイディ・コーベット
     出演:エイドリアン・ブロディほか
     脚本:ブレイディ・コーベット、モナ・ファストボールド
     公開日:2025年2月21日(日本)
     製作国:ハンガリー、英国、米国
     配給:A24(米国内)
     長さ:3時間35分
    【前哨戦での受賞】
    ・ゴールデングローブ賞(ドラマ作品賞)
    ・ニューヨーク批評家賞
    ・シカゴ批評家賞
    ・ネバダ批評家賞
    ・フェニックス批評家賞
    ・ベネチア国際映画祭 監督賞(銀獅子賞)
    ・ミネソタ批評家賞
    ・ハワイ批評家賞
    ・ポートランド批評家賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 94%(観客80%)
    最新→
    IMDB 7.6
    最新→
    メタクリティック 90点
    最新→
    【製作費】
    960万ドル
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <サントラ(再生リスト)▼>

    <監督の男泣き(ベネチア映画祭)▼>





  • 「名もなき者~A Complete Unknown」
    名もなき者
    【配信:アマゾン

    若き日のボブ・ディラン伝

    若き日の歌手ボブ・ディランの伝記ドラマ。異次元の天才ぶり、運命的な出会いの数々、先鋭的な挑戦を、数々の名曲の演奏シーンと巧みな演技で紡ぐ。歴史にインパクトを与えたとされる出来事や人物を、むやみにデフォルメすることなく歌と会話の力で渋くドラマ化。同時にカジュアルなエンタメ性もしっかりと備え、幅広い層にアピールした。1960年代の郷愁もたっぷり。

    エレキ論争

    ディランのキャリア初期の1961年から1965年までを描く。ギター1本を手に故郷ミネソタからニューヨークに到着するところからスタート。フォーク界の巨星となった後、1965年のアルバムで電子楽器(エレキギターなど)を採用したことをめぐる大論争が、物語の一つの焦点となる。原題「A Complete Unknown(全くの無名人)」は、ディランの代表曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」のサビの一節。

    音楽センスの良さ

    監督は「ウォーク・ザ・ライン」(2005年)、「フォードvsフェラーリ」(2019年)などで手堅いスキルを見せ続けてきたジェームズ・マンゴールド。「ウォーク・ザ・ライン」で見せた音楽センスの良さが再び全開となった。ボブ・ディラン役を演じ、自ら歌唱もこなしたティモシー・シャラメら役者陣の奮闘も見どころ。

    北米だけ100億円を突破

    興行成績はたいへん良好で、北米だけ100億円を突破。観客の反応も良く、劇場公開時のリアルな評価を集計するシネマスコアで「ウィキッド」と同じ「A」が付いた。

    批評家の評価は劣るが

    評論家のレビューは際立って良いわけではなく、ロッテン・トマトの批評家支持率は81%。メタクリティックのスコアも70%で、作品賞ノミネート10本の中で最低。「革新性や野心の不足」が指摘された。それでも前哨戦のノミネート段階では予想以上の大善戦。英国アカデミー作品賞候補5枠、SAG(俳優組合賞)アンサンブル・キャスト賞5枠、DGA(米監督組合賞)候補5枠に入った。

    無冠に終わる

    巧みな賞レース・キャンペーンで知られる配給会社「サーチライト」の後押しもあって、オスカーでも8部門の候補に。「オスカーのマイナー路線化」を懸念する層から猛プッシュする声が出たが、結局無冠に終わった。

    【ノミネート部門】
    ノミネート部門 作品賞
    監督賞
    主演男優賞
     ティモシー・シャラメ
    助演男優賞
     エドワード・ノートン
    助演女優賞
     モニカ・バルバロ
    脚色賞
    衣装デザイン賞
    音響賞
     監督:ジェームズ・マンゴールド(「ウォーク・ザ・ライン」「グレイテスト・ショーマン」など)
     主演:ティモシー・シャラメ
     助演:エドワード・ノートン、エル・ファニングほか
     公開日:2025年2月28日(日本)
     製作国:アメリカ
     配給:サーチライト
     長さ:2時間1分
    【評点】
    ロッテン・トマト 81%(観客96%)
    最新→
    IMDB 7.5
    最新→
    メタクリティック 70点
    最新→
    【興行収入】
    北米:1億1000万ドル 【製作費】
    5000万~7000万ドル
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <ライク・ア・ローリング・ストーンbyシャロメ▼>

    <特別映像▼>

    <デュエット「It Ain't Me, Babe」シーン▼>

    <サントラ再生リスト▼>

    <ティモシー・シャラメのSAGアワード主演男優賞スピーチ▼>

    <バブル前夜の日本でディランが踊る「タイト・コネクション」(1985年)。なんと、あの偉大なポール・シュレイダー監督が唯一撮った音楽ビデオだという▼>





  • 「エミリア・ペレス」
    エミリア・ペレス
    【配信:アマゾン

    独創的な異色ミュージカル

    異色ミュージカル。メキシコ麻薬組織のボスが逃亡のために性転換手術を受けるという奇抜な物語を、キャスト陣の実直な演技や個性豊かな歌の数々、詩的なビジュアルで魅せる。独創的で大胆。

    外国語作品として史上最多ノミネート

    フランス製作(言語はスペイン語)で、監督のジャック・オーディアール氏はフランス人。外国語の作品としてはオスカー史上最多となる13個(12部門)ノミネートを獲得した。2番手の「ブルータリスト」「ウィキッド」(いずれも10個)に水を開けた。

    極端な賛否に二分

    世界的に賛否が大きく分かれた。欧州の批評家は強く支持。米国以外の評論家が選ぶゴールデングローブ賞で作品賞(コメディ・ミュージカル部門)を受賞し、最有力候補と見られていた「アノーラ」「ウィキッド」を破った。

    クリエイターや表現者に響く

    評論家以上に好意的だったのが、クリエイター層や表現者(俳優など)たち。斬新でラディカルな表現方法や自分たちの美意識を貫く徹底ぶり、そして感情・感性を揺さぶるシーンの連続に、世界の右脳が反応した。

    メキシコで反発

    一方、物語の舞台となったメキシコ及び周辺諸国では「マフィアに殺された人たちの現実を軽視している」「欧州人の上から目線」などと強い反発が出た。米国の観客も支持派と嫌悪派の真っ二つに割れ、トランスジェンダーの描き方についても賛否の論争が起きた。

    観客支持率が急落

    賞レースで脚光を浴びるにつれて、Netflixで鑑賞した人たちが厳しいレビューを続々と投稿。ロッテントマトの観客支持率が20%以下に急落した。さらに、主演カルラ・ソフィア・ガスコンの過去の反イスラム的なネット投稿が明るみに出て、印象が悪化。当初有力視されていたオスカー国際映画賞の争いでブラジルの「アイム・スティル・ヒア」に敗れた。

    助演女優賞と歌曲賞の2冠

    それでも助演女優ゾーイ・サルダーニャの演技は最後まで称賛一色で、助演女優賞を獲得。ユニークな楽曲への称賛もとだえず、歌曲賞にも輝いた。受賞曲「エル・マル」の作詞を自ら手掛けたジャック・オーディアール監督も、72歳で初のオスカー像をゲット。

    Netflixは「最多候補」でも作品賞逃す傾向

    北米の配給権はNetflixが取得。「ROMA/ローマ」「アイリッシュマン」「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「Mank/マンク」など、Netflix配給作品が最多ノミネートを獲得しながら作品賞は逃す例が多いが、本作も同じパターンになった。

    【エミリア・ペレス全結果】
    受賞部門 助演女優賞
     ゾーイ・サルダーニャ
    歌曲賞
     「エル・マル」
    他の候補部門 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     カルラ・ソフィア・ガスコン
    脚色賞
    国際映画賞
    歌曲賞
     「ミ・カミーノ」
    作曲賞
    撮影賞
    編集賞
    メイク&ヘア賞
    音響賞
     監督:ジャック・オーディアール
     主演:カルラ・ソフィア・ガスコン
     助演:ゾーイ・サルダーニャ、セレーナ・ゴメスほか
     脚本:ジャック・オーディアール
     公開日:2025年3月28日(日本)
     製作国:フランス
     言語:スペイン語
     配給:Netflix(北米)
     長さ:2時間10分
    【前哨戦での受賞】
    ・ゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル作品賞)
    【評点】
    ロッテン・トマト 75%(観客42%)
    最新→
    IMDB 6.8
    最新→
    メタクリティック 71点
    最新→
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <挿入歌「エル・マル」byゾーイ・サルダーニャ&カルラ・ソフィア・ガスコン▼>

    <挿入歌「ミ・カミーノ」byセレーナ・ゴメス▼>





  • 「ウィキッド ふたりの魔女」
    ウィキッド ふたりの魔女
    【配信:アマゾン

    「オズの魔法使い」の前日談

    アメリカの国民的童話「オズの魔法使い」の前日談。「良い魔女」と「悪い魔女」としてお馴染みとなる2人が少女時代に出会い、葛藤を乗り越えて友情を育む過程を描く。ニューヨーク・ブロードウェーの定番ミュージカルに、映画ならではの壮大なスケール感と豪華さを持ち込み、興行面・批評面ともに大成功を収めた。2部作の前半。

    ミュージカルファンも納得

    原作となるブロードウェー劇は2003年が初演。魅力的な歌の数々に加え、精緻(せいち)な台本や見せ場たっぷりの演出が称賛され、長年にわたり熱烈な支持を集めてきた。それだけに映画化のハードルは高いと思われていたが、「クレイジー・リッチ」「イン・ザ・ハイツ」のジョン・チュウ監督(45歳)が持ち前のセンスの良さで巧妙に映像化。舞台劇ファンからも「期待以上」との好反応が相次いだ。米国では劇場で思わず歌い出してしまう観客が続出。本年度ナンバー1のお祭りイベント的映画となった。

    配役が大成功

    なんといってもキャスティングが大当たり。緑の魔女役シンシア・エリーボの演技と歌唱は圧巻で、観客を高揚感や感動へと導く。そのルームメイト女子役に抜擢された歌手アリアナ・グランデも、トゲがあり高飛車なコミカル演技でキャラクターにどんぴしゃりハマった。

    映像技術に高評価

    背景映像、舞台装置、衣装などのテクニカルな面も超高評価。絢爛(けんらん)な世界観を構築し、美術賞と衣装デザイン賞の2冠に輝いた。

    実写映画として年間トップの興収

    北米興収は「デューン 砂の惑星2」を上回り、実写映画として年間トップ。オスカー前哨戦では、序盤の米映画評議会議賞(NBR)で作品賞を獲得し、「アノーラ対ブルータリスト」の2強争いに割って入るかに見えたときもあった。

    悪い意味で漫画的

    2部作のパート1という点で不利だった。クライマックスに大いに盛り上がるため消化不良感はないが、「続編も見ないと正当な評価が下せない」との声も。また、「冗長」との批判も出た。前半部分の「ミーン・ガールズ」的な学園イジメ劇などはやたらくどい。そもそも主人公の肌の色(緑)に対する周囲のリアクションがあまりに大げさで、みんなの態度が突如180度変わる点も含めて、悪い意味で漫画的。

    【ウィキッド全結果】
    受賞部門 衣装デザイン賞
    美術賞
    他の候補部門 作品賞
    主演女優賞
     シンシア・エリーボ
    助演女優賞
     アリアナ・グランデ
    メイク&ヘア賞
    視覚効果賞
    音響賞
    作曲賞
    編集賞
     監督:ジョン・M・チュウ
     主演:シンシア・エリーボ
     助演:アリアナ・グランデ、ミシェル・ヨー、ジョナサン・ベイリー、ジェフ・ゴールドブラムほか
     公開日:2025年3月7日(日本)
     配給:ユニバーサル
     長さ:2時間40分
    【前哨戦での受賞】
    ・米映画評議会議賞(NBR)
    ・ワシントン批評家賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 88%(観客95%)
    最新→
    IMDB 7.6
    最新→
    メタクリティック 73点
    最新→
    【製作費】
    1億4500万ドル
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <アリアナ・グランデ「ポピュラー」▼>
    ※善魔女(グランデ)が、人気者になるコツを悪魔女に教える歌

    <アリアナ・グランデ&シンシア・エリーボ「What Is This Feeling」フル▼>

    <サントラ(再生リスト)▼>

    <特別映像▼>

    <ウィキッドとは(解説)▼>

    <総まとめ(舞台版について)▼>

    <オズの魔法使いとは▼>

    <オズの魔法使いのあらすじ▼>

    <撮影風景▼>

    <オリジナル舞台版のサントラ▼>

    <劇団四季の公演プロモ▼>





  • 「デューン 砂の惑星 2」
    デューン 砂の惑星 2
    【配信:アマゾン

    SFの裾野を広げる

    前作「パート1」で2022年オスカーで最多6部門を受賞したSF大作の続編。技術面が評価された「1」よりも娯楽性と物語性が格段に高まり、より幅広い層に響いた。日本を除く世界中で大ヒット。SFに馴染みのない人たちからも大歓迎され、批評家レビューもSFとして異例の高さ。

    現代版「帝国の逆襲」

    原作の世界観の壮大さや複雑さゆえに、「パート1」はお膳立てに時間をとられ、ストーリーが大きく進展しなかった。そらに比べて本作はテンポ良く話が進み、アクションの見せ場も急増した。「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン監督は、パート2としての出来の良さに対する賛辞を込めて「現代における『スター・ウォーズ帝国の逆襲(初期3部作の2作目)』」と形容した。映像化の試みが何度も頓挫・失敗してきた伝説のSF小説を、巧みにまとめ挙げたビルヌーブ監督の手腕に称賛が集まった。

    映像世界

    鮮烈で緻密な映像美は圧巻。パート1では全体の約40%がIMAXカメラで撮影されたが、本作では全編で使用。IMAX劇場体験の到達点として称賛された。主役ティモシー・シャラメと、サイコ・キラーぶりが際立つオースティン・バトラーの決闘シーンなど見どころ満載。ただし、続編シリーズの途中であることと、そもそもSFだという点で、作品賞争いは不利だった。

    【デューン2全結果】
    受賞部門 視覚効果賞
    音響賞
    他の候補部門 作品賞
    撮影賞
    美術賞
     監督:ドゥニ・ビルヌーブ
     主演:ティモシー・シャラメ
     助演:オースティン・バトラー、ハビエル・バルデムほか
     公開日:2024年3月15日(日本)
     配給:ワーナー
     長さ:2時間46分
    【前哨戦での受賞】
    ・ラスベガス批評家賞
    ・セントルイス批評家賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 92%(観客95%)
    最新→
    IMDB 8.5
    最新→
    メタクリティック 79点
    最新→
    【興行収入】
    北米:2億8214万ドル
    世界:7億1184万ドル
    日本:4170万ドル(約6億円)
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <劇伴(ハンス・ジマー)▼>

    <悪役フェイドについて▼>





  • 「教皇選挙」
    教皇選挙
    【配信:アマゾン

    大人向け娯楽ミステリー

    スリリングな展開が楽しめる大人向けの知的ミステリー。アカデミーのベテラン会員の本流に響きやすい一作。

    政治工作の行方

    カトリックの教皇の死去に伴う後任選びの選挙(コンクラーベ)の舞台裏を描く。教皇に次ぐナンバー2だった主人公(レイフ・ファインズ)が選挙を取り仕切るなか、保守派、中道派、リベラル派が入り乱れて政治工作を展開。宗教家たちの本音と建前のギャップや、物静かで穏健な主人公が緊迫状態に置かれたときの行動などが見どころ。

    4冠「西部戦線異状なし」の次作

    監督は、2023年オスカーで4部門(国際映画賞、撮影賞、美術賞、作曲賞)の受賞に輝いた「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー(ドイツ人)。英・米合作。

    下馬評が高いが

    一般観客の間では、終盤の展開をめぐり「オチがあまりに突拍子もない」「Woke的カトリック攻撃」という批判も一部で出たが、おおむね高評価が優勢となった。とはいえ、分かりやすい感動をもたらすようなタイプの作品ではなく、作品賞レースを勝ち抜くにはややパンチ力不足。下馬評が高いわりには前哨戦での勝利は英国アカデミー賞くらいだった。

    中間に位置する良作

    製作費30億円にして興行収入150億円(うち北米50億円)を稼いだ優等生。ブロックバスター(ウィキッド、デューン2)と小規模作(アノーラ、ブルータリスト)の中間に位置する良作として、古典的なオスカーファンたちからも期待を集めた。原作は2016年刊行のベストセラー小説。

    【教皇選挙の全結果】
    受賞部門 脚色賞
    他の候補部門 作品賞
    主演男優賞
     レイフ・ファインズ
    助演女優賞
     イザベラ・ロッセリーニ
    作曲賞
    編集賞
    美術賞
    衣装デザイン賞
     監督:エドワード・ベルガー(「西部戦線異状なし」など)
     主演:レイフ・ファインズ
     助演:スタンリー・トゥッチ、イザベラ・ロッセリーニほか
     脚本:ピーター・ストローハン
     公開日:2025年3月20日(日本)
     製作国:英米
     配給:フォーカス
     長さ:2時間
    【前哨戦での受賞】
    ・英国アカデミー賞
    ・SAGアワード(俳優組合賞)キャスト賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 93%(観客86%)
    最新→
    IMDB 7.4
    最新→
    メタクリティック 79点
    最新→
    【製作費】
    2000万ドル
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <劇伴(再生リスト)▼>





  • 「サブスタンス」
    サブスタンス
    【配信:アマゾン

    ジャンル映画ファン熱狂

    グロテスクだが上質感もあるホラー。「見た目至上主義(ルッキズム)」の成れの果てを描くブラックコメディでもある。全米のジャンル映画ファンが熱狂し、年間ベストに挙げる人が相次いだ。

    攻撃的な意欲作

    人気に陰りが見えてきた中年女性タレントが、危ない「若返り薬」に手を出し、狂気へ発展する。フランスの女性監督コラリー・ファルジャの2作目。デミ・ムーアらハリウッドスターを起用しながらも、インディー作家として新境地に挑もうとする監督の攻撃的な姿勢がみなぎる。

    おぞましいけどハイセンス

    カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことが示すように、衝撃性だけに依存しないユニークな物語性が特徴。映像面も、非常におぞましい場面の連続ながら、美術、メイク、視覚効果などの点で優れた美的センスを感じさせると好評。

    ホラーへの偏見を乗り越える

    米国の賞レースでは、シアトルやカンザスシティなどのローカル批評家賞で作品賞をサプライズ受賞。ホラー映画という決定的に不利な条件をはねのけてオスカー作品賞ノミネート入りを果たした。

    デミ・ムーア敗れる

    主演デミ・ムーアの怪演が絶賛され、SAGアワード(俳優組合賞)やクリティック・チョイス賞で主演女優賞を獲得。最有力候補へと躍り出たが、オスカーではマイキー・マディソン(アノーラ)に惜しく敗れた。

    【サブスタンス全結果】
    受賞部門 メイク&ヘア賞
    他の候補部門 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     デミ・ムーア
    脚本賞
     監督・脚本:コラリー・ファルジャ(仏)
     主演:デミ・ムーア
     助演:マーガレット・クアリーほか
     公開日:2025年5月16日(日本)
     製作国:仏、英、米
     配給:英Mubi(ムービ)
     長さ:2時間21分
    【前哨戦での受賞】
    ・カンヌ国際映画祭 脚本賞
    ・シアトル批評家賞
    ・カンザスシティ批評家賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 90%(観客75%)
    最新→
    IMDB 7.4
    最新→
    メタクリティック 78点
    最新→
    動画集を開く▼ <メイキング▼>

    <予告編▼>

    <サントラ▼>





  • 「ニッケル・ボーイズ」
    ニッケル・ボーイズ
    【配信:アマゾン
    差別と虐待に苦しむ黒人青年の試練を、詩的な映像と独特のカメラワークで描いたアート系作品。1960年代の米南部フロリダ州に実在した少年院が舞台。批評家の評価は極めて高いが、一般観客の支持率はそれほどではない。
    無実の罪で施設に収容された青年と、そこで出会う青年の友情がドラマの軸。原作は、ピューリッツァー賞を受賞したフィクション小説。
    共同脚本と監督を務めたラメル・ロス氏は2018年のデビュー作「Hale County This Morning, This Evening」でいきなり長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた注目株。本作が初の実写作。1982年生まれ。
    多くのシーンが、主人公の一人称視点(主観カメラ)で撮られているのが特徴。人種差別の一端を体験しているかのような恐怖感や没入感が味わえる。ただ、会話相手のカメラ目線が気になって落ち着かない、集中できないという人もいる。
    【ノミネート部門】
    ノミネート部門 作品賞
    脚色賞
     監督:ラメル・ロス
     主演:イーサン・エリセ
     助演:アーンジャニュー・エリス・テイラーほか
     公開日:2024年2月27日(日本/Amazonプライム独占配信)
     製作国:アメリカ
     配給:アマゾンMGM
     長さ:2時間
    【前哨戦での受賞】
    ・ニューヨーク映画批評家賞 監督賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 91%(観客75%)
    最新→
    IMDB 7.1
    最新→
    メタクリティック 91点
    最新→
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <監督インタビュー▼>





  • 「アイム・スティル・ヒア」
    アイム・スティル・ヒア
    ブラジル映画として初の作品賞ノミネート。1964年からブラジルを支配した軍事独裁政権によって幸せな日々を奪われた家族の実話。夫を軍部に連れ去られた妻が、夫を探しつつも一家の大黒柱となり、残された5人の子供たちを懸命に支える。
    主人公の息子が書いた伝記(2015年刊)を、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督(ブラジル人)が映画化。
    主役のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞にノミネートされた。
    【アイム・スティル・ヒア全結果】
    受賞部門 国際映画賞
    他の候補部門 作品賞
    主演女優賞
     フェルナンダ・トーレス
     公開日:2025年8月(日本)
     製作国:ブラジル、フランス合作
     配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス(北米)
     長さ:2時間15分
    【前哨戦での受賞】
    ・ベネチア国際映画祭 脚本賞
    【評点】
    ロッテン・トマト 97%(観客97%)
    最新→
    IMDB 8.7
    最新→
    メタクリティック 85点
    最新→
    動画集を開く▼ <予告編▼>

    <フェルナンダ・トーレスのゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)受賞スピーチ▼>

 ※2025年の全部門はこちら→

作品賞
受賞 ノミネート
2024 「オッペンハイマー」

オッペンハイマー
【配信:アマゾン
米政府の原爆開発チームを率いた科学者の伝記。 大量殺りく兵器を生んだ男のジレンマと波乱の生涯を描く。 クリストファー・ノーラン監督。

独走

オスカー前哨戦では、序盤こそ批評家系の賞で「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」相手に一進一退となる局面もあったが、中盤から早くも圧倒的な独走状態に入った。 本年度のオスカーは全般的にレベルが高く、豊作の年ではあったが、その中でも段違いの強さを見せた。

前年の覇者「エブエブ」と同じ7冠

主要部門では作品賞のほか、監督、主演男優、助演男優を制圧。 技術部門でも3部門(撮影、編集、作曲)を獲り、 前年の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」と同じ7冠に輝いた。
【全部門】
受賞 作品賞
監督賞
主演男優賞
 キリアン・マーフィー
助演男優賞
 ロバート・ダウニー・Jr
撮影賞
編集賞
作曲賞
ノミネート 助演女優賞
 エミリー・ブラント
脚色賞
音響賞
美術賞
衣装デザイン賞
メイク&ヘア賞

ノーラン初受賞

「バットマン3部作」「インセプション」「ダンケルク」などで作家性と商業性を両立させてきた名匠ノーラン監督(53歳)は、過去5回オスカーにノミネートされた。本作では監督・脚本・共同プロデューサーを務め、初のオスカー獲得(作品賞と監督賞)となった。
ノーランのオスカー歴▼
作品 部門
2002 「メメント」 脚本賞ノミネート
2011 「インセプション」 作品賞ノミネート

脚本賞ノミネート
2018 「ダンケルク」 作品賞ノミネート

監督賞ノミネート
2024 「オッペンハイマー」 作品賞受賞

監督賞受賞

脚色賞ノミネート賞

激動の人生を解明

主人公の物理学者オッペンハイマーは、米政府の巨大国家プロジェクト「マンハッタン計画」のリーダーとして原爆開発を成功へと導いた後、より破壊力のある水爆開発の反対へと転換。 政府から公職追放された。その激動の人生を、複数の時間軸を交錯させながら解き明かした。 「天才科学者」「反ナチス・反全体主義者」「国家の英雄」「反逆者」「すけこまし」といった様々な顏を持つ人物像に迫るキャラクター・スタディの傑作として、極めて高い評価を得た。

濃密な会話劇

3時間の長尺で、大半が会話シーン。 しかも内容は科学や政治の難しい話題が中心。 時間軸が何度も前後する複雑な構成。 なおかつ「R」指定ーー。 商業的には不利な条件がそろった知的大人向けドラマだが、幅広い層から支持を集めた。 IMDBの評点は8.4で、作品賞候補の中で断トツのトップ。

映画としての総合力

IMAX70mmフィルムで撮影され、一つ一つのシーンが臨場感や緊迫感に満ちている。 サウンドや劇伴によるムードづくりや、スリリングで飽きさせない編集も巧妙。 短い会話に濃密な情報やドラマ性が詰め込まれた脚本も秀逸で、 見返すたびに新しい発見が得られる。 「映画技術の総合力」が圧倒的に抜きん出ているいるという点で、衆目がほぼ一致した。

演技アンサンブル

俳優陣の演技も絶賛された。オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーは長年にわたりノーラン映画の名脇役として活躍してきたが、本作ではド主役に。 抑制された演技で複雑な心理を表現し、物語に見事に溶け込んだ。政府高官役のロバート・ダウニーJrも、キャリアベスト級の好演。 その他数十人にのぼる実力派俳優たちの掛け合いの連続も圧巻。
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バービーとの興行対決で注目

米国では夏休みシーズンに娯楽大作「バービー」と同じ日に全米公開された。 超話題作2本が正面から激突するとあって、 興行の行方に注目が集まった。

「バービー」は若年層の女性が好む華やかな作品。 一方、「オッペンハイマー」はシリアスでダーク、中高年以上の男性が主な客層という対極。 公開最初の週末にどちらを鑑賞するべきか、あるいは、1日で2本鑑賞する場合はどういうスケジュールを組むべきか――。 米国民にとっての「究極の選択」がお茶の間で話題となり、 そこから『バーベンハイマー』という造語が生まれ、流行した。

結果として、映画館に人がどっと押し寄せる社会現象が起き、両作品とも驚愕の興行成績をたたき出した。オッペンハイマーの北米興収は3.3億ドルで、前年のオスカー作品賞「エブリシング・エブリウェア」の4倍以上。世界興収は約1500億円。骨太な大人向けドラマが依然として商業的に成功し得ることを示した意義は大きい。

オッペンハイマーの生涯

オッペンハイマー博士(1904~1967年)は、裕福なドイツ移民(ユダヤ系)の息子としてニューヨークに生まれ、物理学者として高名を確立。 1942年に始まった政府のマンハッタン計画(原爆製造計画)に招かれた。

マンハッタン計画は未曽有の規模の国家プロジェクトであり、ナチスドイツよりも先に原爆を開発することを主たる目的としていた。 最大55万人が動員され、ウラン濃縮が工場がテネシー州に、プルトニウムを生産する原子炉がワシントン州に建設された。

砂漠に研究所

若干38歳でマンハッタン計画のリーダーに選ばれたオッペンハイマーは、 自らが少年期を過ごしたニューメキシコ州ロスアラモスの砂漠地帯を、 研究・開発拠点の立地場所として提案する。 広大な荒野に「国立ロスアラモス研究所」が建設され、全米の一級の科学者が結集。 オッペンハイマーが初代所長に就任した。

核実験を成功に導く

1945年7月16日、オッペンハイマーのチームは史上初の核実験(通称:トリニティ実験)に成功。 すでにドイツは降伏していたが、日本との長い戦争が続いていたアメリカは沸き立った。 10日後の7月26日、米国などの連合国は日本に対して降伏を勧告(ポツダム宣言)するが、日本側はこれを拒否(無視)。 翌月、米トルーマン大統領はウラン原爆「リトルボーイ」を広島に、プルトニウム原爆「ファットマン」を長崎に投下した。 広島で約14万人、長崎で約7万4千人が1945年末までに死亡。その後も放射線による被害に苦しめられ続けた。

罪の意識にさいなまれる

オッペンハイマーは原爆投下に疑問を抱き、 罪の意識にさいなまれるようになる。 長崎への投下の翌日、すっかりふさぎこんでいたという同僚らの証言が残っている。

投下から2カ月後にロスアラモス研究所長を辞任。 その際の挨拶で「原爆が、争う世界の兵器庫や、戦争に備える国々に新たに追加されるなら、人類がロスアラモスと広島の名を呪うときが来るだろう」と語った。 また、翌月トルーマン大統領と会った際には「私の手は血塗られている」と発言し、大統領の怒りをかった。

水爆反対へ

その後、オッペンハイマーは「核の情報公開と国際管理」に向けた活動を始める。いずれソ連(現ロシア)が原爆を開発するのは目に見えていた。 その前に核管理の枠をつくり、果てしない軍拡に歯止めをかけて人類破滅への道を回避することを目指した。

原爆の数百倍以上の威力を持つとされた水爆の開発にも反対した。 原子力委員会の一般諮問委員会の長として、水爆は「防御する手段のない武器」であると、危険性を熱心に訴えたのだった。

公職追放

こうした姿勢が、政府からの迫害を招くことになる。 保守派の共和党が政権に復帰し、 マッカーシズム(冷戦下のアカ狩り)が吹き荒れた1953年、スパイの嫌疑をかけられる。

オッペンハイマーはマンハッタン計画参加前に左翼系知識人たちと交流があり、思想的にもリベラルだったが、共産党員ではなかった。 それでも、米連邦捜査局(FBI)の尾行・盗聴などによって不利な材料がかき集められ、1954年、公職追放の処分を受ける。

名誉回復と死

1963年にジョンソン大統領(民主党)がエンリコ・フェルミ賞を授与して、名誉がある程度回復された。

1965年に喉頭がんと診断(喫煙家だった)。1967年に62歳で死去した。

2022年12月、米エネルギー省のグランホルム長官は、オッペンハイマー氏に対する公職追放は「偏見に基づく不公正な手続きだった」として処分を取り消した。

歴史家などの間では、オッペンハイマーは、 卓越した知力と遂行能力を備えていた人物と評されている。

原作はピュリツァー賞

映画の原作は2007年に出版された伝記「オッペンハイマー『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」。 著者は、歴史家マーティン・シャーウィンと伝記執筆家カイ・バード。 多数のインタビューに基づいており、オッペンハイマーに関する最も優れた伝記と言われている。 ピュリツァー賞も受賞した。

本の原題は「American Prometheus(アメリカのプロメテウス)」。前半は、才能豊かな理論物理学者として活躍し、人類初の原爆実験が成功するまでが描かれる。 後半では、国家の核政策決定の中枢に位置する人物となった時代が綴られる。

映画の撮影前にシャーウィンは亡くなったが、もう一人の著者であるバードは撮影現場を訪れ、ノーラン監督に知恵を授けたという。

5つの時間軸

本作は、主に以下の5つの時間軸で展開される。
(1)学生~学者時代(1920、30年代)
(2)マンハッタン計画参加(1942年~45年)
(3)戦後の数年間。米原子力委員会(AEC)顧問と、アインシュタインらが所属する「プリンストン高等研究所」所長を兼務した時代。原子力委員会メンバーのルイス・ストロース氏(元軍職員)との出会いから関係悪化までを描写する=主に白黒映像
(4)公職追放処分について協議する政府の聴聞会(1954年)
(5)オッペンハイマー追放に関与したストロースの入閣をめぐる連邦議会の審議(1959年)=白黒映像

 監督:クリストファー・ノーラン
 主演:キリアン・マーフィー(ダークナイト3部作、28日後)
 助演:ロバート・ダウニーJr、エミリー・ブラント、マット・デイモン、フローレンス・ピューほか

 公開日:2024年3月29日(日本)
 製作国:アメリカ
 配給:ユニバーサル
 長さ:3時間


【前哨戦での受賞】
・PGA(全米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・SAG(俳優組合)アンサンブル賞
・批評家チョイス賞
・英国アカデミー賞
・ゴールデングローブ賞ドラマ部門
その他▼ ・アトランタ批評家賞
・セントルイス批評家賞
・ラスベガス批評家賞

【評点】
ロッテン・トマト 93%
最新→
IMDB 8.4
最新→
メタクリティック 89%
最新→

【興行収入】
北米:3.3億ドル
世界:9.6億ドル
【製作費】
1億ドル

<受賞スピーチ▼>

動画集を開く▼ <予告編▼>

<登場人物の解説(カラクリシネマ)▼>

<予習解説(ツッチ)▼>

<特別映像▼>

<劇伴▼>

<ゴールデングローブ賞の受賞スピーチ(by プロデューサーでノーランの妻のエマ・トーマス)▼>

<クリティクス・チョイス賞の受賞スピーチ▼>
  • 「ホールドオーバーズ」
    ホールドオーバーズ
    【配信:アマゾン
    クリスマスなのに帰省しないワケあり人たちが起こす喜劇ドラマ
    【全部門】
    受賞 助演女優賞
     デバイン・ジョイ・ランドルフ
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
     ポール・ジアマッティ
    脚本賞
    編集賞

    作品説明へ



  • 「バービー」
    バービー
    着せ替え人形「バービー」の皮肉なコメディ。興行収入収入は年間トップ。
    【全部門】
    受賞 歌曲賞
     ビリー・アイリッシュ
    「What Was I Made For?」
    ノミネート 作品賞
    助演男優賞
     ライアン・ゴスリング
    助演女優賞
     アメリカ・フェレーラ
    脚色賞
    衣装デザイン賞
    美術賞
    歌曲賞
     「アイム・ジャスト・ケン」

    作品説明へ
    【配信:アマゾン→



  • 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
    キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
    米先住民虐殺の内幕を描く史実ドラマ。巨匠スコセッシ監督がアメリカの暗部をえぐり出す。
    【全部門】
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     リリー・グラッドストーン
    助演男優賞
     ロバート・デ・ニーロ
    撮影賞
    編集賞
    衣装デザイン賞
    美術賞
    作曲賞
    歌曲賞

    作品説明へ



  • 「哀れなるものたち」
    哀れなるものたち
    脳死状態から蘇った女性が、「体は大人、脳は赤ちゃん」の状態で臨む社会体験記。
    【全部門】
    受賞 主演女優賞
     エマ・ストーン
    美術賞
    メイク&ヘア賞
    衣装デザイン賞
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    助演男優賞
     マーク・ラファロ
    脚色賞
    撮影賞
    編集賞
    作曲賞

    作品説明へ



  • 「落下の解剖学」
    落下の解剖学
    夫殺しの罪に問われた女性の法廷サスペンス。仏映画。
    【全部門】
    受賞 脚本賞
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     ザンドラ・フーラ
    編集賞

    作品説明へ



  • 「アメリカン・フィクション」
    アメリカン・フィクション
    安直な人種平等主義や文化の「売れ線主義」を風刺する良質コメディ
    【全部門】
    受賞 脚色賞
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
     ジェフリー・ライト
    助演男優賞
     スターリング・K・ブラウン
    作曲賞

    作品説明へ



  • 「パスト・ライブス/再会」
    パスト・ライブス/再会
    幼なじみの男女が異国の地で再会する運命系ドラマ。
    【全部門】
    ノミネート 作品賞
    脚本賞

    作品説明へ



  • 「関心領域」
     国:イギリス(ドイツ語)
    関心領域
    ナチスの強制収容所のすぐ近くに住む収容所長の日常を描く野心作。
    【全部門】
    受賞 国際映画賞
    音響賞
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    脚色賞

    作品説明へ



  • 「マエストロ:その音楽と愛と」
    マエストロ:その音楽と愛と
    世界屈指の指揮者レナード・バーンスタインと妻の伝記。
    【全部門】
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
     ブラッドリー・クーパー
    主演女優賞
     キャリー・マリガン
    脚本賞
    メイク&ヘア賞(辻一弘)
    撮影賞
    音響賞

    作品説明へ
    【配信:ネトフリ→

2023 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(略称:エブエブ)」

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

(日本公開:2023年3月3日)

監督:ダニエルズ

史上初の主要6冠

作品賞に加えて、監督、主演女優、助演男優、助演女優、脚本、編集賞の計7冠。 このうち編集賞を除く6部門が主要部門だった。 「羊たちの沈黙」「愛と追憶の日々」「クレイマー・クレイマー」「カッコーの巣の上で」「或る夜の出来事」「地上(ここ)より永遠(とわ)に」などの最多記録(主要5冠)を抜き、史上初の主要部門6冠に輝いた。

ダントツの独創性と斬新さに熱烈な支持が集まった。インデペンデント映画ならではの発想力の勝利だった。

中華系移民のSF家族劇

米国の中華系移民の家族が突然、人類を救う戦いに巻き込まれるSF活劇。母娘愛・夫婦愛を軸とする感動系の家族物語でもある。ミシェル・ヨー主演。

若手オタクとA24

新進気鋭の2人組監督ダニエルズの大出世作となった。ハリウッドで最も勢いのある新興映画会社「A24」にとって過去最大の興行収入を記録。米国の映画ファンの間で話題沸騰となった。

若手オタクとA24

オスカー前哨戦では、評論家系の賞で勝ち続けた後、映画業界の組合別の賞で圧勝した(PGA、DGA、SAG、WGAを完全制覇)。

アジア系が大活躍

主要キャストの大半はアジア系。さらに監督の1人は台湾系。メインのプロデューサーも台湾系。衣装デザイナーは日系人。アジア系の人材が大活躍した。

奇抜な異色作のわりにアンチが少ないのも特徴。米国を支えてきた移民たちへの賛歌というメッセージ性もある。

歴代トップ級の奇想天外ぶり

メジャー作品にはない手作り感とB級風味も持ち味となった。 オスカー作品賞史上、奇想天外ぶりにおいてトップレベルと受け止められている。少なくとも「お馬鹿映画ぶり」が歴代マックスであることは間違いない。

8年ぶり7冠

オスカー7冠達成は、2014年の「ゼロ・グラビティ」以来9年ぶり。 作品賞を含めた7冠以上となると、2009年に8冠に輝いた「スラムドッグ・ミリオネア」以来だった。一つの作品による独占が難しくなっていた近年のアカデミー賞において、久しぶりの完勝となった。

俳優部門3冠は史上3作目

また、俳優部門での3冠は46年ぶり。1977年「ネットワーク」、1953年「欲望という名の電車」に次いで史上3作目の快挙だった。

「タイタニック」との勝ちぶりの違い

アカデミー賞の最多受賞の記録は、「ベン・ハー」「タイタニック」「ロード・オブ・ザ・リング3/王の帰還」の13部門だが、これらの作品は技術部門で大量に稼いだ結果である。例えばタイタニックとロード・オブ・ザ・リング3は俳優部門は一つも獲っていない。

一方、エブエブは技術部門の受賞は編集賞だけで、残りは「above the line」と呼ばれる主要8部門での勝利。主演男優と脚色はそもそも選考対象ではなかったことを考えると、主要部門は全て制覇したといえる。
続きを開く▼

1年前の劇場公開は「羊たちの沈黙」以来

本作が米国で劇場公開されたのは2022年3月だった。 オスカー授賞式の1年も前だ。 通常、公開から時間が経つとオスカーでは不利だが、本作に限っては勢いが衰えなかった。むしろ「見返すほど面白さが増す」との声が多く聞かれた。 公開時期の早さは、1991年2月に全米公開されて翌年の作品賞を獲った「羊たちの沈黙」以来の記録。

サークル的なノリに共感

賞レースでは、本作で20余年ぶりの奇跡的なカムバックを果たした元子役キー・ホイ・クァンが、感動的なスピーチで往年の映画ファンを泣かせた。 ミシェル・ヨーやジェイミー・リー・カーティスらお馴染みのスターたちも作品の魅力を訴え、ムードを盛り上げた。

各授賞式やイベントでは、キャストやスタッフが若いオタク系監督を囲み、和気あいあいと祝福しあうサークル活動的なノリが共感を呼んだ。その輪の中には、祖父役を演じた94歳の超ベテラン中国系俳優ジェームズ・ホンの姿もあった。 包摂的(インクルーシブ)で楽しそうな光景が、映画自体のメッセージとも重なり合った。

逆風が吹かず

賞レース終盤で「断トツの最有力候補」としてのポジションを固めたが、よくありがちなバッシングは起きなかった。 前哨戦で連勝しながら最終局面でアンチが増え、作品賞を逃した前年の「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(Netflix)とは対照的だった。 ポジティブな人生賛歌という作風が、有利に働いたかも知れない。

「A24」の圧勝

インデペンデント系映画会社「A24」にとって、2017年の「ムーンライト」に続いて2度目の作品賞となった。 同じく本年度にA24が配給した「ザ・ホエール」は主演男優賞とメイク&ヘア賞を獲得した。 大手スタジオやNetflixを突き放し、会社別の受賞数で圧倒的なトップだった。

A24は2012年創業。 映画投資会社出身のダニエル・カッツら3人が設立した。本社ニューヨーク。 「エブエブ」は設立10周年の作品であり、出資と配給を担当した。

A24はアート性と娯楽性を兼ね備えた作品づくりに定評がある。 「ムーンライト」以外の過去の作品賞ノミネートは、2016年の「ルーム」、2021年の「ミナリ」。


■エブエブ受賞結果
受賞 作品賞
監督賞
主演女優賞
 ミシェル・ヨー
助演男優賞
 キー・ホイ・クァン
助演女優賞
 ジェイミー・リー・カーティス
脚本賞
編集賞
ノミネート 助演女優賞
 ステファニー・シュー
歌曲賞
作曲賞
衣装デザイン賞

配給:A24

プロデューサー:ジョナサン・ウォン、ルッソ兄弟、ダニエルズほか

■評点:ロッテン95%、IMDb8.0

■米興収:7200万ドル

■製作費:1600万ドル

【前哨戦での受賞】
・PGA(米プロデューサー組合賞)
・DGA(米監督組合賞)
・SAG(俳優組合)アンサンブル賞
・クリティック・チョイス賞
その他▼ ・ロサンゼルス批評家賞
・ワシントン批評家賞
・フロリダ批評家賞
・アトランタ批評家賞
・ヒューストン批評家賞
・ハリウッド批評家賞
・ゴッサム賞
・独立系精神賞
・WGA(米脚本家組合賞)


<受賞スピーチ▼>


動画集を開く▼ <主題歌「This Is A Life」▼>


<茶一郎の解説▼>


<予告編▼>

  • 「トップガン マーヴェリック」
    トップガン マーヴェリック
    監督:ジョセフ・コジンスキー
    ※驚愕の完成度の高さを誇る骨太アクション系ドラマ。1986年の青春映画「トップガン」の続編。
    商業的にも評論的にも世界で最高の成功を収めた。幅広い世代を劇場に戻した功績は大きい。
    続きを開く▼

    中年男の成熟と苦悩

    実に36年ぶりの続編となった今作では、若者向けの青春ドラマだった1作目からストーリー性を大きく発展させた。
    中年になったトム・クルーズ演じる主人公の人間的な成熟ぶりや苦悩、若い世代との緊張関係や絆を丁寧に描く。アート系を好む玄人筋からも大絶賛を浴びた。脚色賞でのノミネート獲得は、一級ドラマとしても認知された証拠。

    劇場復活の立役者

    コロナ禍で米国の映画館は壊滅的な打撃を受けた。2021年暮れから「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」で若者が劇場に殺到したが、中高年層は依然として足取りが重かった。
    多くの大作がコロナ終結に待ちきれずに「ネット配信直行」へと舵を切るなか、本作は映画館での上映にこだわり続け、何度も公開延期を重ねた。

    興行収入は歴代5位

    いざ公開されると、予想をはるかに上回る大ヒットとなり、米国内の興行収入はぶっち切りの年間1位。歴代でも5位となった。
    迫力満点の戦闘機の空中戦シーンは、IMAX(アイマックス)などの特殊スクリーンへの呼び水となった。
    ノミネート数:6個
    受賞数:1個
    受賞結果の一覧▼
    <受賞結果>
    受賞 音響賞
    ノミネート 作品賞
    脚色賞
    歌曲賞
     レディー・ガガ
    視覚効果賞
    編集賞
    配給:パラマウント
    プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズほか
    ■評点:ロッテン96%、IMDb8.3
    ■米興収:7億1800万ドル
    ■製作費:1億7000万ドル
    【前哨戦での受賞】
    ・米国映画評議会議(NBR)作品賞
    【配信:アマゾン
    動画集を開く▼ <挿入歌「Hold My Hand」▼>


    <テーマ曲▼>


    <トム・クルーズのPGA名誉賞スピーチ▼>


    <予告編▼>


    <初代トップガンの挿入歌▼>



  • 「西部戦線異状なし」
    西部戦線異状なし
    国:ドイツ
    監督:エドワード・ベルガー
    ※ドイツ語の戦争映画。Netflixの本年度イチオシ。1931年にアカデミー作品賞を受賞した同名のハリウッド映画を、原作小説の母国であるドイツの映画人たちがリメイク。
    続き▼ 第一次世界対戦の残忍さを世界に伝えた反戦ストーリーが、現代の最高レベルの映画技術で蘇った。
    ドイツ軍の志願兵として戦線に乗り込んだ主人公が、塹壕での毒ガス、機関銃、戦車など思いもかけなかった凄惨な経験を重ねる。
    ロシアの対ウクライナ侵略戦争による悲劇が日々伝えられるなか、極めて生々しく、心に突き刺さる上質な一本として支持を集めた。 英国アカデミー賞では、母国の有力作「イニシェリン島の精霊」を差しおいて作品賞など最多7冠に輝いた。
    ノミネート数:9個
    受賞数:4個
    受賞部門の一覧▼
    <受賞結果>
    受賞 国際映画賞
    撮影賞
    美術賞
    作曲賞
    ノミネート 作品賞
    脚色賞
    視覚効果賞
    音響賞
    メイク&ヘア賞
    配給:ネットフリックス
    ■評点:ロッテン90%、IMDb7.8
    ■製作費:2000万ドル
    【前哨戦での受賞】
    ・英国アカデミー賞 作品賞など7冠
    【配信:ネトフリ


  • 「イニシェリン島の精霊」
    イニシェリン島の精霊
    (日本公開:2023年1月27日)
    監督:マーティン・マクドナー
    ※田舎の島を舞台にした人間関係劇。男2人の友情の変化を描く。
    続き▼ 見る側に思索と強い余韻をもたらす大人のドラマとして称賛された。
    オスカー作品賞的な基準からするとやや陰鬱で、分かりやすいインパクトに欠けたか。ロッテントマト集計の批評家支持率は96%でトップガンと肩を並べたが、一般観客の支持率はそれほど高くなかった。
    オスカーに強い配給会社サーチライトの本年度イチオシ。
    「スリー・ビルボード」(2017年)で作品賞の最有力候補の一角を占めながら「シェイプ・オブ・ウォーター」に敗れたマーティン・マクドナー監督の5年ぶり新作。
    ノミネート数:9個
    受賞数:0個
    候補部門の一覧▼
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    主演男優賞
     コリン・ファレル
    助演男優賞
     ブレンダン・グリーソン
    助演男優賞
     バリー・キオガン
    助演女優賞
     ケリー・コンドン
    脚本賞
    作曲賞
    編集賞
    配給:サーチライト
    ■評点:ロッテン96%、IMDb7.8
    ■米興収:1000万ドル
    ■製作費:2000万ドル
    【前哨戦での受賞】▼ ・ゴールデングローブ賞(コメディ部門)
    ・シカゴ批評家賞
    ・フェニックス批評家賞


  • 「フェイブルマンズ」
    フェイブルマンズ
    (日本公開:2023年3月3日)
    監督:スティーブン・スピルバーグ
    ※巨匠・スピルバーグ監督の自伝的ドラマ。 映画愛に目覚めた少年が、8ミリカメラを手に異才を発揮。映像の魔力や危うさに気づく。
    続き▼ 両親との絆や複雑な家庭内事情が赤裸々に描かれる。成功物語や温かい美談に仕立てるのでなく、過去と向き合いながら映画の本質に迫る視点が称賛された。
    前哨戦の第一弾となるトロント国際映画祭で勝利したが、その後勢いが弱まった。興行成績は期待外れ。 ただ、オスカーで票を握る映画人からは幅広く共感を得やすいと予想された。
    ノミネート数:7個
    受賞数:0個
    候補部門の一覧▼
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    主演女優賞
     ミシェル・ウィリアムズ
    助演男優賞
     ジャド・ハーシュ
    脚本賞
    作曲賞
    美術賞
    配給:ユニバーサル
    プロデューサー:スピルバーグほか
    ■評点:ロッテン92%、IMDb7.7
    ■米興収:1700万ドル
    ■製作費:4000万ドル
    【前哨戦での受賞】
    ・ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)
    ・トロント国際映画祭 観客賞


  • 「エルヴィス」
    エルヴィス
    監督:バズ・ラーマン
    ※米国史上最強のロック歌手エルビス・プレスリーの伝説の裏側を映画化。監督は「ムーラン・ルージュ」のバズ・ラーマン。 可憐でゴージャスな演出とダイナミックな語り口が高評価を得た。
    続き▼ エルビスを食い物にしたと言われるマネージャー(トム・ハンクス)が、過去を振り返る形で綴る壮絶なドラマ。主演オースティン・バトラーがエルビスを見事に熱演・熱唱し、大ブレイクした。
    日本ではあまり売れなかったが、米国ではロングランの大ヒットを記録。
    ノミネート数:8個
    受賞数:0個
    候補部門の一覧▼
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
     オースティン・バトラー
    編集賞
    撮影賞
    美術賞
    音響賞
    衣装デザイン賞
    メイク&ヘア賞
    配給:ワーナー
    ■評点:ロッテン77%、IMDb7.4
    ■米興収:1億5100万ドル
    ■製作費:8500万ドル
    【配信:アマゾン


  • 「TAR(ター)」
    TAR(ター)
    (日本公開:2023年5月12日)
    監督:トッド・フィールド
    ノミネート数:6個
    受賞数:0個
    候補部門▼ ・作品賞
    ・監督賞
    ・脚本賞
    ・主演女優賞
    ・撮影賞
    ・編集賞
    ※作家性では本年度トップ級との評価を得た。サイコスリラー的な要素を兼ねた心理サスペンス。ケイト・ブランシェットが演じる世界トップ級のオーケストラ指揮者(架空の人物)の横暴ぶりと、その顛末を描く。
    続き▼ 秀作「リトル・チルドレン」(2006年)のトッド・フィールド監督の16年ぶりの新作。緻密な構成の下、予測し難い物語進行や奥行きのある人物設定により、観客を次々と驚きや発見へと導く。強烈な印象を残すシーンの連続で、完成度の高さはピカイチ。
    主人公の深層心理や行動原理を分析する「人物研究(キャラクター・スタディ)」として高評価を得た。また、クラシック音楽の難解で特異な世界を詳細に描写。パワハラ問題やキャンセル・カルチャーなどの現代的なテーマも巧みにとらえた。
    何といっても、ケイト・ブランシェットの演技が壮絶。孤高で残酷で才能に満ち溢れた人物を、異次元レベルの表現力で造形した。
    賞レースでは、ベネチア国際映画祭から参戦。好評だったが、最高賞(金獅子賞)や審査員賞などを逃し、脚本賞も「イニシェリン島の精霊」にもっていかれた。女優賞(ケイト・ブランシェット)は獲った。
    その後、権威の高い「ニューヨーク批評家賞」で作品賞に輝いた。「ロサンゼルス批評家賞」では、「エブリシング・エブリウェア」と同点で作品賞を獲った。 前年の日本映画「ドライブ・マイ・カー」のように、芸術性が重視される主要要で好成績を収めた。
    オスカーではエブエブ旋風に押され、無冠に終わった。
    配給:フォーカス
    ■評点:ロッテン91%、IMDb7.5
    ■米興収:677万ドル
    ■製作費:1500万ドル
    【前哨戦での受賞】▼ ・全米映画批評家協会賞(NSFC)作品賞
    ・ニューヨーク批評家賞 作品賞
    ・ロサンゼルス批評家賞 作品賞(エブエブと同点)
    動画集を開く▼ <予告編▼>


    <町山智浩の解説▼>



  • 「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
    アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
    監督:ジェームズ・キャメロン
    ※圧倒的な映像美が魅力の超々大作。映画史上最も売れた前作「アバター」(2009年)の世界観と特撮技術を発展させ、水の中の神秘的な立体映像を表現するなど、再び劇場体験の新境地を拓いた。
    続き▼ ハリウッド映画を次々と上映禁止にしていた中国でも劇場公開にこぎつけたことで、世界興行収入ではトップガン マーヴェリックを抜いて本年度1位になった。
    初代アバターは2010年のオスカーで作品賞、監督賞を含む9部門にノミネート。このうち視覚効果、撮影、美術の3部門を受賞した。今作「2」は作品賞のほか、視覚効果、音響、美術でノミネートされたが、監督賞での候補入りを逃した。
    ノミネート数:4個
    受賞数:1個
    受賞部門の一覧▼
    <受賞結果>
    受賞 視覚効果賞
    ノミネート 作品賞
    音響賞
    美術賞
    配給:20世紀
    ■評点:ロッテン77%、IMDb7.9
    ■米興収:6億6000万ドル
    ■製作費:4億ドル


  • 「ウーマン・トーキング 私たちの選択」
    ウーマン・トーキング 私たちの選択
    (日本公開:2023年6月2日
    監督:サラ・ポーリー
    ※「アウェイ・フロム・ハー君を想う」のサラ・ポーリー監督(女優出身)による会話劇。女性パワーの結集がテーマ。脚色賞を受賞。実力派の俳優陣によるアンサンブル演技も称賛された。
    続き▼ 閉鎖的なキリスト教系団体が営む共同体の村で、女性信者たちが次々とレイプ被害を受けていた。 犯人たちが逮捕された後、村の女性たちには3つの選択肢が残された。 男たちへの反抗か、赦しを与えるのか、それとも――。

    原作小説は、実際に起きた事件から着想を得た。 2000年代に南米ボリビアで起きた連続レイプ事件。 「メノナイト」という古い宗派が運営する自給自足の村で、少なくとも151人が強姦された。被害者の年齢は3歳~65歳。

    加害者は同じ集落に住む男たち9人以上。 動物要の麻酔を使って女性の意識を失わさせるという極めて悪質な犯行だった。 7人が懲役25年の有罪判決を受けた。

    大女優であり、社会派の有力プロデューサーでもあるフランシス・マクドーマンドが、原作小説の映画化権を獲得した。 そして、16歳の時に自ら性的暴行を受けたことがある女優出身のサラ・ポーリーが脚本を執筆。監督も引き受けた。

    女性8人が狭い納屋に集まって2日間にわたって会話する、という地味な設定。 作風も静かだが、力強さがあふれる一作として評論家や映画ファンから喝采を浴びた。 巨額予算が投入された「バビロン」などメジャースタジオの豪華エンタメ作品を抑え、堂々の作品賞ノミネート入りを果たした。
    ノミネート数:2個
    受賞数:1個(脚色賞)
    配給:UA(アマゾン系)
    ■評点:ロッテン91%、IMDb7.1
    ■米興収:545万ドル


  • 「逆転のトライアングル」
    逆転のトライアングル
    (日本公開:2023年2月23日)
    国:スウェーデン、独、仏、英
    監督:リューベン・オストルンド
    ※皮肉に満ちた欧州映画。ブルジョワ風刺劇。
    前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」でオスカー国際映画賞(2018年)を受賞したスウェーデン人のオストルンド監督による初の英語作品。従来作より娯楽色を強めた。
    カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)を獲得。オストルンド監督にとって2作品連続のパルムドールとなった。その後、米国の賞レースでも目立った受賞はなかったが、オスカーで作品賞、監督賞、脚本賞のノミネートを果たし、サプライズとなった。
    あらすじ(ネタバレ有)を開く▼ セレブが乗る豪華客船がクルーズ中に無人島に難破する。乗客・乗員によるサバイバル・ゲームがスタート。船内で掃除係だった中年女性が、食糧調達などのスキルを活かして、集団内秩序のトップに立つという逆転現象が起こる。
    ノミネート数:3個
    受賞数:0個
    候補部門▼ ・作品賞
    ・監督賞
    ・脚本賞
    ■評点:ロッテン72%、IMDb7.5
    ■米興収:450万ドル
    ■製作費:1600万ドル
    【前哨戦での受賞】
    ・カンヌ国際映画祭 作品賞(パルムドール)

2022 「コーダ あいのうた」

コーダ あいのうた

【配信:アマゾン

監督:シアン・ヘダー

涙と笑いあふれる感動作。漁師一家の中でただ1人耳が聞こえる女子高生を主人公に、家族の絆や成長を描く。

2014年のフランス映画のリメイクながら、米国らしい陽気でエネルギッシュな脚色・演出により、突き抜けた一本になった。 コロナ禍で多くの人が辛い目にあっていた時代。温かみのあるストーリーが支持された。

役者たちの演技も絶賛された。主人公の家族のろう者3人は、いずれも聴覚にハンディのある俳優が演じた。

独立系(インデペンデント)の作品であり、当初は有力視されていなかった。 しかし、作品の知名度が高まるにつれて応援ムードが盛り上がり、前哨戦の終盤で急浮上。 大本命「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を破った。
続きを開く▼▼
<投票方式が有利に>
前哨戦で圧倒的に強かったパワー・オブ・ザ・ドッグは、芸術性は高いものの、好き嫌いが分かれる傾向にあった。

候補作10本に順位を付けさせる独特な投票方式が、「みんなに好かれる映画(嫌われない映画)」の典型といえる本作に有利に働いたようだ。

アート系の「ROMA/ローマ」が、大衆系の「グリーンブック」に敗れた2019年と類似する結末といえる。

<サンダンス映画祭>
本作の製作費は11億で、オスカー受賞映画としてはかなり小規模だった。(それでも前年の作品賞の「ノマドランド」の2倍ではある)。米インデペンデント系映画賞「サンダンス映画祭」で史上最多となる4冠を達成。ネット配信に参入して間もない米IT企業アップルが、これまたサンダンス史上最高となる26億円で配給権を買い取った。

サンダンス映画祭の出品作としても初の作品賞。ろう者が主な出演者となっている映画としても初めて。

配給元アップルは1999年にネット動画配信に参入したばかり。 アップルとして初の作品賞。ネット配信会社のオリジナル作品としても初めて。 先発組のNetflixとアマゾンの先を越した。

<90年ぶり>
なお、3個以下のノミネートしか得ていない映画の作品賞受賞は、1932年(第5回)の「グランド・ホテル」以来90年ぶりとなった。

<受賞結果>
受賞部門 作品賞
助演男優賞
 トロイ・コッツァー
脚色賞


<受賞スピーチ▼>


<挿入歌▼>


<予告編▼>


(日本公開:2022年1月21日)
  • 「ドライブ・マイ・カー」
    【日本映画】
     ドライブ・マイ・カー
    監督:濱口竜介
    ※日本映画として史上初の作品賞ノミネート
    受賞結果を開く▼
    受賞 国際映画賞
    ノミネート 作品賞
    監督賞
    脚色賞
    作品説明を開く▼

    ドライブ・マイ・カーは、濱口竜介監督の2作目の商業映画。

    濱口監督は熱心な映画ファンから長年にわたって高い評価を得てきた。
    大学院の卒業制作から早々に注目を集め、その後も、自主制作で手掛けた作品が、コンスタントに海外や国内の小規模インデペンデント向け映画祭で紹介された。ネットで資金を集めながら完成させた実験的な作品「ハッピーアワー」(2015年)が海外で様々な賞を獲得。続く「寝ても覚めても」(2018年)により、満を持しての商業デビューを果たした。

    村上春樹を短編を、3時間の超大作に

    本作の原作は村上春樹の短編小説。妻を失い、喪失感を抱えて生きる男の悲しみと再生を、緻密な脚本で描く。上映時間はなんと3時間。

    多言語の芝居を題材に取り入れ、言葉の壁を越えた意思疎通の深さに迫った。

    ストーリー

    主人公は舞台の演出家。俳優でもある。車を運転するのが好きな男で、自分の車に愛着を持っている。

    東京で妻と満ち足りた日々を送っていたが、突然、妻がこの世を去る。

    その2年後、広島で行われる国際演劇祭で芝居の監督を務めることになった。愛車を運転して現地入りしたが、主催者から「車を自分で運転してはいけない」と告げられ、若い運転手を紹介された。このドライバーは寡黙な女性で、ある過去をもっていた。

    原作・村上春樹

    濱口監督は映画化の許諾を得ようと村上春樹氏に手紙を送った。その際に、脚本で独自の解釈を加える意向も伝えたという。脚本づくりにおいて最も重視したのは出演者の“感情の移ろい”だったという。

    製作費1億5000万円

    製作費1億5000万円。日本映画の平均製作費3.5億円と比べても低予算だった。数十億円の製作費が相場のハリウッドと比べると、圧倒的に小規模。

    プロデューサーは山本晃久(てるひさ)

    製作会社は「TSUTAYA」グループのC&Iエンタテインメントなど。

    プロデューサーは山本晃久(てるひさ)(40歳)。村上春樹ファンであり、濱口監督のポテンシャルに早くから目をつけてきた山本プロデューサーが「村上の短編小説の映画化」を濱口に提案したことから、企画が立ち上がった。

    日本の独立系映画会社「ビターズ・エンド」

    配給と制作幹事を担当した「ビターズ・エンド」(東京、社長:定井勇二社長)は、小規模のアート作品を日本の映画ファンに届け続けてきた貴重な存在。ミニシアター文化を支える柱の一つとなってきた。

    文化的な価値にこだわった地道な取り組みが、世界で大きく花開いた。


    オスカーまでの道のり

    カンヌでデビュー

    ドライブ・マイ・カーは2021年7月のカンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞。その他のマイナーな賞も含めて計4冠に輝き、世界に華々しくデビューした。

    米国の評論家たちが火をつけた

    その数か月後にスタートした米国の映画賞レースに参戦。映画専門のジャーナリストや評論家から大絶賛を浴びた。 とくにニューヨーク・タイムズ、LAタイムズ、バラエティ誌など、影響力の大きい有力メディアの映画担当記者が猛烈にプッシュした。

    「3大批評家賞」で全勝

    権威の高い全米映画批評家協会、ニューヨーク、ロサンゼルスの「3大批評家賞」では、いずれも作品賞(国際映画賞でなく作品賞!)を獲得。これは、英語以外の映画として初の快挙だった。ハリウッドの有力作を差しおいての日本映画の最高賞獲得は、驚きをもって迎えられた。

    地味な日本語の会話劇

    とはいえ、ストーリーは地味で、上映時間も3時間という長尺。日本語による会話劇ということもあり、コアな映画通(シネフィル)だけの熱狂にとどまるかと思われた。

    目の肥えた映画人も大納得

    しかし、深層心理に訴えるような普遍性、独創的な語り口、観客を温かく包み込むような人間味は、目の肥えたハリウッドの映画人たちの心も動かした。最高峰のアカデミー賞において、日本映画として史上初の作品賞ノミネートを達成。監督賞、脚本賞、国際映画賞と併せて4部門での候補入りという歴史的偉業を成し遂げた。

     予告編→
    【配信:アマゾン
    (2021年8月公開)

  • 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
     パワー・オブ・ザ・ドッグ
    監督:ジェーン・カンピオン
    ※最多ノミネート(11部門12個)
    受賞結果を開く▼
    <受賞結果>
    受賞 監督賞
    ノミネート 作品賞
    主演男優賞
    助演男優賞
    コディ・スミット・マクフィー
    助演男優賞
    ジェシー・プレモンス
    助演女優賞
    脚色賞
    撮影賞
    作曲賞
    編集賞
    音響賞
    美術賞
    作品説明を開く▼
    心理ドラマ兼スリラー。モダン西部劇。1920年代の米国の牧場を舞台に、生々しい愛憎ストーリーを静かなタッチで描いた。

    優れた物語構築

    優れた物語の構築力と深い人物描写、そして濃密な映像表現が絶賛された。 「完璧さ」と「独創性」を徹底的に追及した作家路線の傑作として、全米の評論家が選ぶ各賞で圧倒的な勝率を達成。 さらに、記者が投票するゴールデングローブ賞でも強敵「ベルファスト」を破り、オスカー前哨戦を完全にリードした。

    革命的な女性監督

    ジェーン・カンピオン監督は、女性として3人目となる監督賞を受賞した。ニュージーランド出身。 「ピアノ・レッスン」で1994年アカデミーの作品賞、監督賞などにノミネートされ、革命的な女性監督として注目を集めた。 このときは「シンドラーのリスト」(スピルバーグ監督)があまりにも強力だったため、作品賞、監督賞ともに逃した(脚本賞は受賞)。 それから28年後となる本年度は、再びスピルバーグ監督(ウエスト・サイド・ストーリー)と作品賞、監督賞を争った。

    10年ぶりの映画

    本作の製作は、2017年にカンピオン監督が義母からもらった原作小説にハマったのが発端だった。 活動の場をテレビドラマに移し、映画づくりから10年ほど遠ざかっていた彼女は、再びリスクの高い映画製作に臨むことを決意。 個人的に信頼する英、豪、カナダのプロデューサーらを巻き込み、「新生カンピオン組」の布陣をつくった。 さらに、母国ニュージーランド政府や豪・英の政府系機関からの資金支援も取り付けた。

    世界の英才とNetflixマネー

    しかし、革命家カンピオンが思うがままのビジョンを映像化するためには、まだ資金が足りなかった。 そこに登場したのが、米Netflix(ネットフリックス)だった。 野心的な構想に飛びついた同社が巨額資金の提供を申し出たことで、プロジェクトは一気に動き出す。 撮影中にコロナ禍に見舞われたが、Netflixは追加支援を惜しまなかったという。 世界の英才と潤沢なNetflixマネーの組み合わせは、まさに今日的といえる。

    精緻な作り込み

    テーマがややダークで、一見ストーリー展開が地味。このため、一般のNetflixユーザーの反応は当初は少し鈍かった。 しかし、「見返せば見返すほど精緻な作り込みに圧倒される」という人も多く、着実に支持を広げた。

    「万人受け」のコーダに敗れる

    アカデミー作品賞の獲得に向けて最大の難関になったのが、その独特な投票システムだ。 ベストの作品を一つ選ぶのでなく、全ノミネートに順位を付ける方式が採用されているため、 多数の投票で2位、3位以上に入らなければ勝てない。 その点、万人受けしやすいコーダより不利だったといえる。
     予告編→
    【配信:ネトフリ
    (日本公開:2021年12月Netflix配信)

  • 「ベルファスト」
     ベルファスト
    監督:ケネス・ブラナー
    作品説明を開く▼

    監督の半自伝

    北アイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、自らの少年期に基づいて描いた半自伝。白黒映画(一部カラー)。

    紛争下の少年の日常

    社会を二分する北アイルランド紛争下の首都ベルファスト(1969年)を舞台に、日常を生きる少年と家族を描く。 政治的・宗教的な対立に揺れる地域や大人たちを、子供の純心な視点から写し出す。

    3世代家族の絆

    チャーミングな家族物語でもある。 少年、両親、祖父母の3世代の絆が、温かくノスタルジックな映像とともに語られる。

    トロントで好スタートだったが・・

    オスカー前哨戦のトップを切って行われたトロント国際映画祭で観客賞を受賞。 以来、ややマニア的な「パワー・オブ・ザ・ドッグ」に対抗しうるハート・ウォーミング系作品として期待を背負ってきた。 しかし、トロント以後は目立った勝利がなかった。

    ROMAより入りやすい?

    2019年の作品賞にノミネートされた「ROMA(ローマ)」と同じく監督自身の回想劇であり、かつ白黒映画という共通点もある。 ただ、淡々とした作風で、ストーリー展開が退屈だと感じる人も多かったROMAに比べると、入り込みやすい大衆作品。

    映画愛のシーンも

    「映画愛」を感じさせるシーンもあり、オスカーとの相性も良好。 高齢アカデミー会員へのアピール度も強いと見られていた。 弱点は、強烈なインパクトに欠けること。

    監督・俳優・脚本家として候補歴

    映画監督兼俳優のブラナー氏は、過去5度アカデミー賞にノミネートされている。 監督デビュー作「ヘンリー五世」(1989年)で監督賞と主演男優賞にダブルノミネート。 そのあと短編映画賞と脚色賞で候補になり、直近では「マリリン 7日間の恋」(2011年)で助演男優賞にノミネートされた。

    新記録「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」

    今回は作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、「1人で累計7つの異なる部門でノミネート」というアカデミー賞の新記録を樹立した。そして、ついに脚本賞で受賞を果たした。マーベル映画「ソー」の1作目(2011年)の監督としても有名。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年3月25日)

  • 「ドリームプラン」
     ドリームプラン
    監督:レイナルド・マーカス・グリーン
    作品説明を開く▼

    観客支持率トップの98%

    大多数の観客が称賛する一作。ロッテン・トマトの一般観客の評価スコアは候補作の中でトップの98%。

    ハリウッド・スタジオ製の王道

    オスカーになじみやすい家族物語であり、スポーツもの。 本年度の作品賞ノミネートの中で、最もアメリカン・ドリーム的なストーリーでもある。 ハリウッド大手スタジオ(ワーナー)による王道作品といえる。

    実在の父親がモデル

    テニスの世界トップに君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)の父親の姿を描く。 実話をベースにしている。

    主人公リチャード・ウィリアムズはテニスの素人ながら、娘2人に幼少期からテニスを徹底指導。 娘が力をつけてくると、 経済的に貧しかったにもかかわらず、強引なやり方で超一流のコーチをつけることに成功し、鮮烈なプロデビューへと導いた。 伝説的な姉妹の大活躍の土台をつくった熱血パパとして知られる。 裕福な白人層が中心だった米国テニス界に風穴を開けた存在でもある。

    「王様」のような立ち振る舞い

    本作は、リチャードの独特な「子育て法」に焦点があてられている。 目先のゲームや一時的な活躍よりも、娘たちの長期的な成功を優先させ、学問や人格形成を重視した教育に邁進する。 一方で、破天荒で独善的な態度により、周囲と様々な軋轢(あつれき)を起こしていく。 その立ち振る舞いはまるで「王様」。映画の原題も「王様リチャード(King Richard)」になっている。

    低所得層の苦闘

    少数派人種や低所得層の苦労・努力がテーマの一つ。 家族の団結や厚い信仰心もしっかりと描写されている。 米国で重視されがちな価値観が前面に出ており、 変化球のかたまりのような「パワー・オブ・ザ・ドッグ」とは対照的。一般観客が入りやすい作品であることが、作品賞レースで有利に働く可能性がある。 ただ、称賛の嵐の中で、「ややありがちな映画」との声も。

    監督は無名の若手

    主演ウィル・スミスの熱演ぶりが、見どころの一つ。 3度目のノミネートにして初の主演男優賞を獲得した。 助演女優賞ノミネートの妻役アーンジャニュー・エリスも、限られた見せ場で観客の心をわしづかみにする。 監督はほぼ無名の若手レイナルド・マーカス・グリーンが務めたが、名演出と堅実なまとめぶりが光る。 臨場感のあるテニスシーンも好評。

    ワーナーの「配信重視」路線

    米国では劇場公開と同時にネット配信された。 配給会社ワーナーが自社の配信サービス「HBOマックス」の加入者を増やすため、 2021年のすべての映画を「ネット同時公開」としたためだ。 この方針をめぐっては、映画界から強い反発が出た。 このため、本作は「親劇場派(反ネット配信業者派)」の票の受け皿としてやや説得力に欠ける面があった。

    【あらすじ】

    米国ロサンゼルス近郊の貧困地区コンプトンで暮らすリチャードはある日、 テレビで女子テニス選手が巨額の賞金を受け取るのを見て、 自分たちも娘をもうけ、彼女たちをプロテニス選手に育てることを決意する。 独自の教育論に基づく約80ページの「プラン(計画書)」を作成。 そのプランに基づいて夫婦で娘たちにテニスを教え始める。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年2月23日)

  • 「ウエスト・サイド・ストーリー」
     ウエスト・サイド・ストーリー
    監督:スティーブン・スピルバーグ
    作品説明を開く▼
    巨匠スピルバーグ監督の映画として、11作目の作品賞ノミネートとなった(※過去の作品賞ノミネートは「ジョーズ」「ET」「カラーパープル」「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」「ミュンヘン」「戦火の馬」「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」「ペンタゴン・ペーパーズ」)。

    原版は作品賞など10部門独占

    原作は、1957年初演の傑作ミュージカル劇。 今回が2度目の映画化となる。 最初の映画版となった1960年の「ウエスト・サイド物語」は、アカデミー賞で作品賞を含む10部門を独占。 ミュージカル映画史に残る絶対的な名作として語り継がれてきた。 それだけに、今回の2度目の映画化については、「何故また作るのか」という懐疑的な声が多く聞かれた。

    最高級の映画テクニック

    しかし、いざ公開されると「最高に眩(まぶ)しく、ゴージャス」などの称賛の声が相次いだ。 今の映画界が持ちうる最高級のテクニックを結集。オリジナル版を現代風に洗練させつつ、その精神をビビッドに蘇らせたことで、往年のファンから若い世代に至るまで幅広い支持を得た。 踊りの振り付けもバージョンアップされており、躍動感あふれるダンスシーンは圧巻。

    劇場マジック

    スピルバーグ監督にとって初めてのミュージカル。10歳のときに両親が買ってきたミュージカル版のレコードをボロボロになるまで聴いて以来、この劇を愛し続けてきたという。 それだけに、パワフルな演出や1シーンごとの徹底した仕上げぶりはかつてないほどの情熱を感じさせる。スペクタクル作品ならではの劇場マジックも存分に味わえる。

    助演女優賞を受賞

    ヒロインのマリア役を演じたレイチェル・ゼグラーは新人ながら高い評価を得た。 それを上回る大絶賛の嵐となったのが、アニータ役のアリアナ・デボーズ。助演女優賞を受賞した。
    オリジナル版でアニータを演じ、今回90歳にして別の役柄で再出演したリタ・モレノも見事。

    リメイクは不利

    作品賞レースでは、オスカーらしい華々しさがあるという点で有利だが、リメイクである点はやはり不利だと見られた。 オリジナル版をリアルタイムに体験している高齢アカデミー会員の心をどれだけ掴むかが焦点だった。

    貧困街の愛の物語

    ニューヨークの下町「ウエスト・サイド」で、イタリア系とプエルトリコ系の不良少年グループが対立。その中で生まれる愛の物語。 恋愛悲劇の最高傑作として知られるシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を、1950年代の貧困街に置き換え、アメリカ社会の抱える不満や苦悩を描き出した
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年2月11日)

  • 「DUNE/デューン 砂の惑星」
     DUNE/デューン 砂の惑星
    監督:ドゥニ・ビルヌーブ
    作品説明を開く▼
    未来の宇宙を舞台とするSF大作。 現在も絶大な人気を誇る原作小説の独創的な世界観を、驚くべき精密さで映像化した。 ドゥニ・ビルヌーブ監督。 主演はティモシー・シャラメ。

    原作となった伝説的なSF小説『デューン 砂の惑星』(フランク・ハーバート作)は、1965年に出版された。 これまで多くの監督が映画化に挑戦しながら、プロジェクトが途中で頓挫したり、出来栄えがいま一つだったりと、成功には至らなかった。 そんな歴史的な難題に、「ブレードランナー2049」「メッセージ」で知られるドゥニ・ビルヌーブ監督が挑んだ。

    本作は、何よりも映像の美しさが称賛の的となった。 洗練された視覚デザインと描写により、ユニークな世界観を構築。 別の惑星にいるかのような錯覚を観客に覚えさせる。 砂漠のスペクタクルも見事。中東の砂漠で挑んだ撮影が、驚愕の映像体験へとつながった。

    日本では興行的に伸び悩んだが、欧州で大ヒット。中国でも堅調だった。 母国アメリカでは、劇場公開と同時にネット配信されたこともあって当初は伸び悩んだものの、1か月かけて1億ドルの大台を突破。 コロナ禍という悪条件のなか、最終的には全世界で400億円以上を稼ぎ、本年度の作品賞ノミネートの中で唯一の「特大ヒット作」となった。

    本作は2部構成のシリーズの第一弾と位置づけられている。 このため、ストーリーの進展が序盤の段階にとどまったという印象を持つ人も多い。 次作でどのようにまとめる上げるのか、監督の手腕が注目されるところであり、「1作目だけで作品賞を与えるのは時期尚早」との声もあった。 あの大傑作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング」でさえ、「パート1」と「2」では作品賞ノミネートにとどまり、完結編の「3」でようやく受賞を果たした。

    10ノミネートのうち、視覚効果賞、撮影賞、作曲賞、編集賞、美術賞、音響賞の6部門で受賞を果たした。断トツの本年度最多受賞。 2016年のオスカーで、作品賞を逃しながら技術系6部門を制した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を彷彿とさせる。

    主人公は、銀河を支配する「皇帝」に仕える大物一族の息子。未来をぼんやりと予見する力を備えている。豪華なオールスターキャストが登場する超大作。
     予告編→
    【配信:アマゾン(字幕版)
    【配信:アマゾン(吹替版)
     メイキング映像→
    (日本公開:2021年10月15日)

  • 「リコリス・ピザ」
     リコリス・ピザ
    監督:ポール・トーマス・アンダーソン
    作品説明を開く▼
    ノスタルジックな青春映画。 1970年代のカリフォルニアが舞台。 15歳の少年と、25歳の女性の恋を描く。

    ポール・トーマス・アンダーソン監督(51歳)の9作目。 自らが生まれ育った街とその時代を題材にしたパーソナルな一作。 登場人物や出演者にも、自分になじみのある人を多く起用した。過去作と比べ、心温まる作風。

    本作が作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたことで、 アンダーソン監督のアカデミー賞ノミネート数は通算11になった。 しかし、今回も受賞は逃し、受賞は通算ゼロのままとなった。
    ノミネート歴(wiki)→

    主演のクーパー・ホフマンは、本作でデビューとなる新人。 アンダーソン監督の数々の名作に出演してきた故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子である。 ホフマンの相手役となる主演女優アラナ・ハイムも元々はロック歌手で、俳優としては新人。2人の好演と相性の良さも称賛されている。

    題名の「リコリス・ピザ」は、カリフォルニアに実在していたレコード店の店名。 無料のリコリス(キャンディ)、快適なソファ、音楽雑誌を提供していたことでも知られていた。
     予告編→
    【配信:アマゾン
    (日本公開:2022年7月1日)

  • 「ドント・ルック・アップ」
     ドント・ルック・アップ
    監督:アダム・マッケイ
    作品説明を開く▼
    本年度の作品賞ノミネートの中で、最も賛否両論が激しく分かれている一作。肯定派からは強い支持を得た。

    社会風刺コメディ。現代の扇動的な大衆政治や、事実を軽視する「反知性主義」を嘲笑のネタにしている。

    「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「バイス」という社会派ノンフィクション系傑作でアカデミー作品賞にノミネートされたアダム・マッケイ監督。超豪華キャストと先端のSF技術を駆使した大作で、製作費80億円。

    当初パラマウントが配給権を持っていたが、Netflixが買い取った。配信スタート直後からNetflixの記録を塗り替えるような人気ぶりとなった。

    彗星が地球に接近し、人類が破滅の危機に瀕していることを察知した2人の天文学者が、米大統領らに対策を講じるよう求めていく。地球温暖化への警鐘にもなっている。

    レオナルド・ディカプリオらの演技も好評だったが、俳優部門でのノミネートはゼロだった。
     予告編→
    【配信:ネトフリ
    (日本公開:2021年12月10日、2021年12月Netflix配信)

  • 「ナイトメア・アリー」
     ナイトメア・アリー
    監督:ギレルモ・デル・トロ
    作品説明を開く▼
    スリラー映画。「シェイプ・オブ・ウォーター(2017年)」で作品賞と監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督作の新作とあって、公開前から期待が膨らんでいた。興行的には失敗したが、熱心な映画ファンやマニアからは厚い支持を獲得。 技術的なレベルの高さも称賛された。

    オスカー争いの最強集団として君臨する米映画会社サーチライトの作品。 サーチライトは本年度、有力作に恵まれず、作品賞レースではナイトメア・アリー1本に注力した。 その甲斐あってか、「チック、チック…ブーン!」(Netflix)をさしおいて、作品賞ノミネート入りを果たした。

    巡回ショーの芸人が主人公。 この芸人が、女性精神科医と出会う。 そして、危険な道へと走っていく。 主演はブラッドリー・クーパー。 危ない女性精神科医を、オスカー女優ケイト・ブランシェケイトが演じる。

    トロ監督はメキシコ人。日本の怪獣をこよなく愛する天才的オタクとして知られる。 ハリウッド業界内でも「愛されキャラ」として親しまれている。
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    (日本公開:2022年3月25日)

2021 「ノマドランド」

ノマドランド

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監督:クロエ・ジャオ

アメリカの雄大な原風景を背景に、 季節労働者たちの心のひだを見事に映し出した詩情的な作品。 コロナウイルス感染拡大で孤立感や喪失感が深まるなか、 人と人とのつながり、亡き伴侶への想い、自然との一体感を伝える静かな物語が、共感を呼んだ。

カメラクルーが半年間にわたって米国の田舎を転々としながら、撮影を行った。荒野、砂漠、森林、峡谷に主人公らが溶け込む様子を美しい映像で伝える。

過去数年の作品賞争いは、有力2作品による接戦が多かった。 しかし、本年度は、ノマドランドが前哨戦の序盤から独走を続け、予想通りの受賞となった。

なお、授賞式では、作品賞が一番最後に発表されず、主演男優賞で締めくくられた。本来は最高の栄誉である作品賞で締めくくるのは当たり前だが、「亡くなったチャドウィック・ボーズマンの主演男優賞受賞で式を感動的に締めくくる」という演出意図により、順番が入れ替えられた。この構成はあまりにも作為的で、ノマドランドに失礼だ。しかも、主演男優賞はボーズマンでなくアンソニー・ホプキンスになるというバツの悪さ。式のプロデューサーを務めたスティーブン・ソダバーグらのとんでもない大失態だ。

【受賞部門】
・作品賞
・監督賞
・主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)
【ノミネート部門】
・脚色賞
・撮影賞
・編集賞

日本公開:2021年3月26日

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  • 「ミナリ」
     ミナリ
    監督:リー・アイザック・チョン
    (公開:2021年3月19日) ※韓国系移民の家族ドラマ。 大都市ロサンゼルスから南部の田舎に移住し、農民としての新しい挑戦に挑む姿を描く。 「アメリカンドリーム」的な設定ではあるが、よくありがちな成功物語ではない。
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    移民国家らしい物語

    全米の独立系映画が集まる「サンダンス映画祭」(2020年)で、作品賞(グランプリ)と観客賞の2冠に輝いた。 2021年1月にノースカロライナ映画批評家協会賞の作品賞を受賞。「ノマドランド」の連勝にストップをかけた。 本年度オスカーの作品賞ノミネート作の中で映画評論家の評価スコアは98%。ノマドランドを上回った。 昨年の作品賞「パラサイト」と同じである。 移民国家であるアメリカにおいて、民族・人種を超えて共感を得た。

    リー・アイザック・チョン(Lee Isaac Chung)監督は韓国系アメリカ人。42歳。 本作の舞台であるアーカンソー州の農村地帯で育った。 ミナリは、監督の半自伝的なストーリーだという。
    これまでも独立系の渋い作品を手がけてきており、 日本のアニメ映画「君の名は。」のハリウッド実写版の監督を務めることが決まっている。

    本作で助演女優賞にノミネートされたユン・ヨジョンは、「韓国のメリル・ストリープ」とも言える超大物女優。 破天荒で毒舌家の祖母役を演じ、大好評を博した。 また、主役のスティーブン・ユアンは、アジア系で初めの主演男優賞ノミネートとなった。

    配給は、質の高いインディー映画で有名なアメリカの「A24」。 製作は、ブラッド・ピットが経営する「プランB」とA24が共同で手がけた。 つまり、2017年作品賞の名作「ムーンライト」と同じ布陣だ。 製作費は2億円と小規模。

    使用言語は韓国語と英語だが、韓国語のほうが多い。
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  • 「ファーザー」
     ファーザー
    監督:フロリアン・ゼレール
    (公開:2021年5月14日)
    ※認知症( アルツハイマー)に苦しむ男性の話。 彼は娘と同居することになるが、娘の手助けを拒否する。 親子関係を描く。主演はアンソニー・ホプキンス。 娘役にオリビア・コールマン。
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    ロッテントマト「98%」、ミナリと並びトップ

    評論家のレビュー集計サイト「ロッテン・トマト」で、98%の高評価を獲得した。 これは、本年度オスカー作品賞にノミネートされた作品の中で、ミナリと並び最も高い。

    フランスの小説家であるフローリアン・ゼレール氏が監督を務めた。 原作は、ゼレール氏の芝居「ルペール(Le Père)」。 脚本は、ゼレール氏とともに、イギリスの著名脚本家クリストファー・ハンプトン氏が共同執筆した。 ハンプトン氏は「危険な関係」(1988年)や「つぐない」で有名。「危険な関係」では、アカデミー賞の脚色賞を受賞した。

    配給はソニー・クラシック。
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  • 「シカゴ7裁判」
     シカゴ7裁判
    監督:アーロン・ソーキン
    (公開:2020年10月)
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  • 「プロミシング・ヤング・ウーマン」
     プロミシング・ヤング・ウーマン
    監督:エメラルド・フェネル
    (公開:2021年7月16日)
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    復讐系スリラー。ダーク・コメディ的な要素を持つ。主演キャリー・マリガンの演技が絶賛された。

    主人公の女性は、かつて優れた医学生として将来を嘱望されていた。 しかし、医大を中退し、30歳になった現在はウエイストレスとして低賃金で働いている。 彼女医大からドロップアウトしたのは、 親友に対するレイプ事件を大学側がもみ消し、その親友が自殺に追い込まれたことがきっかけだった。 彼女は、その事件の復讐に執念を燃やしていた。

    監督のエメラルド・フェネルは女優出身。 Netflixドラマ「ザ・クラウン」のカミラ夫人役で知られる。現在35歳。 本作が監督としてのデビュー作となった。 自ら書き下ろした脚本も称賛された。 衝撃的なラストシーンも話題となった。
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  • 「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」
     サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~
    監督:ダリウス・マーダー
    (公開:2020年12月アマゾン配信)
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  • 「Mank(マンク)」
     マンク
    監督:デヴィッド・フィンチャー
    (公開:2020年12月ネットフリックス配信)
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    ネットフリックス作品。

    映画の歴史の中で、最高の傑作の一つとして評価されている「市民ケーン」。 この映画の脚本を書いたハーマン・マンキーウィッツが主人公になっている。 彼が、若き巨匠・オーソン・ウェルズ監督から脚本の執筆者クレジットを勝ち取ろうとする姿を描く。

    デビッド・フィンチャー監督の6年ぶりの監督作品。 フィンチャーは「ソーシャル・ネットワーク」「ベンジャミン・バトン」「ファイト・クラブ」「セブン」など数々の名作を生んできた。 このうち、Facebookの創業者を描いた「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)はオスカー作品賞を逃したが、 その後、歴史的な名作としての評価が定着した。 同じく絶賛された「ゴーン・ガール」以来の監督復帰である。

    フィンチャーの父親で、脚本家だったジャック・フィンチャーが書いた脚本に基づく。 主演はゲイリー・オールドマン。
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  • 「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」
     ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償
    監督:シャカ・キング
    (DVDレンタル:2021年9月3日)
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2021年の全部門→
2020 「パラサイト 半地下の家族」

パラサイト 半地下の家族

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監督:ポン・ジュノ

韓国映画としてはもちろん、英語以外の映画として史上初の作品賞に輝いた。まさに歴史的な快挙だった。

「半地下住宅」という劣悪な生活環境で暮らす貧しい家族が主人公。 貧富の格差などがテーマ。ドラマ、コメディ、サスペンス、風刺、ホラー、悲劇、社会への問題提起など、 あらゆる要素がダイナミックに交錯する傑作との称賛を浴びた。

ポン・ジュノ監督は「母なる証明」「殺人の追憶」が世界で絶賛され、映画評論家や映画通の間では神的な存在ではあった。しかし、一般の米国人は知られておらず、当初は、本作の作品賞獲得を予想する声は少なかった。

アメリカ人は業界関係者であっても字幕で映画を見ることにそれほど慣れていない。字幕映画という点はやはり不利。しかし、芸術性だけでなく、シンプルな娯楽性という点において傑出した本作は、エンタメ映画として幅広い層から熱烈な支持を得ることに成功した。

この後、音楽グループ「BTS」、ドラマ「イカゲーム」などが世界市場を席巻し、韓国がコンテンツ大国としての注目されることとなった。

【受賞部門】
・作品賞
・監督賞
・脚本賞
・国際映画賞
【ノミネート部門】
・編集賞
・美術賞

(公開:2020年1月10日)

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  • 「1917 命をかけた伝令」
    1917 命をかけた伝令
    監督:サム・メンデス
    ※戦争映画であり、ハリウッドらしい大作。主人公たちをカメラが切れ目なく追いかけているように見せる撮影手法など技術面で高い評価を受けた。「IMAX」の映画館で鑑賞したときの臨場感も称賛の的。 Netflixのようなネット配信が映画館の存在を脅かすなかで、「劇場体験」の凄さを味わえる大作としてプッシュする声が拡大した。 戦争映画としては「プライベート・ライアン」(1998年)以来の傑作という声も出た。 サム・メンデス監督はデビュー作「アメリカン・ビューティー」で2020年に作品賞と監督賞を受賞しており、20年ぶりに本命候補に名をつらねた。
    オスカー前哨戦の中で最も重要視されている「PGA(全米プロデューサー組合賞)」で作品賞を獲得。 ゴールデングローブ賞も制し、受賞歴では本年トップ。
    第一次世界大戦下のフランス北部が舞台。 主人公は、英国軍の若い兵士2人。 1600人の友軍兵士を救うため、 重要な伝令を担って、 危険な戦場を駆ける。
    (公開:2020年2月14日)  予告編→
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  • 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
    ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
    監督:クエンティン・タランティーノ
    ※やや落ち目の俳優とその専属スタントマンの2人を主人公とする愉快なドラマ。略称「ワンハリ」。 作品の舞台が「1960年代のアメリカ映画業界」になっており、 ハリウッドへのノスタルジーと愛情に満ちている。 内輪ネタが好きなアカデミー賞の投票権者から支持を得た。
    オスカー前哨戦の序盤では「アイリッシュマン」に負け続けたが、 年明けの放送映画批評家協会賞で作品賞を獲得。 アイリッシュマンと入れ替わる形で有力候補に浮上した。 過去のタランティーノの数々の業績も大きなプラス材料となり、最後まで本命候補の一角を占めた。
    (公開:2019年8月)
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  • 「ジョーカー」
    ジョーカー
    監督:トッド・フィリップス
    ※大人気漫画「バットマン」の悪役ジョーカーが主人公。 孤独な大道芸人が、凶悪な犯罪者へと変貌する過程を描く。
    世界で記録的な大ヒットとなった勢いに乗り、最多となる11部門にノミネートされた。 コミック映画でありながら、ドラマ性を重視したダークな作風に挑戦し、見事に成功させた業績が評価された。 興行収入は本年度の候補作の中で断トツの1位。
    賞レースの序盤では、伝統のある「ベネチア国際映画祭」でいきなり作品賞を受賞した。 だが、アメリカ国内の評論家や映画ファンの評判は、賛否両論に分かれた。 ロッテン・トマトのスコアは69%。作品賞候補作の中で最も低かった。
    低評価の理由としては、 「ややチープな政治的意見を前面に出すぎている」 「マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』『キング・オブ・コメディ』など過去の映画の焼き直しだ。新鮮さがない」 「暴力に対する批判的な視点が足りない」 などが挙げられている。
    それでも、主役ホアキン・フェニックスの演技については、絶賛の一色だった。
    (公開:2019年10月)
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  • 「アイリッシュマン」
    アイリッシュマン
    監督:マーティン・スコセッシ
    ※巨匠スコセッシ監督のマフィア映画。ネットフリックス(Netflix)のオリジナル作品。 主演はロバート・デ・ニーロ。 スコセッシとデニーロのコンビは、 「タクシードライバー」「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」といった歴史的な名作を生んだが、今回はそれらに匹敵する出来栄えと評価された。
    賞レースの序盤戦で快走したが、盛り上がりが持続せず、 終盤に入って失速した。 3時間30分という上映時間が長すぎること、 主人公(マフィアの殺し屋)に共感しづらい、 などが失速の原因として指摘された。
    (公開:2019年11月)
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  • 「マリッジ・ストーリー」
    マリッジ・ストーリー
    監督:ノア・バームバック
    ※ネットフリックス(Netflix)のオリジナル映画。離婚問題に直面する夫婦の愛憎劇。 夫はニューヨークで活動する舞台監督。 妻は女優であり、ロサンゼルスで息子とともに再出発をしようとする。 1980年のアカデミー賞で作品賞を受賞した「クレイマー・クレイマー」の21世紀版とも受け止められた。
    ノア・バームバック監督は「フランシス・ハ」などで知られる。 会話劇を得意とするバームバックのスキルがいかんなく発揮された。
    夫役のアダム・ドライバーと妻役のスカーレット・ヨハンソンがぞれぞれ主演でノミネート入り。 離婚専門の攻撃的な弁護士を演じたローラ・ダーンが助演女優賞に輝いた。
    (公開:2019年11月)  予告編→
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  • 「フォードvsフェラーリ」
    フォードvsフェラーリ
    監督:ジェームズ・マンゴールド
    ※大衆から評論家まで幅広く愛された王道ハリウッド映画。
    世界の3大自動車レースの一つ、「ル・マン24時間レース」の実話に基づいている。 時代設定は1963年。 カーレース界で王者に君臨していたイタリアのフェラーリに対して、米フォードがプライドを賭けて挑む。 フォードの技術者(マット・デイモン)と、ドライバーに抜擢された英国人の型破りなレーサー(クリスチャン・ベール)の友情がストーリーの軸になる。

    (公開:2020年1月10日)
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  • 「ジョジョ・ラビット」
    ジョジョ・ラビット
    監督:タイカ・ワイティティ
    ※ナチスが権力を握った第二次世界大戦下のドイツが舞台。コメディとしてのユーモアや風刺を貫きながら、問題の本質に迫った姿勢が称賛された。マーベル映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」を成功させたタイカ・ワイティティ監督の辛口のユーモア・センスが光る。
    主人公の少年は、アドルフ・ヒトラーを空想上の友達にするが、 自分の母親(スカーレット・ヨハンソン)がユダヤ人の少女をかくまっているのを見つけた。
    アカデミー賞の前哨戦の中で、 最も有力な試金石の一つとなるトロント国際映画祭において、 最高賞の「観客賞」を受賞した。
    (公開:2020年1月17日)
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  • 「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
    ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
    監督:グレタ・ガーウィグ
    ※名作文学「若草物語」の映画化。 感動もの。南北戦争下のアメリカを舞台に、 田舎の四姉妹の成長ドラマを描く。
    監督は、アカデミー賞作品賞ノミネートの「レディ・バード」で大絶賛されたグレタ・ガーウィグ。 主演は、「レディ・バード」「ブルックリン」で2度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン。
    若草物語はこれまでに何度か映画化されてきたが、 今回はシニカルで現代的なタッチで知られるガーウィグ監督が独特な脚色を加えた。 アメリカでは、主に白人女性の映画ファンから絶大な支持を得た。
    (公開:2020年6月12日)

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2020年の全部門→

2010年代の作品賞

受賞作・ノミネート

 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 

2020年代↑ | 2010年代 | 2000年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
2019 「グリーンブック」

グリーンブック

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監督:ピーター・ファレリー

黒人ピアニストと白人運転手の友情を描く。 実話に基づいた物語。心温まる内容。

時は1962年。 既にニューヨークを拠点に音楽界で大成功を収めていたシャーリーが、人種差別が悪質な米国南部へと演奏ツアーに向かう。 その専属運転手として、イタリア系の用心棒トニーが雇われる。 エリート教育を受けてきた知性派の黒人シャーリーと、 労働者階級の白人トニーのやり取りがコミカルに描写されている。

トニーの実の息子が50年の時を経て脚本を書いた。 ピーター・ファレリー監督は、「メリーに首ったけ」などコメディー映画で知られる。 いわゆるロードムービーであるとともに、クリスマス映画でもある。

ネットフリックスの白黒映画「ROMA/ローマ」との一騎打ちの展開。 事前予想ではローマが有力視されていた。 しかし、大衆的な面白味にあふれたグリーンブックが栄冠を手にした。

(公開:2019年3月1日)

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2019年の全部門→
2018 「シェイプ・オブ・ウォーター」

シェイプ・オブ・ウォーター

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監督:ギレルモ・デル・トロ

半魚人と女性のラブロマンス映画。ファンタジーもの。美しいおとぎ話である。 「怪獣もの映画として初のオスカー作品賞」とも言われる。

ヒレやウロコのある生々しい半魚人。最初は恐ろしい怪人に見えるが、だんだんとイケメンに見えてくる。 ヒロインの女性は発声に障害があり、口がきけない。簡単な手話や音楽で、半魚人と心を通わせていく。

監督は、メキシコ人のギレルモ・デル・トロ(当時53歳)。 怪獣や特撮を愛するオタク系であり、親日派。 特殊メイクの助手として映画界に入った。 「パンズ・ラビリンス」(2006年)でアカデミー賞3部門を獲得した。

前哨戦では、社会派ドラマ「スリー・ビルボード」と勝利を二分していた。 オスカーでは、華やかさや視覚的な芸術性で上回るシェイプ・オブ・ウォーターが勝利した。

(日本公開:2018年3月1日)

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2017 「ムーンライト」

ムーンライト

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監督:バリー・ジェンキンズ

製作費1.5億円という小規模予算。 正真正銘のインディー映画である。

主人公はゲイの黒人。 いじめ、差別、貧困に直面しながら生きる姿が、静かな語り口で描かれる。 子供時代、高校時代、大人時代の3部に分かれている。 美しい映像と音楽とともに、主人公の内面へ引き込む力が、高い評価を得た。

黒人のバリー・ジェンキンス監督は37歳。本作が長編2作目となった。 登場人物もほとんどが黒人。 このうち、麻薬の売人を演じるマハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞した。

配給は、質の高いインディー映画で有名なアメリカの「A24」。 製作は、ブラッド・ピットが経営する「プランB」とA24が共同で手がけた。

事前予想では、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」が最有力との声が圧倒的に多かった。 とはいえ、批評家からの評価は「ムーンライト」のほうが、やや上だった。 両作品とも、歴史に残る傑作として語り継がれている。


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2017年の全部門→
2016 「スポットライト 世紀のスクープ」

スポットライト 世紀のスクープ

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監督:トーマス・マッカーシー

米国のキリスト教会の聖職者による大規模な性的虐待を描いた。 事件をスクープした新聞社が舞台。 新聞記者たちの粘り強さが心を打つ。

この年のオスカーは秀作ぞろいだった。「マネー・ショート」や「レヴェナント」も有力視されていた。 現実の社会問題に対して、奇をてらずにまっすぐに取り組んだ「スポットライト」に軍配が上がった。

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2015 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

「バードマン」対「6才のボクが、大人になるまで」の一騎打ちと見られた。 過去の名作へのオマージュやハリウッドの内輪ネタがふんだんに盛り込まれたバードマンが勝利した。

バードマンは作り手の遊び心と挑戦があふれた実験的な作品。物語も、映像も、一筋縄ではいかない。 カット割りがなく、全編が一場面のような長回しの撮影。 そうかと思うと突然怪獣が出たり空を飛んだりのファンタジー。妄想と現実がない交ぜになっている。

かつて鳥人のヒーロー映画「バードマン」の主演でスターになり、その後落ちぶれた俳優が、ブロードウェーの舞台劇で一発逆転を夢見る。

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  • 「6才のボクが、大人になるまで。」
    監督:リチャード・リンクレイター
    ※6歳の子どもが大人になるまでの家族のドラマを、主な役者を変えずに12年かけて撮影した。毎年数日ずつ撮った。原題は「Boyhood」(少年時代)。
    主人公のメイソン君(エラー・コルトレーン)は、母(パトリシア・アークエット)と姉と米テキサス州の小さな町で暮らしていた。母は子供たちの反対を押し切り、祖母が住むヒューストンへ引っ越す。転居先に離婚した父(イーサン・ホーク)が突然現れる。
    前哨戦の米クリティック・チョイス賞では、作品賞、監督賞、助演女優賞の3冠に輝いた。オスカーでは6部門にノミネートされたが、助演女優賞(パトリシア・アークエット)のみの受賞にとどまった。
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  • 「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
    監督:モルテン・ティルドゥム
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  • 「グランド・ブダペスト・ホテル」
    監督:ウェス・アンダーソン
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  • 「グローリー/明日への行進」
    監督:エヴァ・デュヴァネイ
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  • 「博士と彼女のセオリー」
    監督:ジェームズ・マーシュ
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  • 「アメリカン・スナイパー」
    監督:クリント・イーストウッド
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  • 「セッション」
    監督:デイミアン・チャゼル
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2014 「それでも夜は明ける」

それでも夜は明ける

監督:スティーヴ・マックイーン

奴隷制度の冷酷さを、誠実に描いた歴史物語。 奴隷の輸入が禁止された後のアメリカにおいて、 米国内で自由に暮らす黒人を誘拐し、強制的に奴隷にしてしまう事件が多発した。 その被害者の一人の手記に基づく実話である。
監督スティーヴ・マックイーンはアフリカ系イギリス人。 黒人監督として史上初のアカデミー賞作品賞を受賞した。 SF映画の傑作「ゼロ・グラビティ」をおさえ、堂々の受賞。

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2013 「アルゴ」

アルゴ

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監督:ベン・アフレック

実話をベースにしたサスペンス劇。 1979年に起きたイランの米大使館人質事件で、大使館員6人がイラン国内に取り残された。 CIAは、ハリウッドの映画人が協力して、6人を救出する計画を立てる。 映画のロケハンを装って人命を救おうとする「ハリウッド礼賛」的な側面がある。 これが受賞の決め手となったと見られている。 正体がばれないかスリリングで、ドラマに緊張感がある。

監督賞にノミネートされなかった映画が作品賞を受賞するのは、1990年の「ドライビングMissデイジー」以来。

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2012 「アーティスト」

アーティスト

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監督:ミシェル・アザナビシウス

無声映画。かつ白黒映画。 ハリウッド映画についての映画であり、全般にわたって映画愛が満ちている。 アカデミー会員は大喜び。 3D全盛の時代に、映画様式の原点に戻ったシンプルさが感動を呼んだ。 作品賞、監督賞、主演男優賞など、主要5部門を制した。

1920年代後半から30年代にかけて、無声映画(サイレント)から発声映画(トーキー)への過渡期のハリウッドが舞台となっている。 サイレント時代の終わりとともに、落ちぶれてゆくスター男優が主人公。 人気上昇中の新人女優と心を寄せ合う。

監督は45歳のフランス人、ミシェル・アザナビシウス。 出演者もフランス人たち。

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2011 「英国王のスピーチ」

英国王のスピーチ

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監督:トム・フーパー

内気で演説が苦手なイギリス国王が、歴史を左右するような重大なスピーチに臨むまでの実話を描いた。 感動的な歴史もの。

この年の作品賞争いは、本作と「ソーシャル・ネットワーク」との一騎打ちとなった。 ソーシャル・ネットワークはFacebookの創業をテーマにした意欲作。 新しい時代の空気をつかみ、斬新な映像で表現。年月を経ても色あせない普遍的な娯楽映画として、 その後も讃えられ続けた。 21世紀で最高の名作の一つとも言われる。 一方で、「英国王のスピーチ」は、それほど高い評価は得ていない。

この年の賞レースでも前哨戦の中盤まではソーシャル・ネットワークが優勢だった。 しかし、オスカー直前にタイムリーに現れた英国王のスピーチが猛追。 結局、王室ものゆえの格式が漂い、シニア層の共感も得やすい英国王のスピーチに軍配が上がった。 当時、絶頂期にあった大物プロデューサー、ハービー・ワインスタイン(後にセクハラ事件で業界追放)による巧妙なオスカー・キャンペーンも、英国王のスピーチに有利に働いたようだ。

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2010 「ハート・ロッカー」

ハート・ロッカー

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監督:キャスリン・ビグロー

米国の対イラク戦争の最前線で爆弾を処理する兵士たちの人間ドラマ。 いつ命を失ってもおかしくない日々を送る爆弾処理員の緊迫した姿と心理を描く。ドキュメンタリーと間違えそうなリアリティーが話題となった。

キャスリン・ビグロー監督は、女性として初めてとなる監督賞も獲得した。計6冠。 ビグロー監督の元夫であるジェームス・キャメロン監督の超大ヒット作「アバター」との対決が注目された。

前哨戦では、ゴールデン・グローブ賞で「アバター」に敗れた。しかし、より重要度が高いPGA(全米プロデューサー組合賞)とクリティクス・チョイス賞で勝利していた。 ハート・ロッカーは製作費がアバターの約16分1の15億円。世界興行収入も約54分の1の48億円だったが、賞レースではハート・ロッカーに軍配が上がった。

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2000年代の作品賞

受賞作・ノミネート

 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | 2002 | 2001 | 2000 | 

2010年代↑ | 2000年代 | 1990年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
2009 「スラムドッグ$ミリオネア」

スラムドッグ$ミリオネア

監督:ダニー・ボイル

インドを舞台にしたドラマ。舞台はインドの貧困街。言語の3分の1はヒンディー語だ。出演者の大半は、現地のスラムでスカウトされた。

イギリスの製作。アメリカ資本が入っていない映画の作品賞受賞は「ラストエンペラー」(伊英中の合作)以来、21年ぶりだった。監督は「トレインスポッティング」などを撮った英国人ダニー・ボイル。

物語の舞台はテレビのクイズ番組「クイズ$ミリオネア」。あと1問正解すれば、番組史上初のミリオネア(億万長者)になれるという少年が主人公。

収録スタジオ、警察での取り調べ、そして少年の生い立ちを交互に織り交ぜる。単なるサクセスストーリーに終わらず、インドの貧困層問題を浮き彫りにする。

作品賞のほか、監督賞など最多8部門に輝いた。

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2008 「ノーカントリー」

ノーカントリー

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監督:コーエン兄弟(ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン)

米テキサス州を舞台に、凶悪犯罪の恐怖と不条理を描いたサスペンス。 コ―マック・マッカーシーの小説「血と暴力の国」を、「ファーゴ」のコーエン兄弟が映画化した。 米国社会が抱える暴力性を、緊張感あふれる演出であぶり出した。

悪役の殺し屋は冷酷無比。「映画史上、最も恐ろしいキャラクター」と評された。 この役で助演男優賞を受賞したハビエル・ベルデムの怪演が強烈。

作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4冠に輝いた。

【物語】アメリカとメキシコの国境地帯で、麻薬取引の大金をめぐる惨劇が起きる。

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2007 「ディパーテッド」

ディパーテッド

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監督:マーティン・スコセッシ

マフィアに潜入した捜査官と警察に潜入したマフィアの攻防を描く。香港映画「インファナル・アフェア」シリーズのリメーク。

州警察が犯罪組織と戦いを繰り広げるボストン南部が舞台。秘密捜査官ビリー(ディカプリオ)は、コステロ(ニコルソン)が仕切る犯罪組織への潜入捜査を命じられる。ビリーがコステロの信頼を得る一方で、クールな犯罪者コリン(デイモン)はコステロの内通者として警察に潜入し、特別捜査課で出世する。やがて2人は正体が暴かれる危機に直面する。

ブラッド・ピットがプロデューサーの一人として参加した。 香港映画「インファナル・アフェア」にハリウッドでいち早く注目し、映画化権を手にした。しかし、役柄などの問題で出演はせず、裏方に徹した。

この年の作品賞レースでは、ディパーテッドが当初から有力視されていたが、サーチライト配給のコメディ「リトル・ミス・サンシャイン」が猛追し、台風の目のような存在になりつつあった。「リトル・ミス・サンシャイン」は不器用な家族の姿を描いたロードムービー。製作費約10億円で、ハリウッド映画としては中小規模ながら、口コミで絶賛の声が広がり、興行収入100億円を超える大ヒットになっていた。前哨戦の天王山となるPGA(プロデューサー組合賞)で作品賞を獲り、SAGアワード(俳優組合賞)でも、豪華俳優陣がそろったディパーテッドをおさえ、最高賞のアンサンブル・キャスト賞を制した。

しかし、オスカーでは、スケール感の大きいディパーテッドが勝った。(有宗良治

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2006 「クラッシュ」

クラッシュ

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監督:ポール・ハギス

人種間に横たわる差別感情を描いた群像劇。さまざまな人種が交わることなく暮らす大都会ロサンゼルスの日常風景を切り取った。

ポール・ハギス監督の初監督作

前哨戦で圧勝し、大本命と予想されていた「ブロークバック・マウンテン」を破り、世界を驚かせた。

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  • 「ブロークバック・マウンテン」
    監督:アン・リー
    ※同性愛者のカウボーイ(牛飼い)の物語。1960年代前半の米西部ワイオミング州の田舎が舞台。本年度最多となる8部門ノミネートを獲得した。
  • 「カポーティ」
    監督:ベネット・ミラー
    ※小説家トルーマン・カポーティの伝記。
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  • 「グッドナイト&グッドラック」
    監督:ジョージ・クルーニー
    ※放送ジャーナリストのエドワード・マロー氏と、赤狩りで名高いマッカーシー上院議員との対立を描いた。
  • 「ミュンヘン」
    監督:スティーヴン・スピルバーグ
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2005 「ミリオン・ダラー・ベイビー」

ミリオン・ダラー・ベイビー

監督:クリント・イーストウッド

孤独な高齢トレーナーと、貧しい女性ボクサーの絆を描く。

イーストウッド監督&主演のヒューマン・ドラマ。作品、監督、主演女優、助演男優賞の4冠に輝いた。

イーストウッド監督は本作以降、次々と秀作映画を生み出した。巨匠監督としての黄金時代を築いた。

【物語】小さなボクシング・ジムに入門を希望する31歳の女性マギー。 ジムの老トレーナーは最初は断わるものの、やがて才能を認め指導するようになる。

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  • 「アビエイター」
    監督:マーティン・スコセッシ
  • 「ネバーランド」
    監督:マーク・フォースター
  • 「Ray/レイ」
    監督:テイラー・ハックフォード
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  • 「サイドウェイ」
    監督:アレクサンダー・ペイン
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2004 「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

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監督:ピーター・ジャクソン

11部門受賞。『ベン・ハー』『タイタニック』と並ぶ、最多受賞のタイ記録となった。

ノミネートされた全ての部門を制覇。10部門以上での完全制覇はオスカー史上初。9部門全勝だった「恋の手ほどき」(1958年)と「ラスト・エンペラー」(1987年)の記録を更新した。

3部作の完結編。シリーズものの続編が作品賞を獲得したのは1974年の「ゴッドファーザー2」以来29年ぶりだった。

英国人の作家トールキン原作の冒険ファンタジー『指輪物語』を、 40歳過ぎのニュージーランド人、ピーター・ジャクソン監督が3作まとめて映画化した。総製作費は340億円。

第1部『ロード・オブ・ザ・リング』と第2部『二つの塔』は世界中で大ヒット。第3部『王の帰還』は、それらを上回る収入と評価を得た。

3時間23分の超大作

前二作よりも、各登場人物の内面が深く描かれた。スケール感もひたすら大きい。 最新の撮影技術や特殊効果が駆使され、前作以上に迫力を増した驚異的な映像となった。

シリーズ3作連続で作品賞ノミネート。第1作は4部門、第2作は2部門で受賞したが、いずれも作品賞は逃していた。

ジャクソン監督は受賞スピーチで「ファンタジーを認めてくれたアカデミー賞と、撮影を行った母国・ニュージーランド政府へお礼を言いたい」と感謝した。

【あらすじ】第1部で始まった、異なる種族から集まった9人の仲間の旅は、第2部(二つの塔)で世界の運命を担う戦いへと導かれた。そして第3部ではついに、主人公フロド(イライジャ・ウッド)が指輪を葬り去る時がやってきた。そのフロドを見守り続けるサム(ショーン・アスティン)をはじめ、指輪の力に心をむしばまれていくフロドを勇気付ける仲間たち。その姿に見る、真の強さとは…。

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  • 「シービスケット」
    監督:ゲイリー・ロス
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  • 「ロスト・イン・トランスレーション」
    監督:ソフィア・コッポラ
  • 「ミスティック・リバー」
    監督:クリント・イーストウッド
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  • 「マスター・アンド・コマンダー」
    監督:ピーター・ウィアー
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2003 「シカゴ」

シカゴ

監督:ロブ・マーシャル

傑作ミュージカル。1920年代のシカゴで、愛人を殺したスターの卵(レネー・ゼルウィガー)が、スキャンダルを逆手に取ってのし上がる。キャサリン・ゼタ・ジョーンズが助演女優賞を受賞した。

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  • 「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」
    監督:ピーター・ジャクソン
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  • 「めぐりあう時間たち」
    監督:スティーヴン・ダルドリー
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  • 「ギャング・オブ・ニューヨーク」
    監督:マーティン・スコセッシ
  • 「戦場のピアニスト」
    監督:ロマン・ポランスキー
2002 「ビューティフル・マインド」

ビューティフル・マインド

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監督:ロン・ハワード

ノーベル賞学者が陥った悲劇をもとに描くヒューマンドラマ。13部門ノミネートのファンタジー大作「ロード・オブ・ザ・リング」をおさえ、堂々の受賞。

主人公は天才数学者。幻覚症状を抱える。前年に「グラディエーター」で主演男優賞を獲得したラッセル・クロウが主演。

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2001 「グラディエーター」

グラディエーター

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監督:リドリー・スコット

西暦180年の古代ローマ帝国が舞台。皇帝に家族を殺され、奴隷の身として流刑された元将軍の復讐劇。「ベンハー」「スパルタカス」を彷彿とさせる一大スペクタクルで、スケール感があふれる。

撮影のために巨大なコロシアムを建設。その中で繰り広げられる生死をかけた生身の男の闘いは、CGに頼らない映画の醍醐味を感じさせる。

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  • 「ショコラ」
    監督:ラッセ・ハルストレム
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  • 「グリーン・デスティニー」
    監督:アン・リー
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  • 「エリン・ブロコビッチ」
    監督:スティーヴン・ソダーバーグ
  • 「トラフィック」
    監督:スティーヴン・ソダーバーグ
2000 「アメリカン・ビューティー」

アメリカン・ビューティー

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監督:サム・メンデス

一般人たちの日常を題材にしながらも、斬新で独創的な一作。シニカルなコメディ。ありふれた中流家庭の崩壊をブラックユーモアを交えて描き、現代アメリカ社会を浮き彫りにした。作品賞のほか、監督賞、主演男優賞など最多5部門を制した。

サム・メンデス監督のデビュー作。英国出身のメンデス監督は舞台演出家として活躍していたが、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督らのサポートや助言を受けて、本作を作りあげた。撮影前に脚本を読んだスピルバーグ監督は「一切リライトせず、この脚本通りに映画にするように」とアドバイスしたという。

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1990年代の作品賞

 | 1999 | 1998 | 1997 | 1996 | 1995 | 1994 | 1993 | 1992 | 1991 | 1990 | 

1990年~1999年

2000年代↑ | 1990年代 | 1980年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1999 「恋におちたシェイクスピア」

恋におちたシェイクスピア

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監督:ジョン・マッデン

スランプに陥った作家シェイクスピアが、男装して接近してきた娘と熱愛し、新境地を開拓するというコミカルなラブストーリー。 男性しか舞台に立てなかった時代に、富豪の娘が男装をして役者になるという独創的な物語になっている。



日本の女性たちからも絶大な支持を得た。

事前予想では、作品賞は「プライベート・ライアン」との声が多かった。PGA(全米プロデューサー組合賞)やクリティクス・チョイス賞などの主要な前哨戦でも、プライベート・ライアンが連勝していた。

しかし、超有力プロデューサーだったハーベイ・ワインスタイン率いる配給会社ミラマックスの大規模なキャンペーンの末、恋におちたシェイクスピアがオスカーの最高峰を勝ち取った。さらに、グウィネス・パルトロウの主演女優賞に、英国の演技派ジュディ・デンチが助演女優賞に輝くなど、計7部門を制した。

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  • 「プライベート・ライアン」
    監督:スティーブン・スピルバーグ
    ※第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦などを舞台に戦争の悲惨さを描いた。
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  • 「ライフ・イズ・ビューティフル」
    監督:ロベルト・ベニーニ
  • 「シン・レッド・ライン」
    監督:テレンス・マリック
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  • 「エリザベス」
    監督:シェカール・カプール
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1998 「タイタニック」

タイタニック

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監督:ジェームズ・キャメロン

ロマンチックな大叙事詩。

作品賞、監督賞など11部門を制し、「ベン・ハー」に並ぶ最多賞記録を作った。 1912年に沈没した豪華客船タイタニック号を舞台に、ラブストーリーを描く超大作。 実話の事故と、フィクションの恋物語を組み合わせた。

日本でも絶大な支持を獲得。とりわけ1990年代を生きた大勢の女性たちにとって「永遠の名作」として心に刻まれている。 世界の興行記録を塗り替え、日本でも配給収入や観客動員数の新記録を樹立した。 レオナルド・ディカプリオが絶大な人気を博し、「レオ様」として崇められた。

ジェームズ・キャメロン監督はそれまで、 「ターミネーター1、2」「エイリアン2」といった傑作SFアクション映画を手掛けてきた。 完璧主義で知られるキャメロン監督は本作で、実物大のタイタニック号を建造してしまった。 製作費が膨れ上がり、ハリウッドの製作会社も逃げ出しそうになったが、監督は自宅を抵当に入れてまで、自分のこだわりを貫いた。

最新技術を駆使したスペクタクル映像。 セリーヌ・ディオンが歌うテーマ曲。 そして何より、ロマンチックで悲しい恋物語に、観客は酔いしれた。

タイタニック号の金庫に保管されていた1枚の女性の絵。モデルだった老女が当時の様子を語り始める。 17歳のローズ(ケイト・ウィンスレット)は、親の決めた結婚が嫌で船から投身自殺を図る。だが、画家志望のジャック(レオナルド・ディカプリオ)に助けられ、恋に落ちるが……。

2023年に3Dリマスター版が劇場公開され、満席が続出した。

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  • 「恋愛小説家」
    監督:ジェームズ・L・ブルックス
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  • 「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」
    監督:ガス・ヴァン・サント
  • 「フル・モンティ」
    監督:ピーター・カッタネオ
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  • 「LA.コンフィデンシャル」
    監督:カーティス・ハンソン
1997 「イングリッシュ・ペイシェント」

イングリッシュ・ペイシェント

監督:アンソニー・ミンゲラ

作品賞、監督賞など9部門で受賞した。 第二次世界大戦下を舞台に、砂漠で出会ったハンガリー人の探検家とイギリス人の人妻との悲恋が過去と現在を巧みに交差させて描かれる。

大戦の末期に飛行機事故で大やけどを負った探検家(レイフ・ファインズ)は、イタリアの野戦病院に運ばれてくる。 看護婦(ジュリエット・ビノシュ)の献身的な看病で男は断片的に記憶を取り戻していく。 自分はハンガリーの伯爵で、砂漠で会った英国人の人妻(クリスティン・スコット=トーマス)と激しい恋に落ちたこと、そして…。

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1996 「ブレイブハート」

ブレイブハート

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監督:メル・ギブソン

イングランドの侵略に立ち向かったスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた壮大なスペクタクル史劇。 メル・ギブソンの監督2作目。 アメリカでも日本でも初公開時は大ヒットにいたらなかったが、正攻法の演出が高く評価された。

下馬評では「アポロ13」が有力と予想されていた。

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1995 「フォレスト・ガンプ/一期一会」

フォレスト・ガンプ/一期一会

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監督:ロバート・ゼメキス 第二次世界大戦後のベイビー・ブームの真っ只中に生まれたフォレスト・ガンプが主人公。 知的障害をものともせず、アメフト選手として活躍。 ベトナム戦争従軍後は、卓球全米チームのメンバーに。 実業界としても大成功し、億万長者になった。

ロックンロールの1950年代、ヒッピーの1960年代、ベトナム戦争の1970年代と、 アメリカの戦後をたくましく生き抜くガンプ。 苦しいときも優しい心を大切にして純粋に生きる姿が感動を呼んだ。



ガンプ役のトム・ハンクスは、2年連続で主演男優賞を受賞した。

この年の作品賞ノミネートは、強豪ぞろいだった。 「ショーシャンクの空に」「パルプ・フィクション」という映画史に残る傑作が名をつらねた。

ただ、フォレスト・ガンプは、ハリウッド歴代4位にあたる3億1700万ドル(約285億円)を稼ぎ出し、一大センセーションを巻き起こしていた。前哨戦でも圧勝しており、作品賞はおおむね確実視されていた。

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  • 「ショーシャンクの空に」
    監督:フランク・ダラボン
  • 「パルプ・フィクション」
    監督:クエンティン・タランティーノ
    ※タランティーノ監督の2作目であり、映画史に多大な影響を与えた画期的な最高傑作。ボスの情婦のお供を命じられたギャングや、八百長を持ち掛けられたボクサーなど3つのドラマが異なる時間軸で交錯する。 カンヌ国際映画祭で作品賞を受賞。
  • 「フォー・ウェディング」
    監督:マイク・ニューウェル
  • 「クイズ・ショウ」
    監督:ロバート・レッドフォード
1994 「シンドラーのリスト」

シンドラーのリスト

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監督:スティーブン・スピルバーグ

第二次世界大戦下、ナチスドイツに占領されたポーランドが舞台。 強制収容所に連行されたユダヤ人の命を救った実在の事業家シンドラーを描いた。 救われた人数は1100人以上と言われる。

自身がユダヤ系であるスティーブン・スピルバーグ監督が構想に10年以上を費やして映画化した。 スピルバーグ監督は1975年に「ジョーズ」で大成功。 以来、「未知との遭遇」「レイダース」「E・T」「インディ・ジョーンズ」など、記録破りのヒット性とクオリティーを兼ねた名作を次々に生んできた。 しかし、その功績・実力に外部の評価が追い付かず、オスカー受賞を逃してきた。 8年前にも、「カラーパープル」が11部門でノミネートされたが、受賞ゼロに終わった。

本作でついに作品賞や監督賞を獲得した。 3時間15分もあるが、長さを感じさせない。

白黒作品の作品賞は、「アパートの鍵貸します」以来、33年ぶりだった。

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  • 「父の祈りを」
    監督:ジム・シェリダン
    実際にイギリスで起きた冤罪(えんざい)事件で、北アイルランドのカトリック少数過激派アイルランド共和軍(IRA)のテロリストとして逮捕され、15年間投獄された10代の若者・ゲリー・コンロン(ダニエル・デイ・ルイス)の物語。父親までもがテロリスト容疑で逮捕され、2人は刑務所の同じ部屋に収容される。女優エマ・トンプソンが演じる弁護士の奮闘により晴れて無罪を勝ちとるものの、父親はすでに刑務所内で死亡していた。イギリスの司法、警察制度の不備と、父子の情愛を描いている。
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  • 「日の名残り」
    監督:ジェームズ・アイヴォリー
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  • 「ピアノ・レッスン」
    監督:ジェーン・カンピオン
  • 「逃亡者」
    監督:アンドリュー・デイヴィス
1993 「許されざる者」

許されざる者

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監督:クリント・イーストウッド

重厚な西部劇。イーストウッドが、監督、主演、プロデューサーを務めた。初のオスカー受賞(作品賞、監督賞)となった。

老いて農夫となった元ならず者のマニーが、若いカウボーイから賞金稼ぎの話を持ちかけられ、かつての相棒ネッドと共に三人で無法者を追う。町の治安を守るために必死になる保安官と老いたガンマンとの決闘を描いた。

イーストウッドはこの栄誉に安住することなく、2000年代、2010年代にも傑作映画を撮り続けた。

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1992 「羊たちの沈黙」

羊たちの沈黙

監督:ジョナサン・デミ

「スリラー映画はアカデミー賞で勝てない」というジンクスを久しぶりに打ち破った。 主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)を独占。 「或る夜の出来事」(1935年)、「カッコーの巣の上で」(1975年)に次いで、アカデミー史上3作目の快挙だった。 ゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)を獲得していた強敵候補「バグジー」に完勝した。

米国で公開されたのは、授賞式の約1年前の1991年2月。 早期に公開された作品は、印象が薄くなって不利になるというのが常識だった。

原作はトマス・ハリスのベストセラー小説。 女性FBI捜査官訓練生クラリスは、元精神科医でレクターを獄中に訪ね、異常連続殺人事件の犯人像のヒントを得ようとする。

殺人鬼レクターを演じたアンソニー・ホプキンスは、出演時間が20分以下なのに、助演でなく主演男優賞を受賞した。ジョディ・フォスターは2度目の主演女優賞を受賞。

また、「美女と野獣」がアニメ映画として史上初めて作品賞にノミネートされた。

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1991 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」

ダンス・ウィズ・ウルブズ

監督:ケビン・コスナー

白人の北軍将校と、ネイティブ・アメリカン(先住民)スー族との交流を描いた一大叙事詩。 西部劇が作品賞を受賞したのは「シマロン」以来じつに60年ぶり。ケビン・コスナーは初監督にして監督賞受賞。レッドフォードやビーティのように俳優としてよりも先に監督賞のオスカーを手に入れた。長さ約3時間。

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  • 「レナードの朝」
    監督:ペニー・マーシャル
  • 「ゴースト/ニューヨークの幻」
    監督:ジェリー・ザッカー
  • 「グッドフェローズ」
    監督:マーティン・スコセッシ
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  • 「ゴッドファーザーパートⅢ」
    監督:フランシス・フォード・コッポラ
1990 「ドライビングMissデイジー」

ドライビングMissデイジー

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監督:ブルース・ベレスフォード

意地っぱりな南部の老未亡人と、おかかえ運転手が、白人と黒人、主人と使用人、男と女の枠を越えて、しだいに心を通わせていく。 南部の黒人差別の実態を、さりげなく物語に織りこんだ。

監督賞にノミネートされず作品賞を受賞した初めての例となった。 ジェシカ・タンディは史上最年長80歳にして主演女優賞を受賞。

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1980年代の作品賞

 | 1989 | 1988 | 1987 | 1986 | 1985 | 1984 | 1983 | 1982 | 1981 | 1980 | 

1980年~1989年

1990年代↑ | 1980年代 | 1970年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1989 「レインマン」

レインマン

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監督:バリー・レヴィンソン

心温まる物語。ロードムービー。自閉症で40年以上も入院していた兄と、ずっと疎遠だった弟が主人公。弟は金儲けしか頭にない人物。自閉症という硬派のテーマに正面から取り組んだ。

兄弟は遺産相続の手続きをするため、米中西部シンシナティから西海岸ロサンゼルスへと長い旅をする。

兄レイモンドに扮したダスティン・ホフマンが主演男優賞に輝いた。

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  • 「ワーキング・ガール」
    監督:マイク・ニコルズ
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  • 「偶然の旅行者」
    監督:ローレンス・カスダン
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  • 「危険な関係」
    監督:スティーヴン・フリアーズ
  • 「ミシシッピー・バーニング」
    監督:アラン・パーカー
1988 「ラスト・エンペラー」

ラスト・エンペラー

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監督:ベルナルド・ベルトルッチ

英、伊、中国合作映画。作品賞のほか、監督、撮影、作曲など計9冠に輝いた。ノミネートされた9部門で全勝。このうち作曲賞では、テーマ曲を制作した坂本龍一氏が受賞者となった。

わずか3歳にして清朝最後の皇帝に任命された薄儀は、王朝崩壊以降も、大陸に侵略した日本軍によって満州国の傀儡皇帝として利用され、戦後は収容所生活を送る。 ベルトルッチ監督は、紫禁城に幽閉された男の物語というユニークな視点から彼の生涯を捉え、従来の大作とは一線を画した。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「ブロードキャスト・ニュース」
    監督:ジェームズ・L・ブルックス
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  • 「危険な情事」
    監督:エイドリアン・ライン
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  • 「月の輝く夜に」
    監督:ノーマン・ジュイソン
  • 「戦場の小さな天使たち」
    監督:ジョン・ブアマン
1987 「プラトーン」

プラトーン

監督:オリバー・ストーン

ベトナム戦争に参戦したストーン監督が自己の体験を映画化した作品。最前線の兵士たちが極限状態の中でいかに理性を失っていくかをリアルに描いた。監督賞も受賞した。

受賞スピーチでストーン監督は「重要なことは真実を掘り出すこと。人はすでにベトナム戦争の真実と記憶を忘れ始めており、私はこれを掘り起こしたかった」と語った。

【物語】名門大学を中退してベトナム行きを志願し、最前線の戦闘小隊に配属された兵士が苛酷な戦場で見たものは、想像を上回る現実だった。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「愛は静けさの中に」
    監督:ランダ・ヘインズ
     予告編(Amazonビデオ)→ ※聾(ろう)学校の教師と卒業生とのラブストーリー
  • 「眺めのいい部屋」
    監督:ジェームズ・アイヴォリー
  • 「ハンナとその姉妹」
    監督:ウディ・アレン
  • 「ミッション」
    監督:ローランド・ジョフィ
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1986 「愛と哀しみの果て」

愛と悲しみの果て

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監督:シドニー・ポラック

コーヒー園を経営するヒロインの恋と自立を描いた大河メロドラマ。

アフリカに魅せられたデンマークの女流作家アイザック・ディネーセンの自伝「アフリカの日々」に基づいている。 原作の出版は1937年。 オーソン・ウェルズら大物映画人が映画化を試みたが、あまりに叙事詩的過ぎて実現しなかった。 この難関に、 「ひとりぽっちの青春」「トッツィー」で2度オスカー監督賞にノミネートされたシドニー・ポラック監督が挑戦。大成功させた。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「蜘蛛女のキス」
    監督:ヘクトール・バベンコ
  • 「カラーパープル」
    監督:スティーヴン・スピルバーグ
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  • 「刑事ジョン・ブック/目撃者」
    監督:ピーター・ウィアー
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  • 「女と男の名誉」
    監督:ジョン・ヒューストン
1985 「アマデウス」

アマデウス

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監督:ミロス・フォアマン

35歳の若さで死んだ音楽家モーツァルトと、彼に嫉妬する宮廷作曲家サリエリの物語。天才と凡人の確執劇を、大胆に映画化した。

モーツァルトの数々の名曲をバックに、サリエリの独白という形でストーリーが展開。 「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「レクイエム」などの名曲誕生の過程も描いた。

サリエリ役のF・マーリー・エイブラハム、モーツァルト役のトム・ハルスはいずれも無名の俳優だった。2人そろって主演男優賞にノミネートされ、サリエリ役のエイブラハムが受賞した。

ミロス・フォアマン監督は、「カッコーの巣の上で」に続いて2度目の作品賞受賞となった(同じく監督賞も2度目の受賞)。

撮影は、フォアマン監督の故郷でもあるチェコの古都プラハで行われた。舞台となる18世紀のウィーンを再現。本物の美術品や建造物も映像に収められた。

【物語】18世紀後半、オーストリアの宮廷に仕える作曲家サリエリの前に、青年モーツァルトが出現。 モーツァルトは軽薄ながら、天才的な作曲の才能が備わっていた。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「キリング・フィールド」
    監督:ローランド・ジョフィ
  • 「ソルジャー・ストーリー」
    監督:ノーマン・ジュイソン
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  • 「インドへの道」
    監督:デヴィッド・リーン
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  • 「プレイス・イン・ザ・ハート」
    監督:ロバート・ベントン
1984 「愛と追憶の日々」

愛と追憶の日々

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監督:ジェームズ・L・ブルックス

姉妹のように仲の良い母娘オーロラとエマの強い絆を描いた愛と感動のドラマ。主要部門だけで5冠に輝いた。

ジェームズ・L・ブルックス監督は当時43歳。テレビの脚本家として活躍したあと映画に参入し、本作で初めて映画監督に挑んだ。脚本(脚色)も自ら手掛けた。

母親役と娘役の2人が主演女優賞にノミネートされ、母役のシャーリー・マクレーンが初受賞した。

元・宇宙飛行士役で助演男優賞を受賞したジャック・ニコルソンの怪演も話題になった。

<受賞スピーチ▼>


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1983 「ガンジー」

ガンジー

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監督:リチャード・アッテンボロー

非暴力主義を貫き、祖国インドを独立に導いたガンジーの生涯を壮大なスケールで描いた。「無抵抗・非服従」を通して人民の尊敬を一心に集めた偉人。

8部門を受賞。 主演男優賞を獲得したガンジー役のペン・キングズレーは映画デビュー作だった。本物とそっくりぶりが話題となった。

前年の「炎のランナー」に続いて、イギリス映画の作品賞となった。英国映画の作品賞は8度目。

対抗馬のSFファンタジー「E.T.」は興行収入の記録を塗り替える大ヒットを記録。世論の熱烈な支持を受けていた。しかし、大人の風格を好むアカデミー会員の総意には至らず、作品賞、監督賞、脚本賞を逃した。それでも技術部門で4つのオスカー(編集、作曲、視覚効果、音響効果)に輝いた。

<受賞スピーチ▼>


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1982 「炎のランナー」

炎のランナー

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監督:ヒュー・ハドソン

斬新な語り口のスポーツ映画、青春映画。感動もの。

2人の陸上選手の人生が交錯する。1924年パリ五輪出場を目指すユダヤ人青年と、キリスト教の聖職者の息子。 走る目的こそ違うが、あくまでもベストをつくす若者たちの姿を、新鋭ヒュー・ハドソン監督がドキュメント・タッチで描いた。

対抗馬の「レッズ」は12部門ノミネート、「黄昏」は9部門ノミネート。作品賞はこの2作の一騎打ちと予想されていた。ところが、7部門ノミネートの炎のランナーが作品賞をさらった。

プロデューサーは、敏腕デビッド・パットナム(英国人)。当時41歳。「小さな恋のメロディ」「ミッドナイト・エクスプレス」で既に大成功していたが、本作が代表作になった。この後も「キリング・フィールド 」「ミッション」などのオスカー関連作品を手掛けた。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「アトランティック・シティ」
    監督:ルイ・マル
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  • 「インディ・ジョーンズ~レイダース/失われたアーク《聖櫃》」
    監督:スティーヴン・スピルバーグ
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  • 「レッズ」
    監督:ウォーレン・ベイティ
  • 「黄昏」
    監督:マーク・ライデル
1981 「普通の人々」

普通の人々

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監督:ロバート・レッド・フォード

大スター俳優レッドフォードの監督デビュー作。アメリカの中流家庭の危機をテーマにしたシリアスなドラマ。

4人家庭の長男が事故死する。その兄の死に負い目を感じる弟、家族に冷たく接する母親、息子を心配する父親。家族関係が崩れていく。

<受賞スピーチ▼>


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  • 「レイジング・ブル」
    監督:マーティン・スコセッシ
    ※実在のボクシング王者を題材にした。
  • 「エレファント・マン」
    監督:デヴィッド・リンチ
    ※19世紀のロンドンを舞台にした実話ドラマ。白黒作品。米国でもそれなりに売れたが、なんといっても日本で爆発的な大ヒットを記録した。国内配給収入23億円で年間トップ。
  • 「テス」
    監督:ロマン・ポランスキー
  • 「歌え!ロレッタ愛のために」
    監督:マイケル・アプテッド
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1980 「クレイマー・クレイマー」

クレイマー・クレイマー

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監督:ロバート・ベントン

女性の自立に目覚めた妻に家出され、7歳の子供の世話と家事に振り回されることになった夫の奮戦記。子供の養育権をめぐる争いを描いた。

アメリカで急増し、社会現象化した「離婚」をテーマに、夫婦の新しい形が見なおされた。 それまではオスカーに否定的だったダスティン・ホフマンが受賞式では素直に喜び、感動的なスピーチを述べた。

<受賞スピーチ(監督賞と作品賞)▼>


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  • 「オール・ザット・ジャズ」
    監督:ボブ・フォッシー
    ※クレイマー・クレイマーと並ぶ9個ノミネート。うち技術系3部門で受賞
  • 「地獄の黙示録」
    監督:フランシス・フォード・コッポラ
    ※ベトナム戦争を題材にした壮大な叙事詩。
  • 「ノーマ・レイ」
    監督:マーティン・リット
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  • 「ヤング・ゼネレーション」
    監督:ピーター・イエーツ

1970年代の作品賞

 | 1979 | 1978 | 1977 | 1976 | 1975 | 1974 | 1973 | 1972 | 1971 | 1970 | 

1970年~1979年

1980年代↑ | 1970年代 | 1960年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1979 「ディア・ハンター」

ディア・ハンター

監督:マイクル・チミノ

戦争の狂気を容赦なく暴いた。3時間余の大作。

米ペンシルベニアの鉄工所で働く3人の若者たちが、ベトナム戦争に徴兵される。故郷での幸せな日々から一転、ベトナム戦争での恐ろしい体験を経て心を病んでいく若者たちの姿を描く。哀愁に満ちた叙事詩でもある。

ベトナム戦争の終結から3年後に公開された。同じく作品賞ノミネート「帰郷」、翌年の作品賞ノミネート「地獄の黙示録」(フランシス・コッポラ監督)とともに、本格的なベトナム戦争映画のパイオニアとなった。

1970年代のハリウッドで流行した「男たちのメロドラマ」(バディ・フィルム)の究極とも評された。

<予告編▼>


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1978 「アニー・ホール」

アニー・ホール

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監督:ウディ・アレン

恋愛コメディ映画。際どいジョークやウイットに富んだ会話が魅力。アレン監督が主演も務めた。

作品賞のほか、監督、主演女優(ダイアン・キートン)、脚本を獲り、主要4部門を制した。

ニューヨークのユダヤ系コメディアンが主人公。アレン監督の分身のようなキャラクターだ。女優の卵で歌手を志すアニー・ホール(ダイアン・キートン)と出会い、同棲を始める。だが、うまくいかない。

アレン監督は1935年ニューヨーク生まれ。コメディアンから俳優となり、1960年代末から監督も務める。本作の公開当時42歳だった。他の代表作は「ハンナとその姉妹」「カイロの紫のバラ」など。

当時、アレン監督と主演ダイアン・キートンは私生活でも恋愛関係にあった。その後、アレンは女優ミア・ファローと恋愛関係となり、ローナン・ファローらの子供をもうけた。しかし、関係が破綻し、ファローとの間の養女だったスン・イーと1996年に結婚した。

この年は、革新的なSF映画の名作「スター・ウォーズ」も作品賞にノミネートされた。多くの映画ファンが応援したが、大人向けのアニー・ホールに軍配が上がった。それでもスター・ウォーズは7部門の最多勝利を収めた。

<予告編▼>


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1977 「ロッキー」

ロッキー

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監督:ジョン・G・アビルドセン

アメリカン・ドリ一ム的な映画が、アメリカ建国200年の年のオスカーを制した。

落ち目のボクサーの挑戦を描くボクシング映画。

4回戦ボーイのボクサーが世界チャンピオンと対戦することになり、人生をかけてリングに上がる。

無名の俳優だったシルベスター・スタローンが、脚本を書き、映画会社に売り込んだ。映画会社は、有名な俳優を主演に起用することを望んだが、スタローンは自分が主演するという点を譲らなかった。

スタローンは公開当時30歳。製作費は100万ドルという低予算だったが、興行収入はその20倍以上の2億2500万ドルにのぼった。映画の成功物語が、そのままアメリカン・ドリ一ムの体現となった。

この年のオスカーは豊作だった。作品賞ノミネートの「大統領の陰謀」「タクシードライバー」「ネットワーク」はいずれも歴史的な名作として高い評価を得ている。

<予告編▼>


<テーマ曲▼>


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1976 「カッコーの巣の上で」

カッコーの巣の上で

監督:ミロス・フォアマン

架空の精神病院を舞台に、管理社会の人間抑圧と支配、そしてそれに対する抵抗を描いた。

原作はケン・キージー(1935~2001年)の同名の小説。1962年に発表され、若者たちの支持を得てベストセラーになった。

ブロードウェー公演で主演した俳優のカーク・ダグラスが映画化権を獲得したが、精神病院を舞台にした映画会社が二の足を踏み、プロジェクトが難航した。権利を譲り受けた息子の俳優マイケル・ダグラスが、共同製作者になり、原作発表から13年後に映画が完成した。

ミロス・フォアマン監督は旧チェコスロバキア出身。ソ連(現ロシア)による強権支配を嫌い、アメリカに移住した。

ジャック・ニコルソンと冷酷な看護師長を演じたルイーズ・フレッチャーが、ともに主演賞を受賞。監督賞と脚色賞も獲り、主要5部門を独占した。1935年の「或る夜の出来事」以来、41年ぶりの快挙。

ノミネート作品も個性豊かな顔ぶれだった。

<予告編▼>


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1975 「ゴッドファーザー PART II」

ゴッドファーザーPARTⅡ

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監督:フランシス・フォード・コッポラ

前作「ゴッドファーザー」の続編。2年前のオスカーで圧勝したばかりの前作に続いて作品賞に輝いた。

続編の映画が作品賞を獲るのは初めてだった。この後も、「ロード・オブ・ザ・リング3(王の帰還)」しかない。

また、元の映画と続編の両方が作品賞になった例は、これ以降も存在しない。

前作から3年後の公開となった。前作の主人公(父親)の青年時代(ロバート・デ・ニーロ)と、その息子(アル・パチーノ)の人生を描く。すなわち前作の「前日譚(たん)」と「後日譚」を兼ねている。

前作を上回る一大叙事詩として高く評価された。

16年後に続編「パート3」が製作され、こちらも作品賞、監督賞にノミネートされたが、受賞は逸した。

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1974 「スティング」

スティング

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監督:ジョージ・ロイ・ヒル

詐欺師たちの痛快なゲーム劇。ひねりの効いたストーリー展開が称賛された。悪党から金を奪うため、チンピラたちが次々と繰り出すアイデアも見どころ。大衆的な娯楽性と作家性の両立が素晴らしい。

「明日に向かって撃て!」で1970年作品賞にノミネートされたロイ・ヒルが監督を務めた。明日に向かって撃て!と同じく、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの黄金俳優コンビを起用した。

ファッション、セット、音楽など、あらゆる要素がスタイリッシュでおしゃれ。テーマ曲「エンターテイナー」も有名。

傑出した興行的成功を収めた。インフレ率などを加味した実質的な興行収入ランキングは、歴代の作品賞映画の中で、「風と共に去りぬ」「サウンド・オブ・ミュージック」「タイタニック」「ベン・ハー」に次いで堂々の4位。

【物語】1936年のシカゴが舞台。ギャングのボスに仲間を殺された詐欺師フッカー(ロバート・レッドフォード)は報復を決意。伝説の賭博師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)の助けを借り、大掛かりないかさまに引きずり込んでいく…。

<予告編▼>


<テーマ曲▼>


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1973 「ゴッドファーザー」

ゴッドファーザー

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監督:フランシス・フォード・コッポラ

濃密な人間ドラマ。マフィア一族の凄絶な抗争と家族の絆を描いた。

コッポラ監督は公開当時32歳。3作ほどの映画で監督を務めたが、どれ一つとしてヒットしていなかった。

しかし、本作ではイタリア系米国人ならではの濃密な家族愛、憎しみの振幅や、後の世代の恋愛、父権、贖罪(しょくざい)意識などを通して、壮大かつ上質な叙情詩に仕上げた。

公開当初は暴力、惨殺シーンが批判を浴びた。その後の暴力映画に比べれば、おとなしいものだが、当時は大きな衝撃だった。

原作は、マリオ・プーゾーの小説。2000万部を超える大ベストセラーとなった。

マーロン・ブランドが主演男優賞。コッポラ個人も監督賞こそ逸したが、脚色賞を獲得した。

哀愁漂うニーノ・ロータ作曲のテーマ曲も人気を集め、一大流行現象になった。

<予告編▼>


<テーマ曲▼>


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1972 「フレンチ・コネクション」

フレンチ・コネクション

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監督:ウイリアム・フリードキン

※刑事アクション映画。手に汗握る緊迫感にあふれる秀作。すさまじいカーチェイスのシーンが有名。

作品賞に加えて、監督賞(ウィリアム・フリードキン)、主演男優賞(ジーン・ハックマン)など計5部門を受賞した。

1961年にニューヨークで実際に起きた史上最大の麻薬密輸事件を題材にした。映像がリアル。時間の流れもリアル。意外性のある展開で飽きさせない。ドキュメンタリー的な撮影・編集が見どころ。移動撮影も絶賛された。犯罪都市の一面を見事にえぐり出した。

<予告編▼>


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1971 「パットン大戦車軍団」

パットン大戦車軍団

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監督:フランクリン・J・シャフナー

戦争スペクタクル。第二次世界大戦の米国の英雄パットン将軍の伝記。 偏屈で激情家ながら、優れた戦略家として活躍した人物の人生をダイナミックに描いた。

若き日のコッポラが脚本に参加し、脚本賞を受賞した。本物の戦車や多数のエキストラを動員して撮った大ロケーションは迫力満点。

主演のジョージ・C・スコットは、ノミネートの段階から拒否していたが、それでも主演男優賞を受賞し、辞退して大きな話題になった。

【物語】第二次世界大戦中の1943年の北アフリカ・チュニジア。米軍は独軍との初戦に完敗し、新たな司令官に激情型のパットンを送り込む。パットンは副官に冷静沈着なブラッドリー将軍(カール・マルデン)を採用し、エル・ゲッターの戦い、シチリア島攻略で戦果をあげた。だが、ノイローゼの兵士を殴り、欧州上陸を前に司令官を解任される。その後、再び前線へと戻ったパットンは、破竹の勢いでベルリンを目指した。

<予告編▼>


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  • 「ある愛の詩(うた)」
    監督:アーサー・ヒラー
    ※日本でも大成功した純愛映画。甘美な音楽も人気を集めた。
  • 「M★A★S★H マッシュ」
    監督:ロバート・アルトマン
    ※風刺のきいた戦争コメディ
  • 「大空港」
    監督:ジョージ・シートン
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    ※旅客機パニック劇。豪華キャスト。
  • 「ファイブ・イージー・ピーセス」
    監督:ボブ・ラフェルソン
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1970 「真夜中のカーボーイ」

真夜中のカーボーイ

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監督:ジョン・シュレシンジャー

辛ロの青春ドラマ。勧善懲悪や大団円(ハッピーエンド)の伝統的映画とは一線を画す「ニュー・ハリウッド(アメリカン・ニューシネマ)」の代表作。

カウボーイと詐欺師の2人の男が、都会からはじき出されていく様が、暗いトーンで語られる。

明るいタッチの有力作「明日に向って撃て!」をおさえた。

主演のジョン・ボイド、ダスティン・ホフマンのアンチヒーローぶりも見どころ。ニルソンの主題歌「うわさの男」もヒットした

【物語】テキサスの田舎町のカウボーイ青年ジョーは、「都会で金持ちの女たちに食わせてもらう」という夢を抱き、ニューヨークへやってくる。しかし、苦い現実に直面する。路上に立って同性愛者たちに身を売る“真夜中のカウボーイ”にまで転落してしまう。そんなとき、肺を病み、足の不自由なラッツォが手を差しのべる。

<予告編▼>


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  • 「明日に向って撃て!」
    監督:ジョージ・ロイ・ヒル
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  • 「Z」
    監督:コンスタンタン・コスタ=ガヴラス
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  • 「1000日のアン」
    監督:チャールズ・ジャロット
  • 「ハロー・ドーリー!」
    監督:ジーン・ケリー

1960年代の作品賞

 | 1969 | 1968 | 1967 | 1966 | 1965 | 1964 | 1963 | 1962 | 1961 | 1960 | 

1960年~1969年

1970年代↑ | 1960年代 | 1950年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1969 「オリバー!」

オリバー!

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監督:キャロル・リード

ミュージカル。英国と米国の合作。

孤児院を飛び出し、幸せをつかもうとする少年オリバーの冒険。

「第三の男」「落ちた偶像」で監督賞にノミネートされた英国出身の巨匠キャロル・リード監督にとって、初めてミュージカル。

ディケンズの古典『オリバー・ツイスト』を、巧みな映像と演出で新鮮なミュージカルに仕上げた。

「最後の華麗なミュージカル映画」と呼ばれた。1960年代の映画界では、「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエスト・サイド物語」「マイ・フェア・レディ」の大成功に象徴されるように、ミュージカルの大作が多く撮られた。しかし、1960年代末になると、その商業的な失敗作が相次ぎ、衰退が始まった。実際、本作オリバー!を最後に、2003年の「シカゴ」までミュージカルが作品賞を獲ることはなかった。

例年に比べて、やや低レベルの争いだったと評されている。

<挿入歌「Where Is Love?」▼>



<予告編▼>


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  • 「ファニー・ガール」
    監督:ウィリアム・ワイラー
    ※ミュージカル
  • 「冬のライオン」
    監督:アンソニー・ハーヴェイ
  • 「レーチェル レーチェル」
    監督:ポール・ニューマン
  • 「ロミオとジュリエット」
    監督:フランコ・ゼフィレッリ
1968 「夜の大捜査線」

夜の大捜査線

監督:ノーマン・ジュイソン

良質の犯罪捜査ミステリーであるとともに、人種差別の実像を描く社会派ドラマ。

黒人刑事が、米国南部ミシシッピ州で差別と闘いながら殺人事件を解決しようとする。

シドニー・ボアチエふんする理知的な黒人刑事と、ロッド・スタイガー演じる粗野な白人警官が主人公。殺人捜査の過程で人種偏見の壁を越えて協調する。

ロッド・スタイガーが主演男優賞を受賞した。しかし、シドニー・ポワチエは、ノミネートもされなかった。

ポワチエは、4年前に「野のユリ」で黒人男優として初めてオスカー主演男優賞を獲得。この作品での風格ある演技で、大スターの地位を不動のものとした。

やはりポワチエ主演で人種差別問題を扱った「招かれざる客」も作品賞にノミネートされた。この年のポワチエはさらに「いつも心に太陽を」でも主演として好演を見せており、票が割れたと言われている。

ジュイソン監督は「シンシナティ・キッド」「屋根の上のバイオリン弾き」「月の輝く夜に」「ザ・ハリケーン」などの名匠。

<予告編▼>


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  • 「俺たちに明日はない」
    監督:アーサー・ペン
  • 「卒業」
    監督:マイク・ニコルズ
    ※青春映画の傑作。サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」「ミセス・ロビンソン」などの名曲をバックに、悩める青年の成長がテンポよく描かれる。この作品が初主演作となるダスティン・ホフマンの名演が光る。
  • 「招かれざる客」
    監督:スタンリー・クレイマー
    ※米国の中流白人家庭での黒人差別問題の映画。世界的に有名な黒人医師(ポワチエ)が、旅先で結婚を約束した白人女性の家に招かれる。しかし両親(スペンサー・トレーシー、キャサリン・ヘプバーン)は、まさか黒人とは思わず…。
  • 「ドリトル先生不思議な旅」
    監督:リチャード・フライシャー
1967 「わが命つきるとも」

わが命つきるとも

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監督:フレッド・ジンネマン

重厚で格調高い歴史劇。16世紀イギリスの思想家トーマス・モアを描く。絶対権力者の国王ヘンリー8世に屈せず、信念を貫いたモアの人物像に焦点を当てた。

ジンネマン監督は、「地上(ここ)より永遠(とわ)に」(1953年)に続く作品賞&監督賞となった。

英国の舞台劇の映画化。モア役で主演男優賞を受賞したポール・スコフィールドは、根っからの舞台人であり、映画界では無名に近い存在だった。イギリス演劇界の底力を見せつけた。

夫婦喧嘩劇「バージニア・ウルフなんかこわくない」が本命視されていたが、オーソドックスな歴史劇に軍配が上がった。

<予告編▼>


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  • 「アメリカ上陸作戦」
    監督:ノーマン・ジュイソン
  • 「アルフィー」
    監督:ルイス・ギルバート
  • 「バージニア・ウルフなんかこわくない」
    監督:マイク・ニコルズ
  • 「砲艦サンパブロ」
    監督:ロバート・ワイズ
1966 「サウンド・オブ・ミュージック」

サウンド・オブ・ミュージック

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監督:ロバート・ワイズ

ミュージカル映画の最高傑作の一つ。「ドレミの歌」「エーデルワイス」などおなじみの曲がいっぱい。家族向け映画の最高峰。

「ウエスト・サイド物語」でミュージカル映画に新風を吹き込んだワイズ監督が、再び一大巨編をつくりあげた。

第2次大戦前夜のオーストリアが舞台。ナチス・ドイツの魔手を逃れ、トラップー家の7人の子供たちを連れてスイスに脱出した家庭教師マリアの物語。子供たちに歌を教える。

1956年にもドイツで映画化されたが、本作は、ロジャース&ハ一マスタインの名コンビによるブロードウェイ・ミュージカル化の映画版。

アルプスでの壮大なロケも見どころ。

<ドレミの歌▼>



<予告編▼>


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  • 「裏街・太陽の天使」
    監督:フレッド・コー
  • 「愚か者の船」
    監督:スタンリー・クレイマー
  • 「ダーリング」
    監督:ジョン・シュレシンジャー
  • 「ドクトル・ジバゴ」
    監督:デヴィッド・リーン
1965 「マイ・フェア・レディ」

マイ・フェア・レディ

監督:ジョージ・キューカー

ミュージカル大作。シンデレラ・ストーリーの代表的な映画として語り継がれている。豪華絢爛(けんらん)で楽しい。

オードリー・ヘプバーン演じる貧しい花売り娘が主人公。ロンドンの下町なまりを言語学者の指導で上品な英語に直し、貴婦人(フェア・レディ)に変身する。

アラン・ジェイ・ラーナーが脚本と作詞を、フレデリック・ロウが作曲を担当した。「運が良けりゃ」「踊り明かそう」など数々の名曲に彩られる。競馬場や舞踏会などのセットも称賛された。

英国の作家バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」を基にした米ブロードウェーの舞台劇を、ハリウッドが映画化した。

巨額の資金で映画化権を獲得したワーナーブラザース社は、舞台でイライザ役だったジュリー・アンドリュースではなく、ヘプバーンを起用した。

ヘプバーンならではの美しさに、観客は魅了された。

<挿入歌「一晩中踊れたら」▼>



<予告編▼>
  • 「メリー・ポピンズ」
    監督:ロバート・スティーヴンソン
    ※風に乗ってやってきたメリーが巻き起こす不思議な物語。「チム・チム・チェリー」などの歌が楽しい。
  • 「その男ゾルバ」
    監督:マイケル・カコヤニス
  • 「博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」
    監督:スタンリー・キューブリック
  • 「ベケット」
    監督:ピーター・グレンヴィル
1964 「トム・ジョーンズの華麗な冒険」

トム・ジョーンズの華麗な冒険

監督:トニー・リチャードソン

恋と冒険の人生喜劇 愛妻物語。自由奔放で義侠心あふれるトム・ジョーンズの恋の遍歴を描いた。

18世紀が舞台。大地主の邸宅に棄てられた男の子がトム・ジョーンズと名付けられ、養子として育てられる。

リチャードソン監督は、1960年代イギリス映画界の「フリー・シネマ」(怒れる若者たち)の代表的な存在だった。

歯切れのいいカッティングが心地好い。

2年連続でイギリス映画が作品賞をとった。原題は「Tom Jones」。

<予告編▼>


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  • 「アメリカアメリカ」
    監督:エリア・カザン
  • 「クレオパトラ」
    監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
  • 「西部開拓史」
    監督:ヘンリー・ハサウェイ 他
  • 「野のユリ」
    監督:ラルフ・ネルソン
1963 「アラビアのロレンス」

アラビアのロレンス

【配信:アマゾン

監督:デヴィッド・リーン

だれもが認める傑作。70ミリ映画が到達した究極の芸術作品として評価されている。「奇跡の映画」(スティーブン・スピルバーグ監督)とも呼ばれる。オスカー作品賞の歴代ランキング上位の常連。

英国映画。アラブの人たちから英雄とうたわれたイギリス人の波乱の半生を、大画面に描写した。第一次大戦下のアラビアを舞台に、将校ロレンスがアラブ民族統一のために奔走する。アラブとイギリスの間で板挟みとなる理想主義者の苦悩と挫折が描かれる。歴史物語としてだけでなく、人間ドラマとしても秀逸。

砂漠を捉えた神秘的な映像美と演出が絶賛された。主役ピーター・オトゥールなどの演技陣も圧巻。音楽も見事。

リーン監督に2度目の監督賞が与えられ、撮影賞、美術・装置賞など7部門で受賞した。

<予告編▼>


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  • 「アラバマ物語」
    監督:ロバート・マリガン
  • 「史上最大の作戦」
    監督:ケン・アナキン 他
  • 「戦艦バウンティ」
    監督:ルイス・マイルストン
  • 「The Music Man」
    監督:モートン・ダコスタ
1962 「ウエスト・サイド物語」

ウエスト・サイド物語

監督:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス

ミュージカル映画の最高傑作の一つ。

『ロミオとジュリエット』をニューヨークに置き換え、大胆にアレンジした。 下町の若者群像を活写。ハリウッドに新しい息吹を吹き込んだ。

大都会で人種的対立をする若者たちというテーマは、今なお古びることのない今日的なテーマ。 2021年に名匠スピルバーグ監督によって再び映画化された。

日本の若者たちにも絶大な影響を与えた。この映画を見て、ミュージカルの道を目指した人も多い。 「トゥナイト」や「アメリカ」などの歌は日本でも大ヒットした。最初の日本公開時は、銀座の映画館で1年以上の記録的なロングランとなった。

1960年代はミュージカル映画の黄金期だった。1970年代に入ると映画は特撮やCGの時代へ突入した。進化したリアリズムに、ファンタジーを描くミュージカルが合わなくなり、制作数も激減した。 しかし、1990年代から2000年代にかけて「エビータ」「シカゴ」「ムーランルージュ」などが大ヒットし、復調した。

<挿入歌「アメリカ」▼>



<予告編▼>


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  • 「ナバロンの要塞」
    監督:J・リー・トンプソン
  • 「ニュールンベルグ裁判」
    監督:スタンリー・クレイマー
  • 「ハスラー」
    監督:ロバート・ロッセン
  • 「ファニー」
    監督:ジョシュア・ローガン
1961 「アパートの鍵貸します」

アパートの鍵貸します

【配信:アマゾン

監督:ビリー・ワイルダー

サラリーマン・コメディ。昇進を目的に自分の部屋を上司の浮気用に貸し出すサラリーマンの、悲哀とおかしさを描いた。

ビリー・ワイルダー監督は、2度目の監督賞を受賞。プロデューサーとして作品賞、共同執筆者として脚本賞も獲り、計3つのオスカーを授与された。

<予告編▼>


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  • 「アラモ」
    監督:ジョン・ウェイン
  • 「エルマー・ガントリー/魅せられた男」
    監督:リチャード・ブルックス
  • 「サンダウナーズ」
    監督:フレッド・ジンネマン
  • 「息子と恋人」
    監督:ジャック・カーディフ
1960 「ベン・ハー」

ベン・ハー

【配信:アマゾン

監督:ウィリアム・ワイラー

史上最強のスペクタクル映画。

オスカー史上最多の11部門の受賞という金字塔を打ち立てた。現在も「タイタニック」「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」と共に最多記録を保持している。

ワイラー監督は3度目の監督賞。そのほか、主演男優賞(チャールトン・ヘストン)、助演男優賞も獲っており、技術部門にとどまらない勝ちぶりも見事。

古代ローマが舞台。ローマ帝国に支配されるユダヤ王族の若い当主ベン・ハー(架空の人物)の波乱に満ちた生涯を描いた。約3時間半の超大作。

ワイラー監督は、それまでのスケールだけ大きい史劇ではなく、カメラのフレームに収まるすべてに細心の注意を払い、リアリティーを出すことに成功した。

当時として史上最大の製作費が投じられており、全てがケタ違い。CGが発達していない時代であり、生身の人間がすべてをこなす。ロケによる撮影ならの生々しさと説得力は凄まじい。

とくに有名なのが、馬が牽引する「古代戦車」の競争シーン。主人公ベン・ハーが、復讐とプライドを懸けて宿敵メッサラと激突する。映画史上の不朽の一こまとして知られている。7.3ヘクタールの競技場は1年半かけて建設した。本番と練習用に戦車を18台つくった。動員したエキストラは延べ12万5000人。8分41秒のシーンのために、3カ月半の撮影を行った。

「グラディエーター」「スター・ウォーズ/エピソード1」などにも影響を与えた。

ベン・ハーと同時代に生きたイエス・キリストの受難劇とが、並行して描かれるのがポイント。一大宗教の誕生前夜の胎動が、観客に強烈な印象を残す。

【興行収入】米国の興行収入は1959年、1960年の2年連続で年間1位になった。 日本では1959年に7位、1960年は1位だった。

【あらすじ】ローマ帝国の支配下にあったユダヤの都エルサレム。この街の王族で若き大富豪のベン・ハーと、ローマ帝国の指揮官メッサラは幼なじみだった。しかし、権力欲に走ったメッサラによってベン・ハーは反逆罪のぬれぎぬを着せられ奴隷船に。母と妹まで投獄され、怒りに燃えたベン・ハーはメッサラに復讐を誓う。

<予告編▼>


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  • 「或る殺人」
    監督:オットー・プレミンジャー
  • 「アンネの日記」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「尼僧物語」
    監督:フレッド・ジンネマン
  • 「年上の女」
    監督:ジャック・クレイトン

1950年代の作品賞

 | 1959 | 1958 | 1957 | 1956 | 1955 | 1954 | 1953 | 1952 | 1951 | 1950 | 

1950年~1959年

1960年代↑ | 1950年代 | 1940年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1959 「恋の手ほどき」

恋の手ほどき

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監督:ヴィンセント・ミネリ

MGMミュージカル黄金期を築いた名製作者アーサー・フリード最後のミュージカル作品。生粋のパリジェンヌと金持ちの伊達男の恋を描いた。

10部門のオスカーを獲得した。この年は『手錠のままの脱獄』や『熱いトタン屋根の猫』など力作がそろい、乱戦模様だった。

<予告編▼>


<タイトル曲「Gigi(ジジ)」▼>


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  • 「熱いトタン屋根の猫」
    監督:リチャード・ブルックス
  • 「メイム叔母さん」
    監督:モートン・ダコスタ
  • 「旅路」
    監督:デルバート・マン
  • 「手錠のまゝの脱獄」
    監督:スタンリー・クレイマー
1958 「戦場にかける橋」

戦場にかける橋

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監督:デビッド・リーン

『西部戦線異状なし』以来、27年ぶりに戦争映画が作品賞を受賞した。

監督賞、脚色賞、主演男優なども獲り、計7冠。このほか、日本人俳優の早川雪洲(せっしゅう)が助演男優賞にノミネートされた。

太平洋戦争中の日本軍による鉄道橋工事をめぐる物語。日本軍と、捕虜になったイギリス兵が反目しながら工事を進める。

【背景】戦時下の1942年、日本軍は東南アジアで415キロの鉄道建設を強行。タイ、ミャンマー国境を結ぶ「泰緬(たいめん)鉄道」である。

ジャングルの中、シンガポールなどから英、蘭、豪の捕虜6万5000人が連行され、タイ、インドネシア、マレー半島の30万の労働者とともに強制労働させられた。

酷使と伝染病などで連合軍捕虜1万2000人以上、アジア人労働者5万人以上が死亡したといわれる。「南京大虐殺」「バターン死の行進」と並んで日本軍3大蛮行といわれる。

作曲賞に輝いたテーマ曲「クワイ河のマーチ」も有名。

<予告編▼>


<早川雪洲の出演シーン▼>



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  • 「サヨナラ」
    監督:ジョシュア・ローガン
    ※朝鮮戦争下、在日米軍人と日本人女性との悲恋の物語。ナンシー梅木が助演女優賞を受賞した。日本を含む東洋人の俳優として初めてのオスカーだった。
  • 「青春物語」
    監督:マーク・ロブソン
  • 「情婦」
    監督:ビリー・ワイルダー
  • 「十二人の怒れる男」
    監督:シドニー・ルメット
1957 「八十日間世界一周」

八十日間世界一周

【配信:アマゾン

監督:マイケル・アンダーソン

大冒険コメディ映画。飛行機もない時代に「80日間で世界一周できる」と2万ポンドを賭けた英国紳士とお供の物語。

原作は、1873年の名作小説。プロデューサーの一人であるマイケル・トッドの名前が冠された「トッドAOシステム」という最先端の大画面スクリーンが採用された。上映時間約3時間で世界観光を体験してもらう、というコンセプトだった。「ワイド・スクリーン」の映画で初の作品賞となった。

40人を越える当時の大スターたちが競演した。ホセ・グレコのフラメンコ・ダンスや、闘牛士ルイス・ドミンゲンの至芸も登場。ファンサービスぶりが大喝采を浴びた。

<予告編▼>


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  • 「友情ある説得」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「ジャイアンツ」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「王様と私」
    監督:ウォルター・ラング
    ※シャム王と王家の家庭教師としてやってきた英国人女性が心を通わせる。「シャル・ウィ・ダンス」が名高い。
  • 「十戒」
    監督:セシル・B・デミル
1956 「マーティ」

マーティ

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監督:デルバート・マン

庶民の恋愛ドラマ。心理のニュアンスをユーモラスな味付けで浮かび上がらせた秀作。

テレビのドラマが原作。デルバート・マン監督もテレビ出身。テレビ業界の映画への進出を示す事例となった。

ニューヨークのブロンクスで肉屋を営むイタリア系男性マーティと、女性教師が主人公。2人の独身を通じて、等身大の人たちの生活を浮き彫りにする。

長さ90分。それまでの作品賞で最も短い映画となった。

映画会社はこの作品を税金対策の一環として赤字を出すつもりで制作したが、試写で大好評だったため、製作費を上回る宣伝費を投じて大々的に売り出した。

カンヌ国際映画祭の最高賞「パルムドール」も受賞した。 オスカー作品賞とカンヌ最高賞の両方を獲得するのは極めて珍しく、 この後は、2020年に韓国の「パラサイト 半地下の家族」が達成するまで例がなかった。

<予告編▼>


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  • 「慕情」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「ミスタア・ロバーツ」
    監督:ジョン・フォード 他
  • 「ピクニック」
    監督:ジョシュア・ローガン
  • 「バラの刺青」
    監督:ダニエル・マン
1955 「波止場」

波止場

【配信:アマゾン

監督:エリア・カザン
マーロン・ブランド主演。

8部門で受賞。「風と共に去りぬ」「地上より永遠に」が持つ歴代最多記録(当時)に並んだ。

1950年代のアメリカ映画界を代表する傑作として評価されている。歴代オスカー作品賞のベスト投票ランキングでもトップ10に入ることが多い。

マーロン・ブランドは主演男優賞を獲得。4年連続でのノミネートにして、初の受賞となった。

波止場で働くボクサーくずれのテリーが、暴力で支配する顔役に兄を殺される。怒りに燃えた彼は、労働者を組織し顔役に立ち向かう。

カザン監督は赤狩りの時代、共産党員の仲間の名前を公表して映画監督の地位を確保し、批判を浴びた。
赤狩りは、米ソ冷戦下の1950年代、マッカーシー上院議員らが推し進めた共産主義者排斥運動。文化的影響の強いハリウッドの映画関係者にも疑いの目を向け、324人をリストアップしたブラックリストを作成。喜劇王チャーリー・チャプリンら映画人を次々と米映画界から追放した。
1952年4月、自身が共産党員だったカザンは「ハリウッドにおける共産主義者の破壊活動調査」のために開かれた連邦議会下院の非米活動委員会・聴聞会で「転向」を表明。さらに、かつての演劇仲間や映画関係者のうち自分が党員だったと信じる者8人の名前を挙げたのだった。

<予告編▼>


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  • 「掠奪された七人の花嫁」
    監督:スタンリー・ドーネン
  • 「ケイン号の叛乱」
    監督:エドワード・ドミトリク
  • 「喝采」
    監督:ジョージ・シートン
  • 「愛の泉」
    監督:ジーン・ネグレスコ
1954 「地上(ここ)より永遠(とわ)に」

地上より永遠に

監督:フレッド・ジンネマン

「風と共に去りぬ」と並ぶ8冠のタイ記録を成し遂げた。

性、売春、不倫、軍の腐敗など、当時のアメリカ映画ではタブーとされていたテーマを恐れずに描いた。 ハリウッドがより成熟したトピックに取り組む先例となった。

8冠のうち5つは主要部門(作品、監督、助演男優、助演女優、脚色)だった。 さらに主演男優賞も有力視されていたが、2人がノミネートされたこともあり、共倒れに終わってしまった。

本作で助演男優賞に輝いたフランク・シナトラは、キャリア低迷期が続いていたが、見事なカムバックを果たした。

日本軍による真珠湾攻撃が間近の1941年のハワイが舞台。米軍の兵舎内での人間ドラマを通して、軍隊組織の非人間性を暴く。

原作は1951年のベストセラー小説。 ジェームズ・ジョーンズ(当時30歳)が自ら兵舎駐在の経験に基づいて書いた。 政府機関への批判がご法度に近かったマッカーシー時代(赤狩り時代)にあって、 軍の矛盾をあぶりだす内容は、 センセーションを巻き起こした。

コロンビア(現ソニー・ピクチャーズ)の豪腕社長ハリー・コーンは、 赤狩りに臆することなく、大金を投じてこの小説の映画化権を取得。 アート系監督と見られていたフレッド・ジンネマンを監督として雇った。

【あらすじ】1941年夏、ハワイのスコフィールド米軍基地に、プルーイット2等兵(モンゴメリー・クリフト)が転属してくる。

ボクシングの名選手だった彼は、中隊長のホームズ大尉(フィリップ・オーバー)にボクシング部入りを勧誘されるが、断る。リングで友人を失明させて、やめると決意していたからだ。

これがきっかけで、プルーイットへのいじめが始まる。かばってくれるのは、同僚のマジオ(フランク・シナトラ)と、中隊長付のウォーデン曹長(バート・ランカスター)だけだった…。

閉鎖的な男社会の中の人間ドラマ。プルーイットとウォーデンのそれぞれの恋。この二つを軸に物語が進行する。

<予告編▼>


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  • 「ジュリアス・シーザー」
    監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
  • 「聖衣」
    監督:ヘンリー・コスター
  • 「ローマの休日」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「シェーン」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
1953 「地上最大のショウ」

地上最大のショウ

【配信:アマゾン

監督:セシル・B・デミル

サーカスの舞台裏を描いた。80年の歴史を誇り、1400人の座員を抱える世界最大の一座の人間ドラマ。

観客を理屈抜きに楽しませる娯楽映画の王道。スペクタクル大作。移動列車が転覆するシーンが有名。サーカス団による華麗なショーも魅力。テレビの台頭に対抗するため、映画ならではの派手さを前面に出した。

ただ、歴代の作品賞の受賞作の中でワーストの駄作という意見もある。

事前の予想では「真昼の決闘」が最有力と見られていた。オスカー歴史に残る番狂わせ(大どんでん返し)として有名。

作品賞以外では原案賞のみの受賞。作品賞受賞作が2冠のみという例は、2016年の「スポットライト」まで出てこなかった。

【あらすじ】年間興行ツアーの出発30分前を迎え、動物や機械などを次々と列車に積み込んでいくサーカス団。そこに突然、白バイを引き連れた高級車が登場する。乗っていたのは、世界一の空中曲芸師・大セバスチャン(コーネル・ワイルド)だった。

迎えたのは、座長ブラッド(チャールトン・ヘストン)。ブラッドは「何度かスターは出迎えたが、護衛付きは初めてだ」と呆れ顔で彼を受け入れ、座員に彼の交通違反の罰金を立て替えるように指示した。

経営陣は不況下での興行短縮を考えた。ショーの存在価値と座員の生活を守ろうとする座長ブラッドは、大セバスチャンの加入と黒字の限り続けることを条件に8カ月の巡業を、経営陣に認めさせる。

だが、そのためにはブラッドが愛する花形空中曲芸師ホリー(ベティ・ハットン)をトップスターの座から降ろす必要があった。

<予告編▼>


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  • 「真昼の決闘」
    監督:フレッド・ジンネマン
  • 「黒騎士」
    監督:リチャード・ソープ
  • 「赤い風車」
    監督:ジョン・ヒューストン
  • 「静かなる男」
    監督:ジョン・フォード
1952 「巴里(パリ)のアメリカ人」

巴里のアメリカ人

【配信:アマゾン

監督:ビンセント・ミネリ

ミュージカル。「雨に唄えば」とともに、ジーン・ケリーが主演するミュージカル映画の傑作と評される。 ケリーが名誉賞を受賞し、計7冠に輝いた。

「風と共に去りぬ」以来12年ぶりにカラー作品が作品賞を獲った。

アメリカの誇る作曲家の一人、ジョージ・ガーシュイン(1898~1973)が、1928年にヨーロッパ旅行中のパリの印象を綴った管弦楽曲「巴里のアメリカ人」。本作はこの名曲を中心に、ガーシュインのメロディーの数々を全編に散りばめた。

大戦後6年を経て活気を取り戻しつつある躍動するパリのイメージを、音楽、色彩、舞踊が一体となって描き出していく。ルノワール、ユトリロ、ゴッホ、ロートレック、ルソーなどの名画をバックに17分も踊りまくる幻想バレエのシーンは見事

本作がデビューのレスリー・キャロンは、主演ジーン・ケリーがパリでスカウトした。

【あらすじ】第二次世界大戦中、パリに駐屯したことのあるアメリカ人、ジェリー・マリガン(ジーン・ケリー)は、画家になりたい一心でパリを訪れる。

彼は美しいバレリーナ、リズ(レスリー・キャロン)に心を奪われるが、皮肉にも彼女はジェリーの友人アンリ(ジョルジュ・ゲタリー)のフィアンセだった。パリジェンヌと生っ粋のアメリカ人の恋は実るのか?。

<予告編▼>


<挿入歌「アイ・ガット・リズム」▼>


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  • 「暁前の決断」
    監督:アナトール・リトヴァク
  • 「陽のあたる場所」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「クォ・ヴァディス」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「欲望という名の電車」
    監督:エリア・カザン
1951 「イヴの総て」

イヴの総て

【配信:アマゾン

監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ

ブロードウェイの演劇界の内幕を描いた。

過去最多となる14個のノミネートを獲得。「風と共に去りぬ」の13ノミネートの記録を塗り替えた。 このうち、作品、監督、助演男優賞など6部門で受賞した。

主演女優賞では、本作から大本命のベティ・デイビスと、イヴ役のアン・バクスターの2人がノミネートされた。 支持票が割れたためか、どちらも受賞ならず。「ボーン・イエスタデイ」のジュディ・ホリデイにさらわれるどんでん返しが起きた。

マンキーウィッツ監督は、2年連続の監督賞という快挙。さらに、前年の脚本賞に続いて脚色賞を獲った。

【あらすじ】ブロードウェーのトップ女優マーゴに憧れ、近づいた女優志願の若い女性イヴが、策を弄(ろう)して、その座を奪い取ろうとする。

追い詰めるイヴ。感情のバランスを壊していくマーゴ。緊迫した心理サスペンスに、イヴの才能と下心をともに見抜いて近づく演劇評論家や、2人の運命の重要な鍵を握る劇作家夫婦などがからみ、物語が進行する。

<予告編▼>


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  • 「ボーン・イエスタデイ」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「花嫁の父」
    監督:ヴィンセント・ミネリ
  • 「キング・ソロモン」
    監督:コンプトン・ベネット 他
  • 「サンセット大通り」
    監督:ビリー・ワイルダー
1950 「オール・ザ・キングスメン」

オール・ザ・キングスメン

監督:ロバート・ロッセン

政治権力の暗部をえぐった秀作。

政治家の腐敗を批判して州知事になった男が、次第に独裁者になっていく物語。参謀になった元新聞記者の苦悩を通して描かれる。

作品賞、主演男優賞、助演女優賞の3冠。ロバート・ロッセン監督は本作で見せた批判精神によって保守派からにらまれ、監督賞ノミネートから外された。恐怖の「赤狩り時代」が、ハリウッドに本格的に到来しようとしていた。

【モデルは実在の政治家】主人公のモデルは、ヒューイ・ロングという実在のアメリカの政治家である。

1929年10月から大恐慌に突入したアメリカでは白人中産階級でさえもが職を失い飢え始めた。そんな時期にロングは南部のルイジアナ州知事になり、次に民主党の上院議員になって大統領を目指すようになる。

1932年の大統領選では、はじめは同じ民主党のフランクリン・ルーズベルトを支持したが、ルーズベルトが当選すると「反ニューディール」の姿勢を明らかにする。

「石油財閥による政治支配をやめさせよ。ニューヨークの大富豪たちによる独占体制を打ち倒せ」と激しく訴えて国民の熱烈な支持を受けた。いわゆる「ポピュリスト」である。

すべての作品賞ノミネートが白黒作品だった最後の年となった。

<予告編▼>


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  • 「戦場」
    監督:ウィリアム・A・ウェルマン
  • 「女相続人」
    監督:ウィリアム・ワイラー
    ※遺産相続をめぐる愛憎ドラマ。最多の8ノミネートを獲得。主演女優賞や衣装デザイン賞などの4部門に輝き、最多受賞となった。
  • 「三人の妻への手紙」
    監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
  • 「頭上の敵機」
    監督:ヘンリー・キング

1940年代の作品賞

 | 1949 | 1948 | 1947 | 1946 | 1945 | 1944 | 1943 | 1942 | 1941 | 1940 | 

1940年~1949年

1950年代↑ | 1940年代 | 1930年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1949 「ハムレット」

ハムレット

監督:ローレンス・オリビエ

シェークスピア劇の映画化の最高傑作と評される。

イギリス映画。ハリウッド・スタジオ以外の映画として初めて作品賞を受賞した。主演男優賞も獲り、計4冠。

英国史上最強の名優の一人、ローレンス・オリビエが自ら監督と主演を務め、プロデューサーも単独で務めた。オリビエによるシェークスピア3部作「ヘンリー五世」(1945年)、「リチャード三世」(1955年)の一つ。

<予告編▼>


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  • 「ジョニー・ベリンダ」
    監督:ジーン・ネグレスコ
  • 「赤い靴」
    監督:マイケル・パウエル 他
  • 「蛇の穴」
    監督:アナトール・リトヴァク
  • 「黄金」
    監督:ジョン・ヒューストン
1948 「紳士協定」

紳士協定

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監督:エリア・カザン

人種差別と偏見について探求する社会派ドラマ。

舞台はニューヨーク。主人公(グレゴリー・ペック)は、ユダヤ人であることを隠して上流階級のホテルで働くことになる。ホテルの社交界に入り込みながら、差別や偏見に直面する。

<予告編▼>


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  • 「気まぐれ天使」
    監督:ヘンリー・コスター
  • 「十字砲火」
    監督:エドワード・ドミトリク
  • 「大いなる遺産」
    監督:デヴィッド・リーン
  • 「三十四丁目の奇蹟」
    監督:ジョージ・シートン
1947 「我等の生涯の最良の年」

我等の生涯の最良の年

監督:ウィリアム・ワイラー

戦場から戻ってきた3人の男を描いた。第二次世界大戦に勝利した米国だったが、元兵士たちは家庭や職場で様々な悩みや問題を抱えてきた。

爆撃手だった青年フレッド、元銀行員の陸軍軍曹のアル、両手を失った若い水兵のホーマー。戦勝国が負った深い傷を浮き彫りにした。

ワイラー監督は既にオスカーに輝いていた大物映画人だったが、記録映画撮影のために従軍した。戦争の恐ろしさを身をもって経験し、復員後の一作目として本作に挑んだ。

<予告編▼>


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  • 「ヘンリィ五世」
    監督:ローレンス・オリヴィエ
  • 「素晴らしき哉、人生!」
    監督:フランク・キャプラ
  • 「剃刀の刃」
    監督:エドマンド・グールディング
  • 「子鹿物語」
    監督:クラレンス・ブラウン
1946 「失われた週末」

失われた週末

【配信:アマゾン

監督:ビリー・ワイルダー

映画史上初めて、アルコール依存症という問題に正面から向き合った作品と言われる。 中毒患者の心理と行動を緻密に緊迫感あふれるタッチで描いたことが評価された。

明るいハッピーエンド作品が映画の主流だった時代。酔っ払いといえば、笑いを誘う滑稽な存在だった。

名匠ビリー・ワイルダー監督に、初めてのオスカーをもたらした。 当時39歳。すでに脚本家として4度ノミネートされ、さらに前作「深夜の告白」は作品賞、監督賞にもノミネートされていた。 本作では、作品賞に加えて、監督賞、脚本賞も獲った。

ワイルダー監督はこの12年前の1934年にナチ台頭のドイツを逃れ、アメリカに亡命した。

本作の後も20年にわたって「サンセット大通り」「アパートの鍵貸します」などのワイルダー作品がオスカーをにぎわせた。

【あらすじ】物語の舞台はニューヨーク。売れない作家ドンは重度のアルコール依存症に陥っている。3年来の恋人の女性ヘレンは、懸命に彼を世話し、立ち直らせようとする。しかし、ドンは口実をつくってはバーに入り浸り、買った酒は巧みに隠した。やがて倒れて中毒患者の収容所に入れられる。怖くなって逃げだすが、禁断症状と幻覚に苦しめられる。

<予告編▼>


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  • 「錨を上げて」
    監督:ジョージ・シドニー
  • 「聖メリーの鐘」
    監督:レオ・マッケリー
  • 「ミルドレッド・ピアース」
    監督:マイケル・カーティス
  • 「白い恐怖」
    監督:アルフレッド・ヒッチコック
1945 「我が道を往く」

我が道を往く

【配信:アマゾン

監督:レオ・マッケリー

主演:ビング・クロスビー

ニューヨークの下町のオンボロ教会の神父が、近所の悪童連中を合唱やスポーツで善導していく。ヒューマニズムの映画作家レオ・マッケリー監督が最も円熟味を発揮した一作と評されている。

ささやかな庶民の生き方や牧師の善意、目標のために全身全霊を傾ける姿が共感を呼んだ。戦時下の観客に心なごむ一瞬を与えた。

敗戦後の荒廃した日本でも1946年に公開され、若者らの胸を打った。

【あらすじ】ニューヨーク下町の貧乏な教会に着任したオマリー神父は、不良少年を集めて聖歌隊を組織する。自作楽譜の出版など教会再建に向けて次々と打つ手は成功する。教会が火災に遭うという危機にも、神父はめげない。

<予告編▼>


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  • 「深夜の告白」
    監督:ビリー・ワイルダー
  • 「ガス燈」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「君去りし後」
    監督:ジョン・クロムウェル
  • 「ウィルソン」
    監督:ヘンリー・キング
1944 「カサブランカ」

カサブランカ

【配信:アマゾン

監督:マイケル・カーティス

※誰もが認める歴史的名作であり、永遠のラブロマンス。珠玉の名セリフでも知られる。

恋愛映画の史上ナンバー1に選ばれ続けている。オスカー作品賞の受賞作ランキングでも、「ゴッドファーザー」などと常に歴代1位を争っている。脚本も秀逸で、米脚本家組合(WGA)が2006年に選んだ歴代の脚本ランキングで1位になった。

オスカーでは作品賞に加えて、監督賞、脚色賞、アービング・G・サルバーグ賞を受賞し、計4冠。

第二次大戦下のモロッコを舞台に、揺れ動く男女の愛と勇気を描いた。ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン主演。

【物語】1940年、フランス領モロッコの首都カサブランカ。酒場を経営する米国人リック(ハンフリー・ボガート)は、パリで別れた恋人イルザ(イングリッド・バーグマン)と再会する。だが、彼女はレジスタンスのリーダー(ポール・ヘンリード)の妻だった。

<予告編▼>

<挿入歌「時の過ぎゆくままに」▼>


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  • 「誰が為に鐘は鳴る」
    監督:サム・ウッド
  • 「天国は待ってくれる」
    監督:エルンスト・ルビッチ
  • 「町の人気者」
    監督:クラレンス・ブラウン
  • 「軍旗の下に」
    監督:ノエル・カワード 他
  • 「キュリー夫人」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「The More the Merrier/ザ・モア・ザ・メリア」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「牛泥棒」
    監督:ウィリアム・A・ウェルマン
  • 「聖処女」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「ラインの監視」
    監督:ハーマン・シュムリン
1943 「ミニヴァー夫人」

ミニヴァー夫人

【配信:アマゾン

監督:ウィリアム・ワイラー

第二次世界大戦下のイギリスの銃後生活を描いた。 ナチスドイツ軍の空襲を受けるロンドンで、 夫人がさまざまな不安や不自由を抱えながら、 めげずにしっかりと生きている姿をドラマ化した。

原作は、英国の新聞に連載された随筆。

戦意高揚に役立つとして、米ルーズベルト大統領は公開を急がせたという。 実際、リアルな描写もあいまって、戦争中のムードにはまって大成功した。

若き名匠としてハリウッドを支えていたウィリアム・ワイラー監督は、 本作でついに初のオスカーを獲得した。 当時40歳ながら、すでに6本の作品賞ノミネートを出しており、 受賞が待望されていた。

ワイラー監督は、本作の後の1942年に米陸軍に加わった。 帰還後、戦争の「負」の面を描いた「我等の生涯の最良の年」で再びオスカーを総なめすることになる。

<予告編▼>


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  • 「潜水艦轟沈す」
    監督:マイケル・パウエル
  • 「嵐の青春」
    監督:サム・ウッド
  • 「偉大なるアンバーソン家の人々」
    監督:オーソン・ウェルズ
  • 「The Pied Piper」
    監督:アーヴィング・ピシェル
  • 「打撃王」
    監督:サム・ウッド
  • 「心の旅路」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「希望の降る街」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
  • 「Wake Island」
    監督:ジョン・ファロー
  • 「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」
    監督:マイケル・カーティス
1942 「わが谷は緑なりき」

わが谷は緑なりき

監督:ジョン・フォード

「市民ケーン」が作品賞をとれなかった年として有名だ。市民ケーンのモデルとなった新聞王ハーストのネガティブ・キャンペーンによって、「わが谷は緑なりき」が漁夫の利を得たというイメージが強い。

とはいえ、「わが谷は緑なりき」も、映画史上最大の巨匠ジョン・フォードの傑作群の一つとして当時から讃えられていたのも事実。

ジョン・フォードは生涯において、7個のオスカーを獲得した。 このうち監督賞の受賞回数は4回であり、史上最多記録を保持ている。

しかし、作品賞となると、受賞したのは本作だけだった。西部劇の傑作「駅馬車」も、戦後の代表作となる「静かなる男」も、作品賞はノミネートどまりだった。

そんな本作は、フォードの得意分野として知られる西部劇ではなく、郷土劇。19世紀末のウェールズが炭鉱町が舞台。平凡な一家の人生を、静かなタッチで情感豊かに描いた。

「家族の団結」というテーマ性も、戦時中のムードと相性が良かった。

なお、監督賞は、前年に続きジョン・フォードの2年連続受賞となった。

<ジョン・フォード>アイルランド系米国人。1895年2月1日、米メーン州生まれ。本名ショーン・アロイシャス・オフィーニー。大道具係、俳優、助監督を経て、2017年に監督に。デビュー作から遺作「荒野の女たち」(1966年)まで監督作はなんと137本。すべては職人技のたまもの。1973年、癌により死去。享年78歳。

<予告編▼>


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  • 「市民ケーン」
    監督:オーソン・ウェルズ
  • 「塵に咲く花」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「幽霊紐育を歩く」
    監督:アレクサンダー・ホール
  • 「Hold Back the Dawn」
    監督:ミッチェル・ライセン
  • 「偽りの花園」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「マルタの鷹」
    監督:ジョン・ヒューストン
  • 「我が道は遠けれど」
    監督:アーヴィング・ラパー
  • 「ヨーク軍曹」
    監督:ハワード・ホークス
  • 「断崖」
    監督:アルフレッド・ヒッチコック
1941 「レベッカ」

レベッカ

監督:アルフレッド・ヒッチコック

スリラーの巨匠ヒッチコック監督のサイコ・スリラー映画。有力候補だったチャップリン監督の「独裁者」に競り勝った。

不安にさいなまれる女性の心理を、ヒッチコックが様々な小道具とリアクション撮影で描いていく。 ゆったりとしたシーンの中にショック演出を加え、ドキンとさせられる。

ヒッチコック監督は生涯、個人として5回オスカーにノミネートされた。 いずれも監督賞だったが、本作「レベッカ」が最初だった。 惜しくも監督賞の受賞は逃したが、作品賞は獲った。 (ただし、本作ではプロデューサーを兼務していなかったため、『受賞者』にはならなかった)

英国人のヒッチコックは26歳で監督デビューし、1934年「暗殺者の家」で成功してからスリラー専門となった。 1938年、イギリスから黄金期の米国ハリウッドへと拠点を移した。本作が米国での第1弾の作品だった。

第2弾となる「海外特派員」も本年の作品賞にノミネートされた。

映画評論家の淀川長治さんによれば「ヒッチコックはアメリカで自分をお披露目するにあたり、美と恐怖の隣り合わせの疑惑とロマンを『レベッカ』で、連続アクション風のアクションを『海外特派員』で鮮やかに見せた」という。

プロデューサーのデビッド・セルズニックは、前年の「風と共に去りぬ」に続く受賞で作品賞2連覇となった。

<アルフレッド・ヒッチコック>1899年、ロンドン郊外レインストーンで生まれる。15歳で父を失い、働きながらロンドン大美術学部聴講生となった。20歳で字幕デザイナーとして映画界に入った。1980年死去。享年80歳。

【あらすじ】米国の若い女性が、イギリスの富豪と出会い、2度目の妻となる。 彼の荘園に行くと、邸内には前妻レベッカの思い出に満ちていた。 不気味な家政婦から嫌がらせを受け、レベッカの従兄につきまとわれる。

<予告編▼>


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  • 「凡てこの世も天国も」
    監督:アナトール・リトヴァク
  • 「海外特派員」
    監督:アルフレッド・ヒッチコック
  • 「怒りの葡萄」
    監督:ジョン・フォード
  • 「独裁者」
    監督:チャールズ・チャップリン
  • 「恋愛手帖」
    監督:サム・ウッド
  • 「月光の女」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「果てなき航路」
    監督:ジョン・フォード
  • 「我等の町」
    監督:サム・ウッド
  • 「フィラデルフィア物語」
    監督:ジョージ・キューカー
1940 「風と共に去りぬ」

風と共に去りぬ

【配信:アマゾン

監督:ヴィクター・フレミング

「不朽の名作」といえば、この映画を思い浮かべる人も多いだろう。 アメリカに限らず世界で「感動映画」の代名詞のように語り継がれてきた。アカデミー賞は10部門受賞。

大物プロデューサー、デビッド・O・セルズニックが、小説家マーガレット・ミッチェル女史から映画化権を獲得。 ビクター・フレミングを監督に起用し、当時としては破格の製作費600万ドルを投じて作り上げた。

南北戦争が始まる直前の南部ジョージア州。 大農場主の娘スカーレットの波乱万丈の人生が圧倒的スケールで描かれた。

野性的なバトラーを演じたクラーク・ゲーブル、そしてスカーレット役ビビアン・リーの名演。 アトランタ市街の大炎上など見せ場シーンの迫力も圧巻。 カラーの彩色技術も称賛された。 マックス・スタイナーの音楽なども見事にマッチ。

インフレ率を加味した興行収入(北米)は、歴代1位を維持している。

1939年の作品だが、日本で最初に公開されたのは戦後の1952年。 多くの人たちが、豪華な衣装やビビアン・リーの美しさに魅了された。 その後も数年おきに映画館で再上映。 1967年のリバイバルでは、東京の映画館に連日長蛇の列ができた。 洋画の代表的な名作として記憶に残された。

<予告編▼>

<劇伴「タラのテーマ」▼>


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 説明ページ→

  • 「愛の勝利」
    監督:エドマンド・グールディング
     予告編(字幕なし)→
  • 「チップス先生さようなら」
    監督:サム・ウッド
  • 「邂逅」
    監督:レオ・マッケリー
  • 「スミス都へ行く」
    監督:フランク・キャプラ
  • 「ニノチカ」
    監督:エルンスト・ルビッチ
  • 「廿日鼠と人間」
    監督:ルイス・マイルストン
     予告編(字幕なし)→
  • 「駅馬車」
    監督:ジョン・フォード
  • 「オズの魔法使」
    監督:ヴィクター・フレミング
     予告編(Amazonビデオ)→
    ※テーマ曲「オーバー・ザ・レインボー(虹の彼方に)」でおなじみのジュディ・ガーランド主演の古典的名作。
  • 「嵐が丘」
    監督:ウィリアム・ワイラー

1930年代の作品賞

 | 1939 | 1938 | 1937 | 1936 | 1935 | 1934 | 1933 | 1932 | 1931 | 1930 | 

1930年~1939年

1940年代↑ | 1930年代 | 1920年代↓

作品賞
受賞 ノミネート
1939 「我が家の楽園」

我が家の楽園

【配信:アマゾン

監督:フランク・キャプラ

社会風刺のきいた喜劇。ハメを外した滑稽さの中に、ヒューマニズムが貫かれている。

軍需景気を見越して、今で言う地上げに乗り出している男と、買収に応じない頑固な老人一家のテンヤワンヤを描いた。個性派ぞろいのファミリーが笑いを誘う。ドタバタながらおおらか。同時に現代社会の矛盾をつく。

フランク・キャプラは本作で3度目の監督賞に輝いた。キャプラ監督の理想主義や平等主義が反映されている。

<フランク・キャプラ>1897年、イタリアのシチリア島生まれ。6歳の時に家族とともに米国へ移住した。新聞の売り子や酒場でバンジョーをひいたりしながら、苦学して、カリフォルニア工科大学を卒業。1921年映画界に入る。喜劇の監督などをへて「或る夜の出来事」(1934年)でアカデミー監督賞を受賞した。以後も「オペラ・ハット」と本作で計3度同賞を受賞した。
このほか、ジェームス・スチュアートを主役とした「スミス都へ行く」「素晴らしき哉、人生!」など社会風刺とヒューマニズムを感じさせる多くの作品を撮り、米国映画に一時代を築いた。
1991年9月3日、老衰のため、カリフォルニア州ラキンタの自宅で死去した。享年94歳。

<予告編▼>


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  • 「テスト・パイロット」
    監督:ヴィクター・フレミング
  • 「ピグマリオン」
    監督:アンソニー・アスクィス 他
  • 「黒蘭の女」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「大いなる幻影」
    監督:ジャン・ルノワール
  • 「四人の姉妹」
    監督:マイケル・カーティス
  • 「城砦」
    監督:キング・ヴィダー
  • 「少年の町」
    監督:ノーマン・タウログ
  • 「世紀の楽団」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「ロビンフッドの冒険」
    監督:マイケル・カーティス 他
1938 「ゾラの生涯」

ゾラの生涯

監督:ウィリアム・ディターレ

フランス文豪エミール・ゾラの伝記。ゾラは19世紀から20世紀初頭に活躍した自然主義作家。

とくに、ゾラが深くかかわった「ドレフュス事件」にスポットがあてられている。

ドレフュス事件は、フランスで起きた冤罪事件。 1894年、フランス陸軍のユダヤ人将校アルフレッド・ドレフュスが、スパイ容疑で逮捕され、軍事裁判で終身刑を言い渡された。 背景にはユダヤ人への差別があった。 怒ったゾラは、大統領を弾劾する声明を出す。 ゾラを中心とする「人権擁護派・共和派」と、 「軍部・反ユダヤ主義者」らの間で論争が起きた。フランス世論を二分する対立に発展した。

本作は、ファシズムとの戦いがテーマになっている。 公開された1937年は、日独伊防共協定が締結され、ファシズムの脅威が広がっていた。 米国はこの時点では孤立主義を続けていたが、第二次世界大戦の危機は迫っていた。 こうした世相もあって、本作に対する票が集まった面もあるようだ。

【あらすじ】パリの屋根裏で、画家セザンヌと共同生活をしていた。 娼婦を描いた小説がベストセラーとなる。 その後もヒット作を連発する。 しかし、参謀将校ドレフェスがスパイ容疑で投獄されると、 彼の妻の依頼で擁護活動を行い、軍から圧迫を受ける。

<予告編▼>


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  • 「スタア誕生」
    監督:ウィリアム・A・ウェルマン
  • 「ステージ・ドア」
    監督:グレゴリー・ラ・カーヴァ
  • 「オーケストラの少女」
    監督:ヘンリー・コスター
  • 「失はれた地平線」
    監督:フランク・キャプラ
  • 「シカゴ」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「大地」
    監督:シドニー・フランクリン
  • 「デッドエンド」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「我は海の子」
    監督:ヴィクター・フレミング
  • 「新婚道中記」
    監督:レオ・マッケリー
1937 「巨星ジーグフェルド」

巨星ジーグフェルド

監督:ロバート・Z・レナード

ニューヨーク劇場街ブロードウェイの超大物フローレンツ・ジーグフェルドの伝記。

豪華ミュージカル。23曲の歌曲がちりばめられている。見どころたっぷり。3時間の大作。

カーニバルのサイドショーから始めたジーグフェルドが、ブロードウェイに進出し、華やかな舞台を創り上げる。

<予告編▼>


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  • 「天使の花園」
    監督:ヘンリー・コスター
  • 「嵐の三色旗」
    監督:ジャック・コンウェイ
  • 「科学者の道」
    監督:ウィリアム・ディターレ
  • 「桑港」
    監督:W・S・ヴァン・ダイク二世
  • 「ロミオとジュリエット」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「オペラハット」
    監督:フランク・キャプラ
  • 「結婚クーデター」
    監督:ジャック・コンウェイ
  • 「孔雀夫人」
    監督:ウィリアム・ワイラー
  • 「風雲児アドヴァース」
    監督:マーヴィン・ルロイ
1936 「戦艦バウンティ号の叛乱」

戦艦バウンティ号の叛乱

【配信:アマゾン

監督:フランク・ロイド

超大作。当時としては破格の製作費200万ドルが投じられた。

イギリス海軍の武装輸送船「バウンティ号」を舞台にした船員たちの反乱事件を描く。

原作は同名のベストセラー小説。実際に起きた事件に基づいている。

1789年、南太平洋を航行中のイギリスの帆船で反乱が起きた。 副艦長以下17人の乗組員たちは艦長の横暴に耐えかねて、艦長らを小型ボートで追放。 自分たちはタヒチで女性を含む現地人を船に乗り込ませ、安住の地を求めて南太平洋をさまよい、ピトケアン島にたどり着いた。

日本における公開当時の邦題は「南海征服」だった。軍国主義によって「叛乱」という言葉が使えなかった。

<予告編▼>


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  • 「トップ・ハット」
    監督:マーク・サンドリッチ
  • 「人生は四十二から」
    監督:レオ・マッケリー
  • 「浮かれ姫君」
    監督:W・S・ヴァン・ダイク二世
  • 「噫無情」
    監督:リチャード・ボレスラウスキー
  • 「真夏の夜の夢」
    監督:ウィリアム・ディターレ 他
  • 「ベンガルの槍騎兵」
    監督:ヘンリー・ハサウェイ
  • 「男の敵」
    監督:ジョン・フォード
  • 「孤児ダビド物語」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「海賊ブラッド」
    監督:マイケル・カーティス
  • 「踊るブロードウェイ」
    監督:ロイ・デル・ルース
  • 「乙女よ嘆くな」
    監督:ジョージ・スティーヴンス
1935 「或(あ)る夜の出来事」

或る夜の出来事

【配信:アマゾン

監督:フランク・キャプラ

おしゃれでさわやかなラブコメディー。「ロマンチック・コメディー」というジャンルの流行のきっかけをつくった。

クラーク・ゲーブル演じる新聞記者とクローデット・コルベールがふんする富豪の娘が、バスで隣り合わせたばかりに巻き起こるあれこれ。

折しも世界は、長い大恐慌のトンネルを抜け出したあと。音楽が浮き浮きしたスイング時代を迎えたように、人々は明るい夢を求めていた。映画が時代にこたえたとも、時代を先取りしたとも言える。

作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞の主要5部門を獲得した。 主要5部門の独占は、本作が初めて。その後のアカデミー賞の長い歴史の中でも、「カッコーの巣の上で」(1975年)と「羊たちの沈黙」(1991年)しかない。

日本では戦前の1934年に公開された。さまざまに焼き直されて、新しい日本映画を生む原動力になったことで知られている。 とりわけ山中貞雄監督のトーキー第一作「雁太郎街道」(1934年)は有名。

<予告編▼>


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  • 「ホワイト・パレード」
    監督:アーヴィング・カミングス
  • 「奇傑パンチョ」
    監督:ジャック・コンウェイ 他
  • 「影なき男」
    監督:W・S・ヴァン・ダイク二世
  • 「恋の一夜」
    監督:ヴィクター・シャーツィンガー
  • 「模倣の人生」
    監督:ジョン・M・スタール
  • 「ロスチャイルド」
    監督:アルフレッド・ワーカー
  • 「これがアメリカ艦隊」
    監督:ロイド・ベーコン
  • 「コンチネンタル」
    監督:マーク・サンドリッチ
  • 「お姫様大行進」
    監督:フランク・ボーゼージ
  • 「クレオパトラ」
    監督:セシル・B・デミル
  • 「白い蘭」
    監督:シドニー・フランクリン
1934 「カヴァルケード(大帝国行進曲)」

カヴァルケード(大帝国行進曲)

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監督:フランク・ロイド

叙事的な感動ドラマ。人気のある舞台劇の映画化。

ロンドンに住む裕福な家庭の三十数年間の生活を描く。 主人公夫妻、子供たち、友人、使用人たちの視点で、 20世紀が幕を明ける1899年大晦日から1933年元日までの日々を追う。

ビクトリア女王の死、タイタニック号の沈没、第一次世界大戦など、いくつかの歴史的な出来事が取り上げられ、 登場人物たちの生活に影響を与えていく様子も描写される。

「すべてのシーンに細部への細やかな注意が払われている」と称賛された。

フランク・ロイド監督は、本作で初めての作品賞と2度目の監督賞を獲得した。

日本で最初に公開された時の邦題は「大帝国行進曲」だった。

<予告編▼>


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  • 「あめりか祭」
    監督:ヘンリー・キング
  • 「永遠に微笑む」
    監督:シドニー・フランクリン
  • 「わたしは別よ」
    監督:ローウェル・シャーマン
  • 「ヘンリー八世の私生活」
    監督:アレクサンダー・コルダ
  • 「若草物語」
    監督:ジョージ・キューカー
  • 「一日だけの淑女」
    監督:フランク・キャプラ
  • 「仮面の米国」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「四十二番街」
    監督:ロイド・ベーコン
  • 「戦場よさらば」
    監督:フランク・ボーゼージ
1933 「グランド・ホテル」

グランド・ホテル

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監督:エドマンド・グールディング

作品賞だけにノミネートされ、作品賞だけを獲った唯一の映画として有名。

様々な過去を持ち、様々な状況下におかれた人物たちが、たまたま同じホテルに泊まり合わせたことによって起こる人間模様。 24時間の出来事を流暢なタッチで描いた。 後に「グランド・ホテル型」と呼ばれるようになった。舞台はベルリンのホテル。

MGM黄金時代を象徴する豪華キャスト。商業的にも大成功した。

1989年のミュージカル「グランド・ホテル」の基になった。同作はトニー賞を受賞した。

<予告編▼>


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  • 「人類の戦士」
    監督:ジョン・フォード
  • 「バッド・ガール」
    監督:フランク・ボーゼージ
  • 「チャンプ」
    監督:キング・ヴィダー
  • 「特輯社会面」
    監督:マーヴィン・ルロイ
  • 「君とひととき」
    監督:エルンスト・ルビッチ 他
  • 「上海特急」
    監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
  • 「陽気な中尉さん」
    監督:エルンスト・ルビッチ
1932 「シマロン」

シマロン

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監督:ウェズリー・ラッグルズ

壮大な西部劇。大胆さと冒険が宿るドラマ。

1889年から1929年までの40年間を舞台にしている。 オクラホマの初期開拓から現在までの歴史を描写。 オクラホマ入植が解禁され、開拓者が殺到した「ランドラッシュ」の再現が見どころ。

西部劇として初めてオスカー作品賞を受賞した。この後は、1990年の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」まで西部劇の受賞はなかった。

高額な製作費を投じたが、大恐慌の影響もあって、最初の劇場公開では経費を回収することができなかった。ただし、1935年の再上映で稼いだ。

アクション、共感、スリル、コメディが詰まった秀作として称賛された。

<予告編▼>


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  • 「トレイダ・ホーン」
    監督:W・S・ヴァン・ダイク二世
  • 「スキピイ」
    監督:ノーマン・タウログ
  • 「犯罪都市」
    監督:ルイス・マイルストン
  • 「女性に捧ぐ」
    監督:フランク・ロイド
1931 「西部戦線異状なし」

西部戦線異状なし

【配信:アマゾン

監督:ルイス・マイルストン

※戦場での兵士たちの日々を描いた。反戦映画のスタイルを決定付けた記念碑的作品となった。

原作は、ドイツの同名ベストセラー小説。ドイツのジャーナリストとして従軍した第1次大戦にエーリヒ・マリア・レマルクが、1929年に自らの体験に基づいて書いた。

マイルストン監督は、敗れたドイツ軍を通して、戦争の非情さをリアルに見極め、反戦を強く訴えた。マイルストン監督は、サイレント末期からトーキー初期にかけて、華やかに活躍した。コメディー、アクションもこなす器用な監督。本作が生涯の代表作となった。「美人国二人行脚」(1927年)で第1回アカデミー賞の喜劇監督賞に輝いており、本作は2度目の受賞となった。

<予告編▼>


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  • 「ラヴ・パレード」
    監督:エルンスト・ルビッチ
  • 「結婚双紙」
    監督:ロバート・Z・レオナード
  • 「Disraeli」
    監督:アルフレッド・E・グリーン
  • 「ビッグ・ハウス」
    監督:ジョージ・ウィリアム・ヒル
1930 「ブロードウェイ・メロディー」

ブロードウェイ・メロディー

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監督:ハリー・ボーモント

ミュージカル。1929年から1930年にかけて多数のミュージカル映画が映画館に登場するきっかけとなった作品。

前年の第1回アカデミー賞はサイレント映画が作品賞を受賞したが、本作は音声付き映画(トーキー映画)。 ハリウッドで最初の全編トーキーのミュージカルでもあった。「トーキー革命」の先導役の一つとして評価されている。

ブロードウェイ劇場街(ニューヨーク市)の公演の舞台裏を描いている。華やかな楽屋風景が見どころ。「舞台裏ミュージカル」というジャンルのハシリともなった。姉妹の恋の譲り合いがテーマのメロドラマでもある。

商業的にも大ヒット。1929年の年間の興行収入1位だった。

製作は、ハリウッドのメジャースタジオ「MGM」(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)。 MGMは本作を大成功させたのを受けて、次々と大作ミュージカルを手掛け、1930年代、40年代に映画業界の王者に君臨することになった。

劇中の曲が親しみやすい。「君は僕のために生まれてきた(You Were Meant For Me)」「Give My Regards to Broadway(ブロードウェイによろしく)」などが有名。

製作陣は、より良い音声の録音方法を求めて、試行錯誤を重ねたという。 音質を改善するためにセットが変更され、何度もシーンが撮り直された。 俳優たちにとって長時間の撮影スケジュールとなった。

<劇中歌「君は僕のために生まれてきた」▼>


<劇中歌「Give My Regards to Broadway」▼>


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  • 「The Patriot」
    監督:エルンスト・ルビッチ
  • 「懐しのアリゾナ」
    監督:アーヴィング・カミングス
  • 「ハリウッド・レヴィユー」
    監督:チャールズ・F・ライスナー
  • 「アリバイ」
    監督:ローランド・ウェスト

1920年代の作品賞

 | 1929 | 

1929年

1930年代↑ | 1920年代

作品賞
受賞 ノミネート
1929 「つばさ」

つばさ

監督:ウィリアム・A・ウェルマン

記念すべき第1回目の作品賞。

サイレント映画。戦争叙事詩。リアルで爽快な航空戦シーンが絶賛された。飛行機映画の古典として映画史に輝いている。原題は「Wings」(翼)。

作品賞ノミネートは5本すべてサイレント映画だった。 アカデミー作品賞をサイレント映画が受賞したのは、本作と、85年後の「アーティスト」(2011年)だけだ。

ウェルマン監督は、第一次世界大戦の戦闘パイロットの経験を持つハリウッドで唯一の監督だった。 それが、起用された理由の一つだったという。

空中シーンは、セットでのごまかしではなく、すべて本物の空中で撮影した。 撮影には300人以上のパイロットが参加。20数台ものカメラが使われた。米軍の航空隊の全面的な協力を得た。

流れ雲を効果的に使うといったテクニックも画期的だった。

青春ロマンスのムードもたっぷり。

【あらすじ】第一次世界大戦で空軍に入った若者ジャックとデビッドは、一人の女性をめぐって仲たがいする。 敵の偵察気球の破壊に出動したとき、デビッドは撃墜されるが一命をとりとめ、敵の飛行機を奪って帰途につくが・・・。

<予告編▼>


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  • 「暴力団」
    監督:ルイス・マイルストン
  • 「第七天国」
    監督:フランク・ボーゼージ